対ロ金融制裁とは?
欧米諸国はウクライナに侵攻したロシアへの制裁を強化し、ロシア中央銀行の資産も凍結されることになった。スイス国立銀行(中央銀行、SNB)も制裁に関与する。
ロシアのウクライナ侵攻が激しさを増し、西側諸国は矢継ぎ早に経済制裁を打ち出している。
どのような制裁が決まったのか?
これまでに、ロシアの主要銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除することが決まっている。これにより、ロシアの金融機関は国際決済を処理しにくくなる。米国は国内の銀行に対し、ロシアの商業銀行最大手ズベルバンクの「コルレス銀行」になることを禁じた。
コルレス銀行とは?
コルレス銀行は、国境を越えた支払いに必要だ。例を挙げよう。ロシアの貿易企業A社が米国の製薬企業B社から医薬品を輸入し、A社の取引銀行(例えばズベルバンク)に対し、B社の取引銀行C行に購入代金を送金するよう指示する。大抵、米国の銀行はズベルバンクに口座を持っていないため、ズベルバンクはC行に購入代金を直接入金することができない。代わりに、ズベルバンクは自行にあるお金がC行に入金されるように指示を出すことはできる。それを可能にするのがコルレス銀行と呼ばれる仲介銀行だ。ズベルバンクとB社の取引行の双方がコルレス銀行に口座を持ち、まずズベルバンクからの支払いがC行のコルレス銀行口座に入金され、それがC行にあるB社口座に入金される。コルレス銀行がなければ、ズベルバンクはこうしたドル送金ができない。
外貨準備の凍結にはどんな意味がある?
米国とEUは28日、ロシア中央銀行の外貨準備を凍結した。これまでで最も厳しい経済制裁の1つで、かつて発動されたのはイランや北朝鮮など数カ国に限られる。
ロシアの有する外貨準備は4600億~6300億ドル(約73兆円)に上ると推定される。凍結の影響は甚大だ。外貨準備はロシア中銀がルーブル相場を安定させるための為替介入(ドル売り・ルーブル買い)に使われている。ウクライナ侵攻開始以来、ルーブル相場は30%以上も暴落した。ロシア中銀がドル売り介入できなくなると、ルーブルのさらなる下落は避けられない。
金融制裁はロシアにどのように影響する?
ロシアが国として資金を調達しにくくなる。制裁措置により、多くの投資家はロシア国債を新規購入できなくなったためだ。ロシアにお金の貸し手がいなくなったことを意味する。ロシア国債は金利が急上昇(価格は下落)している。
金融制裁はロシア国民にどう影響する?
ルーブル相場が30%下落すると、例えば、医薬品の輸入価格が単純計算で30%上昇することになる。それだけではない。多くの国内製品は輸入中間財に依存しているため、国内価格もルーブル下落の影響を受ける。今後数週間で、ロシアの通貨の切り下げが行われる可能性がある。
ロシアの反応は?
ロシア中央銀行は28日、政策金利を9.5%から20%に大幅に引き上げた。これにより戦争下でもロシア投資の魅力が増し、ロシアからの資金の流出が止まる可能性がある。輸出企業は、外貨収入の一部を売却しなければならない。ロシア国民はルーブルの保有を事実上強制されている。
SNBの金融政策にはどう影響する?
ウクライナ侵攻開始以来、フラン相場は1ユーロ=1.0350フランで横ばいだ。安全通貨のスイスフランは危機が起こると逃避資金が流れ込み上昇しやすい。専門家は、SNBがフラン売り介入を実施しているか注視している。SNBは介入しているかどうかをその都度公言しない。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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