企業と10分面接 ジョブカフェで移民の就労を支援
国内の労働力不足にもかかわらず、スイスで職が見つからない移民・難民は多い。社会福祉団体がベルン州ビール(ビエンヌ)で、このような求職者と企業の橋渡しをするジョブカフェを初開催した。
スイス赤十字社ベルン州支部の就労支援員オレリー・キルヒェンマンさんは、「国内の労働力不足にもかかわらず、履歴書に目を通してもらえない人がいる」と指摘する。ビールで活動する他の就労支援団体も同様の見方だ。
そこで、スイス赤十字のキルヒェンマンさん、移民向け研修センター「ムルティモンド」の共同代表ヤン・ヴァリゼールさん、社会プロテスタントセンター(CSP)ベルン・ジュラ州支部の就職支援員ノエミ・ホルツァーさんは、ジョブカフェの共同開催を決めた。企業と求職者のマッチングを支援する就職活動イベントだ。ヴァリゼールさんは「参加者は各参加企業と10分間面接し、自己PRや質問ができる」と説明する。
英国で生まれた「ジョブ・デーティング」。現在では欧州全体に普及し、スイスでもさまざまな形で広く実践されている。連邦経済省経済管轄局(SECO)もこの取り組みに好意的だ。SECOの広報官ファビアン・マイエンフィッシュ氏は「潜在的な雇用者との出会いによって、求職者の就労が容易になる可能性がある。そこで重視されるのは、資格や学位ではなく、面接と(求職者の)社会性だからだ」と説明する。
「スイスに溶け込むための仕事」
4月初めのジョブカフェ開催当日、会場となった文化交流センター「ビールの家」は盛況だった。1階では、2階での企業との面接を待つ参加者が履歴書を確認したり、コーヒーを飲みながら自身の経験を話し合ったりしている。参加者の中には、生活保護の受給者や長期失業者、難民、身体障がい者や知的障がい者もいる。
ドミニカ共和国出身でスイス在住歴20年超のオズワルド・ジェルマンさん(43)は、「私にとって、(ジョブカフェの)利点は企業と直接話せることだ」と言う。ここ数年、臨時雇いの仕事でつないできたジェルマンさんの目標は、時計産業で職を見つけることだ。ジョブカフェがその助けになるかもしれない。「時計の開発に携わる企業の代表と話せた。3カ月後に仕事をもらえるかもしれない」と話す。
子供たちを連れてウクライナ戦争を逃れてきたマリア・ヤルセヴィッチさん(38)は、「スイス社会に溶け込むためにも、生活保護に頼らなくて済むようにするためにも仕事を見つけたい」と話す。元々は縫製の仕事をしていた。面接前は緊張していたが、クリーニング店アエロ・パラスの社長との面接後は笑顔に。店舗で二次面接を受けることになったからだ。
「人材は探しに行かなければならない」
一方、参加企業にとっても良い経験になったようだ。歯科器具・材料メーカー、ストローマン・ヴィエレの採用責任者サンドラ・ロコーニさんは、「以前は、人材が向こうからやってきた。今後は、こちらから探しに行かなければならない」と話す。同社は国内の労働力不足を受け、従来の採用方法に代わる手段を模索している。
ジョブカフェには求職者約90人と企業18社が集まった。参加者は企業の人事責任者に直接会ってPRする機会を得た。主催者が重視するのはこの点だ。ヴァリゼールさんは「移民には職歴に数年のブランクがある人が多い。それが労働市場では不利になる」と指摘する。だから、たった10分の面接も先入観を打ち破る助けになる。
仏語からの翻訳:江藤真理
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