中南米やアジア原産のスーパーフードがスイスの畑で作られるようになっている。スイス人の健康志向の高まりのほか、スイスの新しい栽培技術がその背景にある。現在人気の6種を紹介する。
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1) キヌア
2014年にキヌアの栽培をスイスで始めたのは農学者のミルヤム・リューティさん。穀物を研究するうち、キヌアはスイスの土壌や気候でも育つと発見した。南米のアンデス地域が原産で、数千年前から栽培されている。極めて栄養豊富で健康的なことから、スイスでも近年人気が急上昇している。15年には片手で数えられるほどの農家しか栽培していなかったが、17年には34農家が合計40ヘクタールでキヌアを育てている。
2)サツマイモ
サツマイモはジャガイモ、キャッサバに次いで世界で最も多く栽培される根菜だ。中米原産で日本を含め100カ国以上で生産される。スイス連邦経済省農業研究センター(Agroscope)がサツマイモ栽培に焦点を当てたのは2014年。今後、温暖化や干ばつが進めば、サツマイモ栽培が脚光を浴びる日が来ると指摘した。若い世代にも人気が広がっているという。
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スイス産サツマイモを追求する農家
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スイス産サツマイモが市場に出回り始めた。ローザンヌ地方の栽培農家、マシュー・クーンデさんは、スイスの寒冷な気候で十分な質・量のサツマイモを収穫するまでに5年かかったと話す。(RTS/swissinfo.ch)
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3)ミニキウイ
ミニキウイは最大4センチの果肉に豊富な必須栄養分とビタミンを含む。トロピカルフルーツの一種だがスイスでも育つ。中国が世界生産量の56%を占めているが、今ではスイス北東部のボーデン湖の果樹栽培家にとって代表的な作物の一つだ。約20農家が合計で年23トンものミニキウイを生産しているが、国内の知名度はまだ低い。
4)ゴジベリー(クコの実)
アジア原産で今も主に中国で生産されているゴジベリー(クコの実)は6000年前から貴重なミネラル・ビタミン源として重宝されてきた。中国漢方にも多用され、特に目や免疫力アップに効果が高い。スイスでは16年、ビオ・スイスがチューリヒのワイン用ブドウ畑で育てたものが初めて収穫された。
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5)アロニア
バラ科のアロニアを初めて食べたときに美味しいと感じる人は少ないかもしれない。だがその健康効果や繁殖力の強さは、さまざまなベリー類の中で群を抜く。スイスではネロ、バイキング、アーロンの3種が栽培されている。アロニアをスイスで本格的に栽培するようになったのは07年。09年にはアロニアの普及と栽培を促す業界団体「アロニア・スイス」が設立された。現在は43人の会員が計40ヘクタールでアロニアを育てる。13年の生産量は28トンだった。果実は生かドライ、ジュースとして販売される。生アロニアはジャムやアイス、ケーキなどに使われることが多い。
6)アンズ
スイス産アンズの大半は南部のヴァレー(ヴァリス)州で生産される。気候が最も適しているためで、他の地域では柔らかい果肉が霜で痛んでしまう可能性がある。だが今年、北部アールガウ州で最新技術を使ったビニールハウスで霜のリスクを最低限に抑え、デリケートなアンズの栽培に成功した。今年は同州で既に2000本のアンズの木が植えられ、今後6年間で9000キロもの果実が期待される。同地域でアンズブームが起こりそうだ。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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種の保存を目指すオーガニック農場
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毛むくじゃらのブタ「マンガリッツァ」やスイス在来種の「レーティシュ灰色牛」、蜜入りの「ハニーアップル」や「シェザール・プルーン」。今日ではあまり聞かれなくなった動物や果物の名前だ。だが、オーガニック農場「フェルム・デ・ソンス」では、そういった珍しい品種の動物や果物を見つけることができる。
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オーガニック市場、グローバル化で環境への配慮は置き去り?
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モロッコ産の有機トマトがスイスの食卓にのぼり、中央スイスで製造されたオーガニックミューズリーが中国の朝食で食べられるなど、今日では有機農産物までもが海を越え、遠く離れた消費者へと届けられる。スイスのオーガニック市場もまた対外貿易の成長によって、今後更に拡大していく見通しだ。しかしそれでは、有機農業が重きを置く環境への配慮という点において、本末転倒ではないのか?
「一年を通して、常にトマトを食べられないといけないのか?大手業者は消費者を甘やかしている」。大手小売業であるミグロやコープなどのスーパーマーケットの棚に有機農産物が増えたことは喜ばしいことだが、いつでも供給できる状態にしておく必要はないのではないか、とマルティン・キョッホリさんは考える。
アールガウ州ブットヴィールで有機農業を営むキョッホリさんが会長の有機農業協同組合「ビオフォーラム・スイス」は「多種多様で、環境に優しい、社会的農業」を目指している。キョッホリさんにとって有機農業は、化学肥料や農薬を使用しないという点だけに留まらない。丁寧に、かつ節度を持って農業を営むことも有機農業の一部であると考えている。しかし、このような価値観は消費社会においてあまり重要視されていないのが現実だ。
キョッホリさんは、1980年代にザイール(現コンゴ)の奥地で農業開発プロジェクトに従事した経験があり、厳しい状況への対応にも慣れている。ザイールは「土壌は痩せた砂地で、収穫も少なかった」ため、「大掛かりな畜産ではなく、それよりも格段に効率の良い大豆の生産を始めた。大豆は、たんぱく質の需要をすばやく満たすことができる。ニワトリやブタなどを通じてとなると、著しく効率が下がる」と話す。
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