チャップリンの氷像。ちょび髭、山高帽にステッキを持つ放浪者「チャーリー」というキャラクターが誕生したサイレント映画「キッド」のワンシーン。
左は、ユングフラウ鉄道の最高責任者ウルス・ケスラー氏とユジェン・チャップリンさん。ユングフラウヨッホ、氷の宮殿にて
Keystone/Peter Schneider
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SWI swissinfo.chの国際言語サービスを統括。アラビア語、中国語、日本語、ロシア語、ポルトガル語、スペイン語編集部の責任者。国際都市ジュネーブ関連の記事も担当する。
横浜出身。1999年からスイスに在住。国際関係学の修士号を取得。国連欧州本部の朝日新聞ジュネーブ支局に15年間勤務し多国間関係とスイスのニュースを担当した後、2016年にSWI swissinfo.chに入社。
ヨーロッパ最高の標高3454メートルに鉄道駅があるスイスアルプスのユングフラウヨッホ。年間100万人の観光客が訪れるユングフラウヨッホに7日、チャップリンの氷像が登場した。
チャップリンの氷像
氷像は高さ約2メートル弱。英国人の喜劇映画俳優チャールズ・チャップリン(1889~1977年)の代表作の一つ「キッド」(1921年制作)のワンシーンで、孤児と座り込む放浪者チャップリンの姿がかたどられている。同駅の「氷の宮殿」でこの日、記念式典が開かれた。2年ほど展示される予定。
氷像を手がけたのは英国の彫刻家ジョン・ダブルデイ。スイス西部レマン湖畔ヴヴェイにあるチャップリンの銅像や、スイス中部マイリンゲンにあるシャーロック・ホームズの銅像もダブルデイの作品だ。
チャップリンは晩年の25年間をスイスで過ごすなど、この国と深いつながりがある。今年はチャップリンが死去してちょうど40年。式典に参加したチャールズ・チャップリンの息子ユジェンさんは「父はスイスの山々を愛し、スイスのクリスマス・シーズンが好きだった」と亡き父をしのんだ。
人を惹きつけるユングフラウ
ユングフラウは1811年、スイス人のヨハン・ルードルフ・マイヤーとヒエロニムス・マイヤーの兄弟が世界で初めて登頂に成功。英国の文学思想家レズリー・スティーブンや、アイルランドの博物学者ジョン・ボール、英国の挿絵木版画家のエドワード・ウィンパーら登山家が相次いで名峰の頂に挑んだ。日本人では1910年(明治43年)に実業家の加賀正太郎が初めて登頂し、1926年(大正15年)8月には大正天皇の第二皇子、秩父宮雍仁親王(当時24歳)がこの山を訪れている。
スイスアルプスの自然をブランド化させたユングフラウの観光産業は、近年、大きく発展。昨年ユングフラウヨッホを訪れた観光客は91万6500人。10年前に比べ倍増した。
最も多いのは、中国、韓国、日本、インドなどアジアからの団体観光客。ユングフラウ鉄道は、30年前から日本を中心に観光客誘致を促進。現在、日本の観光客は全体の1割強の約10万人に上る。
人気の秘密
これほど多くの観光客がユングフラウに集まる人気の秘密は、名峰アイガー、ユングフラウ、メンヒが連なるベルナーオーバーラント三山とアルプス山脈最大のアレッチ氷河を見渡せる絶景だ。さらに山の一面に広がる真っ白な万年雪、登山鉄道で簡単に標高3千メートルまで行けるアクセスの良さも背景にある。
「ヨーロッパ最高地点の鉄道駅から万年雪や世界自然遺産のアレッチ氷河を見ることが出来る。そんなユニークな経験を求めてやってくるアジア人観光客が多い」とユングフラウ鉄道の最高責任者ウルス・ケスラー氏は話す。
ラック式鉄道と呼ばれる、スイスの鉄道技術者がもたらした画期的な手法で作られたユングフラウ鉄道は1912年8月1日に全路線開通。100年以上経った今でも、ユングフラウヨッホ駅は欧州最高地点の駅であり続ける。
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