スイス連邦政府は25日、外国企業によるスイス企業の買収をめぐる規制強化の基本方針を発表した。国有企業による買収を政府の承認制とする。中国企業による買収を念頭に、技術流出やセキュリティー上のリスクを防ぐ狙いがある。
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政府案によると、外国の国有企業やそれに準じる投資家による買収は全て、業種に関係なく、連邦政府に申告し承認を受ける必要がある。
私企業による買収については、どの範囲に申告・承認を義務付けるかは未定。焦点の1つは、外国企業がスイスに置く子会社を、被買収企業の対象に含めるかどうかだ。
連邦経済省経済管轄局(SECO)が制度を所管する。来年3月までに詳細を詰め、連邦議会で法案審議する。
政府は新規制の目的を「公的秩序やセキュリティーが脅かされるのを防ぐ」とする。また国有・国営の外国投資家がスイスの資産を取得することで生じる競争の歪みを防ぐことにもつながるとした。
政府が懸念するのは、インフラサービスを提供する企業が破綻したり、スイス軍が特定の兵器メーカーに依存したりする事態だ。政府部門のITセキュリティーが特定のシステム業者に依存したり、データが漏洩したりすることも念頭に置く。
中国企業を警戒
買収規制を強化する動きは、2016年に農薬大手シンジェンタと機内食事業のゲートグループが相次ぎ中国企業に買収されたことに端を発する。スイスの技術が中国に流出したり、重要産業が中国に依存するようになったりするのを恐れる声が高まった。
スイス連邦議会は昨年3月、外国企業によるスイス企業の買収を承認制にする動議を採択。連邦政府は、承認制は費用対効果が悪く、既存の法体系で十分だとして反対してきたが、議会の圧力に抗いきれなくなった。
連邦政府は25日の声明で、「海外からの投資を広く受け入れることは、ビジネス拠点としてのスイスにとって中核となる政策で、国民の繁栄にとっても重要だ」と強調。開放的な政策は「スイス企業に多くの資本と知識をもたらし、価値の創造や雇用の維持・創出にもつながる」と釘を刺した。
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シンジェンタのミシェル・ドマレ会長は英経済紙ファイナンシャル・タイムズに、同社は「中国政府のパートナーとなって中国の農業の現代化の原動力となり、大きな成長が見込まれる」と話した。
シンジェンタは今月5日、同社の株主が430億ドル(約5兆1600億円)での買収を承認したと発表。この買収計画が開始したのは1年以上前で、農家に種子と作物保護製品を供給する国際ビジネスで現在起きている、大規模な合併の波の一部だ。
中国は食品の輸入に大きく頼っており、中国の農業生産高は欧米諸国に比べて3〜4割低かったとドマレ氏は言う。アジア太平洋地域は現在シンジェンタの地域売り上げの約15%を占めるにすぎないが、売り上げ拡大の目標数値は設定されていない。「目標は農業を現代化し、生産高を増やすことだ」
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