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完全雇用のスイス 失業者への圧力高まる

失業者登録している人は、再就職のプレッシャーにさらされている
失業者登録している人は、再就職のプレッシャーにさらされている Keystone / Laurent Gillieron

失業率2.2%のスイスでは、複数の産業部門が熟練労働者不足に頭を悩ませている。一方で、一部の失業者は次の仕事がなかなか見つからず、地域就職支援センターからの強いプレッシャーにさらされている。

連邦経済省経済管轄庁(SECO)が算出した昨年の平均失業率によると、スイスは国際労働機関が認める完全雇用状態にある。実に20年ぶりのことだ。

ただその裏では、多くの人が今も職を探している。求職活動が長期にわたることもある。これは失業率統計の対象となるのが正式な「失業者」だけだからだ。

失業者保護協会(ADC)のジェトン・オクザ会長は仏語圏のスイス公共放送(RTS)の番組外部リンクで、その対象には当てはまらないが仕事を探している人がいると強調した。

不完全な統計

オクザ氏は、求職中にもかかわらず「就職支援プログラム参加者や、20%のパートタイム労働といった不安定な職に就いている人は、経済管轄庁の統計上で失業者とみなされなくなった」と話す。

女性に多いが、保育所や子供を預ける手段を持たないために「職業紹介に適さない」とみなされるケースもあるという。こうした人も失業率統計から除外される。

同氏は「これはやはり問題だ。統計を見れば完全雇用なので、何ら問題はなく全ての人に仕事はあるという印象を国民に与える。だが現実はそうではない」と話す。

キャリア転換の強制

医療、外食、電力などの産業部門は熟練労働者不足に直面している。だが、その他の分野では、仕事を見つけるのはそう簡単ではない。地域就職支援センターは、この不均衡に対処する必要がある。

こうした状況の中、失業者登録した人々は更なるプレッシャーにさらされる。できるだけ早く仕事を見つけなければならない上、時には自分の専門外の分野の仕事を引き受けざるを得なくなることもある。実際、地域就職支援センターは何カ月経っても対象者に仕事が見つからない場合などに、一定の条件下でキャリア転向を強いることがある。

ローザンヌ在住の女性は、RTSの取材に外部リンク「支援センターから紹介された求人は極めて少なく、すぐに別のもの、特に医療分野の職業訓練を紹介された」と語った。

女性はエステティシャンの仕事を探し始めて2年になるという。だがこの業界は求人が非常に少ない。「どうしてもエステ関連の仕事に就きたかったので、(センターの紹介した求人に)最初はあまり乗り気ではなかった。でも、断ってばかりいられないことも分かっている。非協力的とみなされ、ほどなくペナルティを科されるから」。

法的な防護柵

地域就職支援センターの方針は連邦の法的枠組みによって定められている。ヴォー州雇用・労働市場総局長のフランソワーズ・ファーヴル氏はこう説明する。「この法律の原則によれば、失業保険加入者は失業率を下げるため、どんな仕事でもすみやかに引き受けなければならない。しかし、例外規定はいくつかある。賃金が標準に満たない場合や勤務地が自宅から遠すぎる場合、または特定の条件が不適当と判断された場合がそれに当たる」

それでも「失業者側は、是が非でも仕事を引き受けるようにというプレッシャーを感じている」とオクザ氏は主張する。「これには2つの目的がある。統計上の失業者数を減らすことと、求人需要の高い産業部門の欠員を埋めることだ」

エステティシャンの仕事を探すローザンヌの女性は「常にペナルティを恐れている」とも語った。「支援センターでは目立った援助がなく、サポートされていると感じない。センターは、専門分野で働き口が見つかるチャンスが少ないと分かれば、全く合わないものも含め、何でも構わず提案してくる。まさに生計を立てるためだけの仕事を、最速で、是が非でも、というやり方だ」

スイスでは現在、約9万7千人が正式に失業者として登録されている。

仏語からの翻訳:奥村真以子

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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