貴金属の輸入の管理を怠ったとして、スイスの金精錬業界に再びメスが入った。スイス連邦監査事務所は違法輸入があまりに簡単で、制裁が不十分だと指摘する。
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世界で産出される金の大半はスイスに集まり、精錬される。スイスに年間600億~900億フラン(約6兆8千億~10兆1500億円)もの利益をもたらすビジネスだ。
精錬所は、納入された金の出元を調べ、人権を尊重し労働者の健康をきちんと管理する鉱山の物であると確認を徹底していると主張する。だが複数の非政府組織(NGO)は法律に抜け穴があり、自主規制するには業界側の裁量がありすぎる、と批判している。
連邦監査事務所は、スイスには金産業に適用される法律を確実に執行するための強硬手段がないとみる。22日に発表した報告書外部リンクで、違法の金を受け取った場合の罰金は最大2千フランにすぎず、不十分だと指摘した。言い換えれば、金の監視は税関職員にとっても優先順位が低い。
またスイスに輸入された金は、精錬向けと銀行取引向けが混ざって記録されるため、全体像を把握するのが難しい。
NGO「スイスエイド」のマーク・ウメル氏はフランス語圏のスイス公共放送テレビ(RTS)で、金が鉱山からスイスに至るまでに第三国を経由することでさらに闇が深くなる、と語った。たとえばベネズエラ産の金はカリブ海の島キュラソーを経由してスイスの精錬所に運ばれる。「こうした回り道により、金の出どころを遡るのが難しくなる」(ウメル氏)
NGOらは、供給網が複雑なため、悪意トレーダーが違法の金を合法のものに刷り込ませる隙が生じると指摘する。
スイス連邦税関事務局やスイス貴金属製造・取引業者協会外部リンクも監査事務所の報告書に同意し、合理的な範囲で監督の厳格化を求めるとRTSの番組で語った。だが取引のある金鉱名の公表を求めるNGOに対しては、精錬所が反対している。
連邦政府は稼ぎのよい金取引を取り締まる法律の厳格化にほとんど意欲を示していない。業界は自主規制を志向し、2013年に「より良い金取引」イニシアチブ外部リンク(国民発議)を立ち上げた。
今秋または来年初め、スイスの多国籍企業が外国での活動で人権や環境に責任を負う「責任ある企業」イニシアチブが国民投票にかけられ、有権者が是非を判断する予定だ。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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ただスイス税関は金や宝石、芸術品の取引量も記録はしているものの、公表した統計からは除いている。税関の広報はスイスインフォの取材に対し、宝石の貿易はスイスの経済状況を反映するものではない、と除外した理由を説明した。
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