スイス・ローザンヌで3日、第46回ローザンヌ国際バレエコンクールの決勝が行われ、カナダ・トロント出身のシェール・ワグマンさん(17)が優勝した。2位と4位が韓国、3位と5位が中国出身のダンサー。日本人は2005年以来初めて入賞には至らなかった。
このコンテンツが公開されたのは、
横浜市出身。1999年からスイス在住。ジュネーブの大学院で国際関係論の修士号を取得。2001年から2016年まで、国連欧州本部にある朝日新聞ジュネーブ支局で、国際機関やスイスのニュースを担当。2016年からswissinfo.chの日本語編集部編集長。
審査委員長のテッド・ブランドセン氏は、今回のコンクールを振り返り、「数年前まではレベルの高い男子ダンサーを見つけるのが難しかったが、今年のレベルはとても高い。また、女子も基礎がとても素晴らしい。とても衝撃的」と称賛した。
おすすめの記事
おすすめの記事
ローザンヌで羽を広げるバレエダンサー
このコンテンツが公開されたのは、
10 代のバレエダンサーを取り巻く環境は、どのように変貌を遂げつつあるのだろうか?ローザンヌ国際バレエコンクールの最新情報をお届けする。
もっと読む ローザンヌで羽を広げるバレエダンサー
1位を獲得したのは、モナコのプリンセス・グレース・アカデミーに所属するカナダ人、シェール・ワグマンさん(17)。6歳からタップダンスをはじめ、ジャズやモダンといったダンスも習ったが、バレエを始めたのはほんの4年前、13歳の時だった。受賞直後には「信じられないくらい嬉しい。ここ(ローザンヌ)に来るのが夢だった」と喜びを述べた。
ワグマンさんは、クラシック・バリエーションで、ドン・キホーテのバジルをエネルギッシュでリズミカルに踊り観客を惹きつけ、会場からも大きな拍手が沸いた。コンテンポラリーでは、ウェイン・マクレガー振付のクロマChroma(彩度)で秀でた表現力を発揮した。
決勝の演技後、ワグマンさんは「昨日、舞台で踊るときは少し緊張したが、レッスンで注意されたピルエットを昨晩から今日にかけて猛練習し、その結果、今日は昨日よりももっと良く踊れたと思う。ただ、クラシックとコンテンポラリーで演じる役があまりにも違うので、切替えが難しく感じた」とスイスインフォに語っていた。
審査員からは、「高い技術と芸術表現を融合できるダンサー」、「まるで真のアーティストを見つけたようだ」との声が聞かれ、芸術性、個性、技術、ダイナミックな動きの連鎖など、どの点においてもとても高く評価された。
2位に輝いたのは、韓国人ハナ・パークさん(15)。「基礎がしっかりし、バレリーナとしての要素を備えており、感性を含めて踊っていること」が評価されたという。審査員のオリバー・マッツ氏は「本当に素晴らしい有望なダンサー。強いて言うなら、表現力に欠けるところがあるが、まだ15歳。これから補えるものだ」と話した。
3位に入賞したのは、中国人のウェンジン・グオさん(16)。上海ダンススクールの先生が「とても努力家」とレッテルを貼るほど稽古に熱心なダンサーだ。今回、グオさんの踊りは、特にコンテンポラリーの独自性に富む振付が審査員の目を惹いた。
審査員の加治屋百合子さんは、「彼女はレッスンの時から、振付を自分のものにし、自分の世界を作ることができていたが、素晴らしい踊りだった」と褒め称えた。グオさんは受賞後「とても嬉しい。スカラーシップで留学して、これからももっと頑張りたい」と今後の意気込みを述べた。
今回のコンクールでは、参加資格の年齢を変更し、下限を14歳6カ月に引き下げたことで、15歳以下の女子7人へ参加する道が開かれたが、決選に進出した人はいなかった。ただし、コンクール事務局は今後も参加資格を14歳6カ月~19歳未満とするという。
また、今回、日本人は9人がコンクールに参加し、大木愛菜さん(17)と森脇崇行さん(15)が決選に進んでいたが、入賞には至らなかった。
入賞者
1位 WAGMAN Shale カナダ 17歳
2位 PARK Hanna 韓国 15歳
3位 GUO Wenjin 中国 16歳
4位 LEE Junsu 韓国 16歳
5位 ZHAO Xinyue 中国 17歳
6位 ARANDA MAIDANA Miguel Angel David パラグアイ 18歳
7位 GALVAO Carolyne ブラジル 17歳
8位 GELFER-MÜNDL Aviva 米国 16歳
ローザンヌ国際バレエコンクール外部リンク
正式名称はPrix de Lausanne(プリ・ド・ローザンヌ)。スイス西部のヴォー州ローザンヌで1973年から開催されている。14歳6カ月~19歳未満の若いダンサーを対象にした世界最高の国際コンクールの一つで、若いダンサーの登竜門とも言われる。
第46回コンクールは2018年1月28日から2月4日まで開催され、過去最高の380人が応募し、予選のビデオ審査を通過した74人が本選に参加した。日本人は9人が参加。決勝には日本人2人を含む21人が出場した。入賞者は、希望するバレエ学校かバレエ団で1年間研修でき、奨学金が与えられる。
審査員は9人で構成され、今回は、オランダ国立バレエ団のテッド・ブランドセン氏が審査員長を務めた。米・ヒューストンバレエ団のプリンシパル、加治屋百合子さんも審査員を務めた。
同コンクールを通して、これまで多数の日本人プロバレエダンサーが誕生し、吉田都さんや熊川哲也さん、そして昨年から英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルとなった平野亮一さんや高田茜さんも入賞している。
≫バレエコンクールに関する記事を振り返る
続きを読む
おすすめの記事
ローザンヌで羽を広げるバレエダンサー
このコンテンツが公開されたのは、
10 代のバレエダンサーを取り巻く環境は、どのように変貌を遂げつつあるのだろうか?ローザンヌ国際バレエコンクールの最新情報をお届けする。
もっと読む ローザンヌで羽を広げるバレエダンサー
おすすめの記事
ローザンヌのボーリュ劇場が全面改装 国際バレエコンクール2020はモントルーで開催
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで一番古い劇場、ローザンヌのボーリュ劇場が2019年7月から全面改装される。改装工事に伴い2020年の第48回ローザンヌ国際バレエコンクールは、モントルーで開催される。 1954年に創立したボーリュ劇場は国内最大の…
もっと読む ローザンヌのボーリュ劇場が全面改装 国際バレエコンクール2020はモントルーで開催
おすすめの記事
ローザンヌ国際バレエコンクール 地元ダンサーの掘り起こしを目指す
このコンテンツが公開されたのは、
「プリ・ド・ローザンヌ」は世界に名を馳せる国際バレエコンクール。しかし近年、このコンクールに出場するスイス国籍のダンサーはほとんどいない。スイス国籍の参加者を増やす打開策として、ローザンヌ国際バレエコンクールの主催者は今月1日、ローザンヌのダンススタジオで第1回スイス・ワークショップを開催した。その背景とワークショップの様子を探った。
もっと読む ローザンヌ国際バレエコンクール 地元ダンサーの掘り起こしを目指す
おすすめの記事
大石裕香さん、ベジャール・バレエ団で「空Ku」を振付 作品を創る側の目線とは?
