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不況でもスイスメイドは勝ち残る

スイスの高い品質性に商品を結び付けることが、ビジネスのキーポイント。リコラは、質の高いハーブのキャンデー Keystone

高価だが品質の良いスイスメイドの商品は、不景気でも消費者は買い続けるだろうという結論を専門家が下した。

スイスの輸出はほかの国と同様に落ちている。しかしは、信頼性と価値に基づく伝統的な生産と販売を行う限り、スイス生産業界は長期的には成功していくというのが専門家の一致した意見だ。

高価で品質の高い商品の維持

「たとえ消費者の一部が商品の値段だけを気にする買い方をするとしても、スイスの企業は、高価で品質の良い商品を生産していく方針を変えるべきではない」
 と「ザンクトガレン・マネジメント・コンサルティング社 ( St Gallen Management Consulting ) 」のシュテファン・ファイゲ氏は力説する。

 確かに現在は不景気だが、消費者がベストの品質を求める姿勢は変わらない。さらに低価格を求める少数の消費者に惑わされ、短期的視野で品質を落としコストを下げるべきではない。長期的には必ず高価格高品質の商品が成功するという。

 企業コンサルタント会社「ユング・フォン・マット ( Jung Von Matt ) 」のドミニク・フォン・マット氏も「スイスのブランド商品は安定した売れ行きを示していく」と見ている。

スイスメイド ( Swiss Made ) を強調すべき

 「スイスの商品は、一般に値段が高いが、トップの品質を保証するものだ。また決して 極端な 豪華さを狙わない。消費者は今、品質の良いものを購入したいと思っている。これはスイスにとっては良いニュースだ。なぜなら消費者は信頼性を求めているという証だからだ」
 とフォン・マット氏は語り、さらに
 「スイスの製品は質が高く信頼が置ける。また精密だといった評判は不景気になる前より、今の方が高い」
 と続ける。

 また、フォン・マット氏はチューリヒで6月中旬開催された「スイス・ブランド09 ( Swiss Brand 09 ) 」会議の場で、ユニークな「スイスらしさ」をもっと前面に押し出し、またこれをもっと活用すべきだと主張した。
 「スイス人は目立ちたがらない、謙虚な国民性を持つ。そのためスイスメイドだというブランド性を利用しない企業が多い。スイスメイドを強調できる製品は、スイスらしさとその企業のブランドをもっと結びつけるべきだ」

ネガティブなイメージは?

 スイスのイメージは、世界同時不況に加え、2年前の国民投票での外国人嫌い問題、今年の租税回避地(タックスへイブン)問題でかなり地に落ちている。これに加え、ナチスドイツによるホロコーストの隠し資産問題、マネーロンダリングなどネガティブな面を、過去10年の間にメディアが書きたてた。

 フォン・マット氏はこうしたスイスのネガティブな報道は、スイスが保持してきたオープンでフェアーなイメージを傷つけたと考えている。しかしそれはスイス製の良い商品の販売に影響を与えるほどのものではないと分析する。

 「スイスが信頼の置ける感じのよい国というイメージは、観光業だけでなく商品販売にも大切なことだ。従ってイメージが傷つけられたことは、確かに問題だ。しかしその影響は相対的だと思う。国のイメージに打撃を与えたとしても、商品の質に対するイメージまでは傷つけていない」

 ファイゲ氏もフォン・マット氏の意見にほぼ賛成だ。
 「スイスのブランドは、スイスエアーが倒産したり、UBS銀行が問題になったりといった個々の企業の問題に影響は受けない。しかし、道徳的な側面にかかわる問題、たとえばスイスは脱税をほう助する租税回避地だといったことはもう少し影響度が高くなる」
 と言う。租税回避地をめぐる議論が2、3カ月間続く場合は問題ないとしても、もし何年も続く場合は商品のイメージを傷つけると考えている。

マチュー・アレン 、 swissinfo.ch
( 英語からの翻訳、里信邦子)

「スイスメイド」のブランドを、偽造品や外国製品から保護するための新しい法律の制定は、まだ議論が煮詰まっておらず、連邦議会の秋の議題となる。

グローバル化に伴い、生産工場を外国に設置したり、安い資源を外国から輸入した後スイス製としてパッケージし直したりする企業が増加している。

前法務大臣クリストフ・ブロッハー氏は、「こうした動きがスイスメイド商品の評判を落としつつある」と主張し、この問題を連邦議会の議題として取り上げた。

提案されている法律には、スイスメイドと表示できる商品は、スイスで生産または加工された材料で6割以上が作られていること、農産物の場合は8割がスイスで生産されたものを含むことといった条例が含まれている。

法律を起草する専門家は、赤地に白十字のスイスの紋章の使用も規制すべきだと考えている。スイスアーミーナイフを製造する「ビクトリノックス ( Victorinox ) 」や、自動車協会「スイス・ツーリングクラブ ( Swiss Touring Club ) 」などが、スイスの紋章を自社の製品に使用している。

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