スイスの若者の雇用情勢が欧州ではデンマークに次いで2番目に良好であることが、連邦工科大学チューリヒ校景気調査機関の最新の調査「若者の労働市場指数外部リンク」で分かった。
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指数は同機関が毎年発表。今年発表されたのは2015年時点のもの。欧州30数カ国の中でデンマーク、スイスに続いて良好だったのはオーストリア、ドイツ、オランダだった。
指数の基準値は1~7まで幅があり、スイスは5.71をマーク外部リンク。欧州連合(EU)28カ国平均4.82を上回った。指数は活動状態、労働条件、教育、変化の円滑性の4分野で12個の指針を用い、労働市場における若者の現状を分析する。
調査では、2010~15年はスイス国内で失業率が微増し、就学・就労・職業訓練中のいずれにも当てはまらない、いわゆるニートの割合もわずかに増えたことが分かった。しかし、これらのネガティブな傾向は、教育や職業訓練に参加する若者が増えたのに伴うものという。
調査の担当者は「これらの混ざり合った(若者の労働市場の)現状は、労働市場の状況と教育の循環が対抗する効果を示唆している」としている。
連邦経済省経済管轄局によると、2015年の15~24歳の失業率は3.4%だった。
改善の兆し
調査を実施した景気調査機関によると、財政危機後の欧州の若者の就職事情は「全体的に改善の兆し」が生じ始めている。イタリア、スペイン、マケドニア、ギリシャ、クロアチアは指数ランキングの下位にいるが、前年のスコアよりは改善したという。
同機関は「非常に難しい(財政危機の)余波の中でわずかな回復の兆しが見えたことは喜ばしい」と評価した。
欧州連合統計局(ユーロスタット)は、今年8月の失業者数は4万2千人減の1475万1千人だったとした。失業率は9.1%で、2009年2月以来最低。スイスの9月の失業率は変動なしの3%。
国際通貨基金(IMF)によれば、金融緩和や政治リスクの低下によって輸出が盛り返し、国内需要が増加するとして欧州圏内の成長率は2017年が2.1%、18年は1.9%になると見込む。
スイス国立銀行は、国内の今年の成長率は1%未満にとどまると予測。連邦経済省経済管轄局は、17年の成長率予測を0.9%に引き下げた。同局は当初、国内総生産(GDP)の成長率が来年2%まで加速すると予測していた。
(英語からの翻訳・宇田薫)
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