このコンテンツが公開されたのは、
横浜市出身。1999年からスイス在住。ジュネーブの大学院で国際関係論の修士号を取得。2001年から2016年まで、国連欧州本部にある朝日新聞ジュネーブ支局で、国際機関やスイスのニュースを担当。2016年からswissinfo.chの日本語編集部編集長。
日本国憲法の改正をめぐる議論が加速している。国会が憲法改正案を発議すれば、ついに日本で初めて国民投票が実施されることになる。中世からの長い民主主義の歴史を持ち、これまで世界最多の国民投票を実施したスイスと、国民投票の手続きを比較した。
スイスでは連邦憲法外部リンクが公布された1848年以来、615件の案件外部リンクが国民投票外部リンクにかけられてきた。国民投票は年に4回行われ、分野は国防、外交、年金制度、教育のあり方など多岐にわたり、憲法改正が必要ないものとそうでないものの両方が含まれる。一方、日本で国民投票の対象になるのは憲法改正だけ。まだ一度も実施されていない。
連邦憲法は1874年に全面改正され、国民投票制度が新設された。そして1891年には、一定数の署名を集めれば有権者が憲法の条項改正や新設を発議できるイニシアチブ権(国民発議)が盛り込まれた。さらに1999年には人権などを追加して、再び全面改正された。
国民が自身の投票により直接政治の決定に関わる直接民主制のスイスと、国民が選んだ代表者に権力を委ね、間接的に政治に参加する間接民主制の日本。両国の国民投票について比べた。
国レベルの国民投票以外にも、スイスでは盛んに住民投票外部リンクが行われる。スイスにある26州では年に4回、2255の自治体では年に2、3回投票が行われるのが一般的。これまで数十万回もの住民投票が実施され、道路の建設、水・ガス・電気の供給に関する規定や学校の建設など日常生活上の事項が投票にかけられてきた。
日本では、一部の自治体が条例を制定し住民投票を実施し、1996年以降、417件実施された。主な案件は、市町村合併で、その他、産業廃棄物処分、原子力発電所の設置など。法的拘束力はないが、417件のうち400件は、投票結果が政治や行政に反映されている。
続きを読む
おすすめの記事
イニシアチブとは?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは、政治的決定に参加する権利が市民に与えられている。直接民主制はスイスだけに限った制度ではない。しかし恐らく、ほかの国よりこの国でより発展している。
もっと読む イニシアチブとは?
おすすめの記事
レファレンダムとは?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは国民が憲法改正案を提案したり、連邦議会で承認された法律を国民投票で否決したりできる。
もっと読む レファレンダムとは?
おすすめの記事
「日本も国民投票で主権者の意思確認を」ジャーナリスト今井一さん
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは、国の課題を有権者が投票して決める直接民主制が浸透している。国民の意思をダイレクトに反映するこの制度は、日本でも可能なのだろうか?衆院選で憲法改正の是非を問う国民投票の議論が取り上げられる中、国内外の住民投票や国民投票に詳しいジャーナリスト、今井一さんにインタビューした。
もっと読む 「日本も国民投票で主権者の意思確認を」ジャーナリスト今井一さん
おすすめの記事
「速やかに国民投票が実施されるべき」憲法・地方自治の研究家、小坂実氏
このコンテンツが公開されたのは、
日本国憲法が公布されて71年。今、憲法改正の議論が深まっている。憲法に関わる研究を続け、国民投票の早期実施を主張する日本政策研究センターの小坂実研究部長に、国内の国民投票や住民投票のメリットやデメリットについて意見を聞いた。
もっと読む 「速やかに国民投票が実施されるべき」憲法・地方自治の研究家、小坂実氏
おすすめの記事
スイスの国民投票 今気になるテーマは?
このコンテンツが公開されたのは、
世界の国々の半数が、国民が立法に直接参加できる仕組みを持っているが、スイスは中でも突出して、それをフル活用している国だ。スイス人は年に4回、国民投票に行く。スイスインフォは、連邦憲法が初めて公布された1948年以降の国…
もっと読む スイスの国民投票 今気になるテーマは?
おすすめの記事
世界が注目、スイスの直接民主制
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの直接民主制は今、外国から熱い視線を浴びており、外国の視察団が続々とスイスを訪れている。特に大きな関心を示しているのは、ドイツ語圏諸国だ。
もっと読む 世界が注目、スイスの直接民主制
おすすめの記事
スイスの直接民主主義
このコンテンツが公開されたのは、
中立主義、連邦制、直接民主主義といった制度はスイス国家のアイデンティティの一部。いくつもの言語と宗教、そして文化が混在するスイスを一つにまとめているこの独自の政治システムを簡単に紹介しよう(制作:swissinfo.c…
もっと読む スイスの直接民主主義
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。