このコンテンツが公開されたのは、
心に響く日本調の音。スイス・ローザンヌにあるベジャール・バレエ団のスタジオで、新作「空Ku」のリハーサルが行われていた。子供の頃から音として口ずさんでいた般若心経の「空」という、目には見えない世界を創作し、スピリチュアルな作品を手がけたフリーランスの振付家、大石裕香さん(34)に創作の原点や作品論を聞いた。
もっと読む 大石裕香さん、ベジャール・バレエ団で「空Ku」を振付 作品を創る側の目線とは?
おすすめの記事
プリ・ド・ローザンヌ新ディレクター就任、「ローザンヌをバレエの拠点に」
このコンテンツが公開されたのは、
19日、ローザンヌ国際バレエコンクールの芸術監督兼最高経営責任者に、元ベジャール・バレエ団プリンシパルのキャサリン・ブラッドニー氏(51)が就任した。任期は無期限。スイス西部のローザンヌを拠点に世界で活躍するダンサー育成に力を注ぐ。
もっと読む プリ・ド・ローザンヌ新ディレクター就任、「ローザンヌをバレエの拠点に」
おすすめの記事
写真家によるローザンヌバレエの舞台裏
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでバレリーナだったフランス人写真家キャロリン・マンジョレ氏が、ローザンヌ国際バレエコンクール開催中、舞台裏の様子をカメラに収めた。
もっと読む 写真家によるローザンヌバレエの舞台裏
おすすめの記事
ローザンヌ国際バレエコンクール準決勝 日本人は2人が決勝へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス西部ローザンヌで2日、第46回国際バレエコンクールの準決勝が行われ、明日の決勝に進出する21人が選出された。日本人は、大木愛菜(おおき あいな)さん(17)と森脇崇行(もりわき たかゆき)さん(15)が決勝に出場する。結果発表直後にファイナリスト数人に感想を聞いた。
もっと読む ローザンヌ国際バレエコンクール準決勝 日本人は2人が決勝へ
おすすめの記事
ローザンヌ・バレエ 参加者に聞くレッスン初日の印象
このコンテンツが公開されたのは、
28日からスイス西部ローザンヌのボーリュ劇場で開催されている第46回ローザンヌ国際バレエコンクールでは、ビデオによる予選審査を通過した14~18歳のダンサー74人が、5日間に渡るレッスンと審査を受けている。観客が客席から…
もっと読む ローザンヌ・バレエ 参加者に聞くレッスン初日の印象
おすすめの記事
審査員の加治屋百合子さんに聞く バレリーナへの道
このコンテンツが公開されたのは、
2000年にローザンヌ国際バレエコンクールでスカラシップ賞を受賞した加治屋百合子さんは現在、米・ヒューストンバレエ団でプリンシパルとして活躍する。今回、審査員として再びローザンヌの地を踏む加治屋さんに、コンクールへの思いや、若いダンサーたちへのメッセージを聞いた。
もっと読む 審査員の加治屋百合子さんに聞く バレリーナへの道
おすすめの記事
バレエコンクールに出場する若手ダンサーへ プロからのアドバイス
このコンテンツが公開されたのは、
第46回ローザンヌ国際バレエコンクールが今日開幕した。15カ国から76人が出場し、決勝は2月3日。今回のコンクールでは14歳6カ月から参加資格があり、ますます若いダンサー同士の競争が高まる。プロを目指すダンサーはどのような心構えでコンクールと向き合うべきなのだろうか。プロにアドバイスを聞いた。
もっと読む バレエコンクールに出場する若手ダンサーへ プロからのアドバイス
おすすめの記事
バーゼルで学ぶ若いダンサー、コンクールに向けてラストスパート!
このコンテンツが公開されたのは、
本番まであと1週間!プロのバレエダンサーを目指し、ローザンヌ国際バレエコンクールに挑む若者たちは、技術を磨き、心身を鍛える。どのようにして踊りの技能を高めるのだろうか。スイスから出場するダンサー、茨城県出身の梯さん(18)とベルギー人のパレマンさん(18)の稽古風景を見学した。
もっと読む バーゼルで学ぶ若いダンサー、コンクールに向けてラストスパート!
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。