スイスの視点を10言語で

フェイスブックの仮想通貨プロジェクト スイスの位置づけは?

スマホ上のフェイスブックのアイコン
フェイスブックは独自の仮想通貨プロジェクトの拠点として、ジュネーブに非営利団体を設立した © Keystone / Christian Beutler

交流サイト大手の米フェイスブックが仮想通貨プロジェクトの詳細を発表した。スイス・ジュネーブに設立されたリブラ協会はどのような位置づけを占めるのか。

フェイスブックは先月、ジュネーブに非営利団体を設立したと正式発表した。スイスは「中立国としての歴史があり、ブロックチェーン技術にオープンだ。リブラ協会は中立で国際的な組織を目指しているため、この地に登録することを選んだ」と説明外部リンクした。

「仮想通貨国家」を自負するスイスでは、仮想通関に関連したブロックチェーン企業や非営利団体が続々と誕生している。

「スイス、特にジュネーブにいれば、リブラは国際社会や国際金融システムと密な関係を維持できる」。リブラ協会広報のダンテ・ディスパルテ氏はスイスインフォの取材にこう話した。「このプロジェクトにおける重要なポイントの一つは、あらゆる人々が生涯にわたり経済的に安定した生活を営むことができるよう、金融ノウハウ・サービスを提供するファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)があることだ。市民社会や国際組織に近い場所にいることが、我々のミッションに役立つ」

新仮想通貨リブラ

リブラ協会は、リブラと称する新しい仮想通貨の発行・管理を目的とする。リブラ価格を安定させるために法定通貨を引当金として管理し、リブラの流通網となるリブラ・ブロックチェーンの開発を進める。利用者間の取引の有効性を確認する重要な任務も負う。

任務はほかに、今後長期にわたるネットワークの促進および発展がある。例えば、すべての人々が経済活動で必要な金融サービスを利用できる「ファイナンシャル・インクルージョン」プロジェクトの支援活動がそれにあたる。

リブラ協会のホームページによると、立ち上げ時点で28人の「創設メンバー」が役員会を構成する。VISAやイーベイ、スポティファイ、ウーバー、ヴォーダフォンなどの民間企業のほか、ベンチャー投資家、ブロックチェーン企業、メルシー・コープスなどNGOも参加している。

スマホ決済がより速く

アップルペイやスイスのTWINTアプリなど、スマートフォンを使った決済システムは既にいくつも存在する。だがリブラは銀行など第三者機関を介さずに決済が完了する点が特徴だ。

既存のスマホ決済の場合、決済後に仲介企業が消費者の銀行口座から料金を引き落とす過程に何日かかかる。リブラはこの流れを簡素にし、速やかに全取引が完了する仕組みを目指す。

運用開始の時期は未定だが、来年早い時期になるとも報じられている。フェイスブックは決済システムの技術面を管理する子会社「カリブラ」も設立。まずは25億人以上のアクティブユーザーを抱えるメッセージアプリのワッツアップやメッセンジャーを通じた決済を可能にする。将来的にはフェイスブック上で金融商品・サービスを提供したい考えだ。

フェイスブックが支配?

これに対し、フェイスブックがインターネットだけでなくブロックチェーンや仮想通貨の世界を支配しようとしている、との批判が出ている。誰もが仮想通貨を発行し取引の有効性を承認できるビットコインと異なり、リブラは集権的な管理下に置く道を選んだ。リブラ協会が通貨の証明者を制限し、流通量をコントロールする。

リブラ協会は「重要な目標は、いずれ集権的な仕組みから分散型に変化していくことだ。それによりネットワークの構築・利用への参入障壁が下がり、長期的にリブラの生命力が強化される」とみる。

リブラ協会は5年以内に「事業運営に役員の承認が要らなくなる経営方式を目指す。それにより創設メンバーへの依存度を徐々に減らす。同じように、リブラ引当金の管理者としてのリブラ協会も創設メンバーへの依存を最小限にしていく」と表明している。

