国連がアフガン難民受け入れ拡大要請 スイスの反応は?
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)はスイスなどにアフガン難民の受け入れ拡大を要請しているが、スイス政府は慎重な姿勢を見せる。
UNHCRはスイスなど各国政府にアフガン難民の受け入れ拡大を求める書簡を送った。スイス連邦外務省の広報官はswissinfo.chに対し、書簡を受け取ったことを認めたが、内容については言及しなかった。
だが、この書簡はアフガニスタンについて話し合われた先月30日の連邦議会で取り上げられた。例えば自由緑の党のローランド・フィッシャー議員は「自由緑の党は、国連の要請に応じて難民の受け入れを拡大するよう連邦内閣に求める」と発言した。
社会民主党と緑の党は、アフガニスタンから難民1万人をまとめて受け入れるよう要求した。社会民主党のファビアン・モリーナ議員は「言い訳はもう十分だ。ついにUNHCRがスイスに難民の受け入れを正式に要請した。いい加減、行動に移していただけないだろうか、ケラー・ズッター大臣!」と呼びかけた。
連邦内閣は軽視
名指しされたことを受け、リベラル派の急進民主党に所属するカリン・ケラー・ズッター法相は議員たちの前で見解を述べた。同氏は、UNHCRはアフガニスタン・フォーラムに備えて参加国に書簡を送り、イランやパキスタンに逃れたアフガニスタン人の受け入れ枠を拡大するよう求めていると述べ、「つまりここで焦点になっているのは、アフガニスタンに今とどまっている人たちの受け入れではなく、いわゆるリセトルメントだ。避難先の国で生活再建の見通しが持てない、保護の必要な人たちを今後どうやって再定住させるか、ということだ」と話した。
ケラー・ズッター氏は、スイスはすでにエジプト、レバノン、トルコとの再定住プログラムの一環でアフガン人を受け入れてきたとし、「追加の受け入れに関しては、連邦内閣はまだ決断を下していない」と述べた。そして、もし議論を尽くさずに受け入れを発表すれば、狙い通りの結果が期待できるどころか、事態を悪化させかねないと語った。誤ったシグナルを送り、人々に誤った希望を与えてしまえば、危険な旅に踏み出す人が出てくる可能性があるという。
スイスは他国と協議
ケラー・ズッター氏はさらに「問題解決には国際協調が欠かせない」と述べ、スイスが独自の道を歩むことはないと強調した。スイスは国際協議に参加し、UNHCRの要請については州や基礎自治体と共に検討していくという。また「判断基準となるのは、人道支援の必要性の度合いだ」と話し、左派の期待を抑えた。自治体協会は難民受け入れ枠の早急な拡大には否定的な見解を出しているという。
「国外脱出中のアフガニスタン人はいない」
ケラー・ズッター氏は続けて、アフガニスタンからパキスタンやイランへの大規模な難民流入はまだ起きていないと指摘した。
この点は連邦議会でも着目された。自由緑の党のティアナ・アンゲリナ・モーザー議員は、難民流入が少ないのは人々が国を脱出しようにもできない状況にいるからだと指摘。だからこそアフガニスタンにおける人道支援の重要性が一段と高まっていると強調した。
一方、急進民主党のクルト・フルーリ議員は「私たちの考えでは、タリバンの価値観は国民の大半が共有している」と述べた。
国民党は、スイスが2015年のような難民危機に巻き込まれることを懸念する。そのため、アフガン難民の受け入れ枠を設定することにそもそも反対の姿勢だ。同党のロジャー・ケッペル議員は、難民は母国周辺で保護を求めるのが最善だと論じた。
(独語からの翻訳・鹿島田芙美)
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