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ジュネーブ、国際都市としてのブランド力を高めるには?

ジュネーブの国連広場に設置された、足が一つ折れている大きな椅子の彫刻は有名だ。この椅子のように、国際都市としてのジュネーブの知名度も高まるだろうか? Keystone

つい先月末までシリア和平協議が行われていたジュネーブ。ジュネーブとは、こうした和平協議が開催される、国際機関が集中する都市なのだろうか?それとも国際的な要人の隠し資産や汚職、脱税問題で話題になる都市なのだろうか?もし後者であれば、今後どのようにしたら国際都市としてのブランド力を高められるのだろうか?

 「世界の多くの人にとって、ジュネーブとは国際的な要人が汚職や脱税を行う場所というイメージだ」。こう言い切るのは、ブラジルのオ・エスタド・ドゥ・サン・パウロ紙のジュネーブ支局長、ジャミル・シャデ記者だ。

 確かに、ハイチのジャン・クロード・デュヴァリエ元大統領やコンゴのモブツ・セセ・セコ元大統領の隠し資産はジュネーブの銀行口座に蓄えられており、過去にはジュネーブの名が、マネーロンダリングや汚職スキャンダルという言葉とともに新聞のトップを飾ったことが何度もあった。

 最近では、HSBCホールデイングスのジュネーブ支店から顧客データが盗まれた事件や、フランスのジェローム・カユザック元予算相が隠し口座をジュネーブのUBS銀行に持っていると内部通報された事件などもあった。

 シャデ記者によれば、彼がジュネーブ支局から送る記事の8割が、こうした銀行に絡む南米の「犯罪者」の隠し資産や汚職の話しだという。つい最近も、ブラジル建設大手オデブレヒトが南米の国の有力政治家たちに不正献金をしており、それがスイス銀行から払われていたとする「オデブレヒト事件」でジュネーブが登場したと語る。

透明性に欠ける

 ビジネスに関する民間の諜報機関Alacoは、評判を損なうリスク回避のために、個人や会社にビジネス情報を分析・提供することを業務としている。この機関のシニアアナリスト、デルフィン・デチェンプトさんは、ジュネーブに関してはシャデ記者と同じような印象を持つと語る。

 「これまでもジュネーブは国際都市のイメージを高めようとしてきたが、司法面では不透明さが残る。商業登記や訴訟、租税関係での透明性において、ジュネーブは必ずしもトップではない」

 現在、スイスの金融機関や商品取引の会社から将来の顧客をリサーチするよう依頼されているデチェンプトさんは、重要な公的地位にある者(PEPs)の隠し資産凍結の前に行われた長い調査プロセスの中で、透明さが欠けていたと指摘する。それには、例えばリビアの故カダフィ大佐やチュニジアのベンアリ元大統領の隠し資産に関する調査も含まれている。

インターナショナル・ジュネーバ

 ところでジュネーブには、10を超える国連機関、数百の各国代表部やNGOが存在する。ジュネーブ大学が行った12年の調査によると、これらの国際機関やNGOは年間約33億フラン(約3630億円)の資金外部リンクを使う。さらに、こうした分野の仕事はジュネーブの雇用全体の一割を占めるという。

 「だからこそ、ジュネーブ市政府にとって国際都市としてのジュネーブをプロモーションすることが大切なのだ」と強調するのは、「インターナショナル・ジュネーバ」担当課代表のオリビエ・クトーさんだ。この「インターナショナル・ジュネーバ」とは、ある種の標語で国際機関や国際企業がジュネーブに集まることを意味する。

 「この標語は、ジュネーブの国際機関でより良い世界の構築を目指して働く人全員にとって、一つのコミュニティーの存在を意味する。国際公務員たちが同じコミュニティーに属していることを感じれば、協働が促進され、そうして協力し合って働けば働くほど効率は高まり、インターナショナル・ジュネーバもさらに促進される」

地元市民は取り残されている

 だが、ジュネーブ市政府は海外に向けて「インターナショナル・ジュネーバ」をアピールするだけではなく、地元市民にも理解を求めようとしている。なぜなら、国際公務員はジュネーブ市のインフラを利用しているにもかかわらず税金が免除されていたり、犯罪が増加したりと、地元では国際機関があることによるネガティブな面を取り沙汰することも多いからだ。

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 また最近では、海外でのスイスのイメージアップを担当する連邦政府機関「プレゼンス・スイス」がジュネーブの国連(UN)と協力して、国際機関が行なっている活動を地元の市民に理解してもらう企画を行った。

 同企画「Perception Change Project(認識を変えるプロジェクト)外部リンク」では、学生や地元の病院などと協力したり、国際機関がいかにUNの持続可能な開発目標(SDGs)外部リンクに取り組んでいるかを説明する本を作成したりしている。

ジュネーブ市の国際的インパクト

 ただ、こうした企画にもかかわらず「インターナショナル・ジュネーバをアピールするのは、容易なことではない」と認めるのは、プレゼンス・スイス所長のニコラス・ビドー大使だ。

 ビドー氏によれば、メディアは(シリア和平協議のように)ジュネーブで行われる交渉や協議に焦点を当てはするが、その開催地そのものには触れないからだという。

 「海外で認識されているジュネーブのイメージは、国際機関が集まる国際都市というものからはほど遠い。よって今後もこのインターナショナル・ジュネーバを推進していく必要がある。というのも、国際機関がジュネーブから去って行かれては困るからだ」

 そのために、プレゼンス・スイスは今年カザフスタンの首都アスタナで開催される「2017年アスタナ国際博覧会」で、UNの持続可能な開発目標(SDGs)を支援するジュネーブの役割を強調するためのイベントや展示などを行う予定だ。

ゲームのルールが変わった

 ビドー氏は、スイスの国際的立場は最近かなり変わったと見る。それは、スイスの銀行守秘義務が廃止され、スイスも脱税回避のための情報交換の国際基準を採用したからだ。「よって、ゲームのルールはかなり変わった」

 しかし、前出のビジネス諜報機関のデチェンプトさんは、こうした銀行の変化だけでジュネーブのイメージがアップするとは考えていない。「(脱税や隠し資産などの)背後には、まだ闇の部分がたくさんある」

 さて、ジュネーブで活躍する海外の記者たちに話しを戻すと、何人かの記者は、「もしジュネーブで行われている重要な交渉や会議にもっと簡単にアクセスできれば、ジュネーブの国際都市としてのブランド力はさらに高まるだろう」と話す。

 ただ他の何人かの記者、例えばスイス公共テレビの記者フィリップ・モッタさんの意見は多少異なる。「我々は、インターナショナル・ジュネーバというものを矛盾、つまりコインの表裏を含めて受け入れなくてはならない。それは例えば、日本たばこ産業(JT)の子会社、JTインターナショナル(JTI)の本部と世界保健機構(WHO)の本部がジュネーブにあるというようなことだ」

(英語からの翻訳・里信邦子)

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