おすすめの記事
Facebook logos

おすすめの記事

米フェイスブックがジュネーブに仮想通貨子会社を設立

このコンテンツが公開されたのは、 交流サイト世界大手のフェイスブックが仮想通貨プロジェクトを担う子会社「リブラ・ネットワークス」をスイス・ジュネーブに設立した。なぜジュネーブが拠点に選ばれたのか。

もっと読む 米フェイスブックがジュネーブに仮想通貨子会社を設立


人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

笑顔で握手を交わす閣僚

おすすめの記事

2025年のスイス連邦大統領はカリン・ケラー・ズッター氏

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦議会は11日、カリン・ケラー・ズッター副大統領兼財務相(急進民主党、60歳)を新大統領に選出した。新副大統領にはギー・パルムラン経済・教育・研究相(国民党、65歳)が選ばれた。

もっと読む 2025年のスイス連邦大統領はカリン・ケラー・ズッター氏
健康保険カード

おすすめの記事

医療費の高騰、依然としてスイス国民の最大の関心事 調査

このコンテンツが公開されたのは、 大手金融機関UBSが12日発表した調査「心配事バロメーター」によると、依然として医療費と健康保険料の高騰が最大の懸念事項だったことが分かった。環境と年金も懸念事項にあがっている。

もっと読む 医療費の高騰、依然としてスイス国民の最大の関心事 調査
連邦工科大学の校舎

おすすめの記事

スイス連邦工科大、留学生の授業料3倍引き上げ決定 25年秋学期から

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)と同ローザンヌ校(EPFL)が、留学生の授業料をスイス人学生の3倍に引き上げ、2025年秋学期から1学期当たり2190フランにすることを決めた。

もっと読む スイス連邦工科大、留学生の授業料3倍引き上げ決定 25年秋学期から
ベツナウ原発

おすすめの記事

世界最古の原子力発電所、2033年に稼働終了

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの電力会社アクスポは5日、世界で最も古いベツナウ原子力発電所の稼働を2033年に終了すると発表した。33年までの運転継続にかかる追加事業費は3億5000万フラン(約600億円)を予定している。

もっと読む 世界最古の原子力発電所、2033年に稼働終了
アルコール検査

おすすめの記事

スイスのドライバー、2割が飲酒運転

このコンテンツが公開されたのは、 欧州など39カ国のドライバーを対象にした調査で、スイスでは2割超が飲酒運転をしたことがあると回答した。

もっと読む スイスのドライバー、2割が飲酒運転
銃口

おすすめの記事

狩猟中の事故で男性死亡 スイス西部

このコンテンツが公開されたのは、 先月29日午後、スイス西部ヴォー州で64歳の男性が狩猟中に死亡した。イノシシを撃とうとした 猟友会のメンバーに射たれた。

もっと読む 狩猟中の事故で男性死亡 スイス西部
サルコ

おすすめの記事

自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が釈放 70日拘束

このコンテンツが公開されたのは、 今年9月にスイスで初めて使われた自殺カプセル「サルコ」について、連邦内閣は、当分の間、立法措置は必要ないとの見解を示した。サルコ運営団体は2日、身柄を拘束されていたフロリアン・ヴィレ代表が釈放されたと発表した。

もっと読む 自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が釈放 70日拘束
金塊

おすすめの記事

スイス在住長者番付2024 トップはシャネルのオーナー

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの金融誌ビランツがまとめた長者番付2024年版によると、スイス在住の富豪トップに輝いたのは、仏高級ブランド・シャネルのオーナー家族の1人、ジェラール・ヴェルテメール氏だった。上位の顔ぶれはほぼ前年と同じだが、香料メーカーのフィルメニッヒ(Firmenich)創業家が初のトップ10入りを果たした。

もっと読む スイス在住長者番付2024 トップはシャネルのオーナー
ポイ捨てされた空き缶と小鳥

おすすめの記事

スイス、ポイ捨て「少ない」8割 アンケート調査

このコンテンツが公開されたのは、 スイス・ポイ捨て防止コンピテンスセンター(IGSU)の年次アンケート調査によると、「スイスでは多くのゴミが適切に処理されていない」と考える人は16%にとどまった。

もっと読む スイス、ポイ捨て「少ない」8割 アンケート調査

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部