2021年UNHCRナンセン難民賞、イエメンの人道支援団体が受賞
今年のナンセン難民賞を受賞したのは、イエメンのNGO「ジール・アルベナ人道的開発協会(JAAHD)」の創設者で同国出身のアメーン・ジュブラン氏(37)だ。同賞にはスイスとノルウェーが出資している。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が授与するナンセン難民賞は、人道支援関連の賞の中で最も権威ある栄誉の1つだ。毎年、ジュネーブで授賞式が行われる。受賞者には賞金15万ドル(約1650万円)が贈られる。スイス連邦移民局(SEM)がその大半を負担しており、今年は賞金と授賞式の費用として20万フラン(約2405万円)を提供した。
SEMにとって、同賞は「スイスの人道支援活動や難民政策の指針となる価値観に」完全に合致するものだ。
ジール・アルベナ協会は、多数の国内避難民が暮らすイエメン北部のコミュニティーに緊急支援サービスを提供している。
UNHCRは声明の中でジュブラン氏の活動について、「他の多くの団体が内戦を理由に現地から撤退したにもかかわらず、同胞に緊急支援を提供し続ける英雄だ」と称えた。
swissinfo.chのインタビューに応じた同氏は「この賞は、私たちは正しい道を進んでいると確信させてくれる。そのことが活動を続けるモチベーションになる」と喜ぶ。
UNHCRは同氏への授賞理由を「現地にとどまり、持続可能な解決策を見つけるために不可欠なパートナーシップを後押しした」と説明する。
UNHCRが公表したデータによると、緊急人道支援を必要とするイエメン人約2070万人のうち、400万人余りが国内避難民だ。2005年以降、再び内戦状態となったイエメンは、多くの惨事に見舞われ、ますます注目を集めている。
成果をもたらす戦略
ジュブラン氏自身、15年の戦闘で故郷を追われた。その3年後には、JAAHDの活動中に空爆で命を落としかけた。それにもかかわらず、同氏は内戦中もずっと国内にとどまっている。
国内避難民に緊急支援サービスを提供するJAAHDのモットー、「イエメン人による、イエメン人のための」は、主要プロジェクトである持続可能なシェルターの建設をはじめとする団体の活動を形作る価値観だ。
UNHCRによると、この取り組みのおかげで、現在、2万人以上の国内避難民が屋根の下で暮らし、約6万人が現金の給付支援を受け、その他数千人がJAAHDの運営する学校修復プログラムや職業訓練センターのサービスを受けている。
イエメンに深く関与するスイス
スイス連邦外務省はswissinfo.chの質問に対し、「スイスは国連がイエメンで展開する和平努力を支持する。スイスには紛争当事者間の協議をフランス語圏地域で何度も受け入れてきた実績がある」ので、「紛争当事者の要請があれば、いつでも仲介する用意がある。また、スイスは中東諸国とイエメン情勢について定期的に協議している」と強調する。
イエメンで激化する暴力によって、民間人に数多くの死者が出、大規模な避難が発生するなど、何百万人もの生活が脅かされてきた。事態は急速に悪化している。国内避難民400万人の4分の1以上が、非公式キャンプの仮避難所で暮らしているため、避難家族が最も緊急に必要とするのは尊厳の保てるシェルターだ。非公式キャンプは非衛生的でひどい状況だ。
イエメンでは大規模な飢餓の危険性がかつてないほど高まっている。何万人ものイエメン人が食糧難に直面し、約500万人が飢えかけている。避難家族は他のイエメン人よりも4倍大きい飢餓の危険性にさらされている。
出典:UNHCR
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