安保理非常任理事国入り目指すスイス 元外相の狙いは?
スイスが候補国になっている国連安全保障理事会の非常任理事国選挙が6月に行われる。立候補を提案したミシュリン・カルミ・レ元連邦外相はどういう面持ちでいるだろうか?
swissinfo.ch:なぜスイスの立候補を目指したのですか?
ミシュリン・カルミ・レ:スイスがネットワークを広げ、国際レベルでの影響力を高めるのに有益だと確信しているからです。スイスは国連で高い評価を得ています。スイスは独立的で客観的な立場を取り、合意形成を重視しています。そんなスイスの意見は(国際社会で)重宝され、真剣に受け止められています。
だからこそ、私は(連邦外相兼連邦大統領として)11年にスイスの立候補を表明しました。
swissinfo.ch:つまりスイスが安保理非常任理事国になることにメリットがあると?
カルミ・レ:その通りです。安保理のメンバーを務めることは容易なことではありません。しかし、適度な現実主義と、(安保理メンバーに)必要な自信を持ち合わせたスイスが世界の平和、正義、安定に貢献できるチャンスでもあります。
swissinfo.ch:安保理のポストを得ることで、仲裁国としてのスイスの役割に影響が出るでしょうか?
カルミ・レ:このポストがもたらす意義は大きいものです。スイスにとって、これまでの経験を生かして国際舞台で仲介役を務めるチャンスです。安保理に加わればそのチャンスが得られます。
swissinfo.ch:安保理メンバーになると、スイスは中立的な仲介役として認識されなくなり、仲裁国としての役割が弱まるとの批判があります。これについてどうお考えですか。
カルミ・レ:いや、むしろその逆です。安保理が戦争と平和を巡る決定を下すことから、(安保理への参加は)中立と相いれないと主張する人が多くいます。確かに安保理がそうした決定をすることはありますが、極めてまれです。安保理が19年までに行った決議は約2500件ですが、そのうち安保理が武力行使を認め、大規模な軍事行動へとつながったものは4件しかありません。すべての安全保障決議の0.002%です。大半の状況では、安保理は軍事的な行動ではなく政治的な行動を取っています。そこでこそ私たちが自らの役割を発揮できるのです。スイスは「誠実な仲介役」として評価されています。
中立に関してもう1つ言っておきたいことがあります。もし安保理が例外的に軍事介入を認めることになれば、安保理は国際社会を代表して一体となって行動することになります。まさしくこの点が、中立法規が適用される典型的な国家間紛争と本質的に違う点です。中立であることは、安保理のメンバーであることと矛盾しないのです。
swissinfo.ch:国際交渉の場であるジュネーブにとって、今回のポストはどのような意味があるのでしょうか?
カルミ・レ:国際交渉の舞台であるジュネーブは、国連と同様に多国間主義の場です。国連の技術組織はすべてジュネーブにあり、グローバル化のルールを決める場所もジュネーブです。スイスは多国間主義の強化に関心を払っています。多国間主義の弱まりを目の当たりにしている今こそ、その強化に向けて取り組むときです。安保理に参加すれば、多国間主義や、すべての国に適用されるルールである国際法の促進に向けて働きかけることができます。(安保理への参加は)スイスの利益となるのです。
swissinfo.ch:フィンランド、スウェーデン、オーストリアなど、他の中立的な小国はどのような経験をしてきましたか?
カルミ・レ:こうした国々は良い経験をしてきたと思います。スウェーデンはニューヨークで仲介役を務めました。スウェーデンが安保理非常任理事国に立候補した当時、同国ではスイス同様の議論が繰り広げられました。
私たちは国連のメンバーであり、国連に積極的に参加し、国連に多少なりとも資金を提供しています。そんな私たちが国連に徹底的に関与していくのは当然のことです。
(独語からの翻訳・鹿島田芙美)
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