スイスの視点を10言語で

スイス、コモディティ企業向けに人権ガイドラインを発行

protest
ガイダンスでは労働者の安全や地域社会での採掘が与える影響、政府機能の弱い国での事業のあり方を強調した Keystone

スイス連邦政府は鉱物採掘など商品(コモディティ)取引に携わる企業向けの人権ガイドラインを世界で初めて発行した。

スイスは先週ジュネーブで開かれた国連の第7回ビジネスと人権に関するフォーラムで、「国連ビジネスと人権に関する指導原則の導入のためのガイドライン外部リンク」を発表した。

ガイドラインでは、商品取引に関わる企業が人権や社会的権利に与える影響を十分配慮すべきだと指摘。労働者の安全や地域社会での採掘、「政府機能が弱い」国でのビジネスなどでは影響が大きくなるという。

企業は投資先にリスクがないか事前に調査するデューデリジェンスをどの国でも行うべきだとし、人権に配慮することをはっきりと宣言したり、今ある取引関係を見直して有害な事業を改めたりするよう促した。

スイスの商品取引企業は石油や金属、穀物などの輸出入において国際的なハブの一つになっている。途上国での事業方法に対する批判も出る。

「責任ある商慣習の推進を」

ガイダンスの作成は連邦外務省と連邦経済省経済管轄局(SECO)が主導し、商品企業やNGO、ジュネーブ州政府から意見を募った。経済協力開発機構(OECD)のまとめた多国籍企業ガイドラインや国連のビジネスと人権に関する指導原則を元に草案を作成。企業がデューデリジェンスを導入する際に参考になる事例集もまとめた。

序文で「スイスの主要な経済主体が責任ある事業活動とは何かを理解する助けとなり、スイスの商品市場関連企業が責任ある商慣行を推し進めるのに役立つと確信する」と記した。

スイス貿易・輸送機構は「ガイドラインは企業が最も優先すべき課題の一つである人権に焦点を当て、国連の指導原則が求める内容を、実例を挙げて解説するものだ」と評価した。

ただ、このガイドラインは、人権侵害を回避するための企業の指針であり、法的拘束力はない。考案プロセスに関わったスイスのNGO「パブリック・アイ」は、「商品企業は問題の根本的な解決を図るよりも、イメージを取り繕うとすることに熱心だ」と批判した。

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

牧草をはむ牛

おすすめの記事

スイス、PFASの規制強化を検討

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は「永遠の化学物質」の異名を持つ有機フッ素化合物(PFAS)の規制強化に着手した。飲み水の上限値は来年から引き下げられる。

もっと読む スイス、PFASの規制強化を検討
ツークの街並み

おすすめの記事

スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ

このコンテンツが公開されたのは、 世界有数の試験・検査・認証機関であるスイスのSGSは、本社をジュネーブ州からツーク州に移転する。大手多国籍企業の移転は、ジュネーブ州の税収にも影響を及ぼしそうだ。

もっと読む スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ
鏡を見るバレエダンサー

おすすめの記事

ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場

このコンテンツが公開されたのは、 スイス西部ローザンヌで2日、第53回ローザンヌ国際バレエコンクールが始まった。23カ国から集まった85人の若手ダンサーが8日の最終選考進出を目指し、さまざまな課題曲に挑戦する。

もっと読む ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場
自転車で遊ぶ子ども

おすすめの記事

スイス政府、国際養子縁組を禁止へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は29日、国外から子どもを迎える国際養子縁組を将来的に禁止する意向を表明した。虐待防止措置の一環としている。

もっと読む スイス政府、国際養子縁組を禁止へ
生殖治療の画像

おすすめの記事

スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針

このコンテンツが公開されたのは、 スイス政府は29日、生殖補助医療法を改正し、カップルに対する卵子提供を合法化する方針を発表した。政府はまた既婚・未婚問わず全てのカップルへの精子・卵子提供を解禁する意向を示した。

もっと読む スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針
研究施設で働くマスク姿の人

おすすめの記事

スイスに感染症情報解析センター発足

このコンテンツが公開されたのは、 感染症に関する情報を収集・解析する「病原体バイオインフォマティクスセンター(CPB)」が23日、スイスの首都ベルンに新設された。集約したゲノムデータを管理・解析し、スイスの感染対策を改善する役割を担う。

もっと読む スイスに感染症情報解析センター発足
茶色い除湿器

おすすめの記事

ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。

もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
Xマークの画面

おすすめの記事

スイスでX離れ進む

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。

もっと読む スイスでX離れ進む

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部