家族経営の中小企業は堅調
スイス全企業の9割近くを占める家族経営の中小企業は、「短期の利益より長期的な成長を目指す経営方針のお陰で不況の嵐を逃れている」という調査結果が出た。
しかし、こういった中小企業の懸念事項は後継者問題だという結論が2つの調査から導き出された
後継者問題
「バークレイズ・ウエルス ( Barclays Wealth ) 」の調査によると、300社のスイス家族経営の中小企業のうち、68%が短期の利益より、後世代に会社のブランド名を引き継いでもらう方を重視し、83%が不景気の中で手堅く企業を経営し、39%が「長期的な展望プランが成功の鍵を握る」と信じているという。
「しばしば、株の上場がないため投資家の短期的利益追求の要求とは関係なく、金融界の気まぐれさからも逃れられた」
と研究に参加した、家族経営の中小企業のコンサルタント、ハカン・ヒラーシュトローム氏は言う。
家族経営の中小企業は、多額の投資をして高価な新しい機械を購入するより、資産を将来の世代のために残しておくような経営をしていると調査は結論付ける。しかし、一方で後継者の選択に失敗すると、経営が破綻するような危険性を多くの企業が持っていると指摘している。
ザンクトガレン大学の家族経営企業センターが行なったもう1つの調査でも、後継者問題がこうした企業のネックになっていると報告している。4社に1社の企業が将来5年間に後継者問題に遭遇するにもかかわらず、5割の企業主しか明確な対策案を持っていないという。
また同調査によると、後継者が家族の一員である企業の数は極端に減少している。4年前は6割の企業が同族によって受け継がれていたが、現在はそれが4割に減っている。さらにザンクトガレン大学のティエリ・ヴォルリ教授は、
「何人かの企業主はあまりに自分の会社に愛着を持ち過ぎて手放せない。または家族の中の後継者候補と意見が一致しないことが多い」
と家族経営の中小企業の将来を懸念する。
家族経営の中小企業は不景気に強い
ヴォルリ氏はまた、外国への輸出に頼るスイスの家族経営型中小企業が、世界的景気後退に影響を受けていることも懸念している。
「スイスの産業を代表するような家族経営の中小企業は、ここ数年で急激に成長した。しかし、こうした企業が昨年の第4四半期の金融危機でかなりの打撃を受けている。というのも販売の7割を国外のマーケットに頼っているからだ」
と言う。
しかしヴォルリ氏は、国際市場からの打撃にもかかわらず、こうした企業は持ちこたえると見ている。理由は、
「家族経営型中小企業は不景気に対して強い。彼らは負債を負って投資するというより、企業利益を運用しているからだ。また銀行もこうしたリスクの少ない企業に貸し付けを行なおうとするからだ」
という。
swissinfo、マチュー・アレン 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 訳
スイスの中小企業 の定義は、従業員数が250人までとされている。
しかし、その87.9%が10人以下の従業員で経営されている。
中小企業のうち家族経営の企業が88%を占める。
民間の全企業およそ30万7000社のうち、中小企業は99.7%を占める。
66.8%の労働者が中小企業で働いている。
ザンクトガレン大学の研究によると、家族経営の中小企業の26%が今後5年以内に経営者を交代させなくてはならない。2005年1月にはこの比率は18.5%だった。
後継者が家族の一員である家族経営の中小企業数は、4年前は家族経営の中小企業全体の6割を占めていたが、現在は4割になった。
JTI基準に準拠
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。