スイスの視点を10言語で

自動運転、ドローン、バイオベンチャー…スイスのベスト・スタートアップ企業

氷の中を飛ぶドローン
これまでアクセスできなかった場所を飛べるこのドローンはイノベーション賞を獲得 starup.ch

妊娠しやすい時期を予測するアームバンド、自動運転車用のソフトウェア、実験室で製造された人間の皮膚…これらは5日発表されたスイス・スタートアップ・トップ100アワードで表彰された最新技術だ。

 スタートアップ企業は、スイス経済の技術革新力のリトマス試験紙だ。最新の技術やアイデアを使って大きく成長する。スイスが国連の世界知的所有権機関(WIPO)外部リンクの算出するグローバル・イノベーション・インデックス外部リンクでトップの座を占めるのもスタートアップ企業の活躍あってのことだ。

 毎年開催されるスタートアップ・トップ100アワード外部リンクはスイスのイノベーション動向を知る絶好のチャンスだ。今年の候補企業のほぼ半数がチューリヒ州に、25%がフランス語圏のヴォー州に本社がある。最終選考に残った10社のうち9社もこの2州が拠点だ。

 それはこの2州でいかに絶えず技術革新を生み出しているかを反映する。またチューリヒとヴォー州ローザンヌにある2校の連邦工科大学の存在力も映し出す。

 近年、両大学とも研究を実体経済に結びつけようと注力する。スタートアップ企業や起業家、学生を支援するためのさまざまなプログラムも立ち上がった。

 今年のトップ100を席巻したのも同大学の強みであるIT、バイオテクノロジー、医療技術の分野だ。医療・医薬品はスイスのお家芸でもある。一方、近年多くのフィンテック関連企業が創設されているにも関わらず、ブロックチェーン分野の存在感は薄かった。

 受賞者の選考は連邦工科大学を始めとする高等教育機関が協力して立ち上げたベンチャー支援プログラム「ベンチャーラボ」が担った。

2018年のベストスタートアップ企業5社

Ava  外部リンク

昨年も首位を獲得したチューリヒの企業が開発したのは「排卵日予測アームバンド」。女性が月経周期内で妊娠するのに最適な期間を90%の精度で予測する。

特許取得済みのマルチセンサー技術を使用して、睡眠中の体温や脈拍数、呼吸数、睡眠相など九つの生理的パラメータを測定。米国で既に大ヒットし、現在はヨーロッパや中国にも広がっている。

Bestmile外部リンク

2014年にローザンヌで創業。自律走行自動車を管理するためのクラウドサービスを提供する。自動運転車をリアルタイムで監視・制御し、最適な走行ルートを選んだり技術的な故障を検出したりする。その技術は既にフランス語圏のいくつかの都市を走る自動運転バスに使われている。

Lunaphore外部リンク

2014年4月創業。連邦工科大学ローザンヌ校の医療研究所からのスピンオフ事業で、主に腫瘍を解析・分類できる組織診断システムを開発した。このプラットフォームは、分析のスピード・精度を上げるマイクロ流体チップテクノロジーをベースにしている。

Flyability外部リンク

壊れたり環境に害を与えたりすることなく、人間が入れない場所、または閉ざされた空間を飛行できるドローンを開発。石油やガス、鉱物の採掘現場や公益事業分野など数多くの用途がある。

Cutiss外部リンク

チューリヒに拠点を置くバイオエンジニア。皮膚組織の小さなサンプルから人間の皮膚を作る技術を開発。特に火傷の患者に有効で、治療後の傷跡や痛みが格段に小さくなる。

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

笑顔で握手を交わす閣僚

おすすめの記事

2025年のスイス連邦大統領はカリン・ケラー・ズッター氏

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦議会は11日、カリン・ケラー・ズッター副大統領兼財務相(急進民主党、60歳)を新大統領に選出した。新副大統領にはギー・パルムラン経済・教育・研究相(国民党、65歳)が選ばれた。

もっと読む 2025年のスイス連邦大統領はカリン・ケラー・ズッター氏
健康保険カード

おすすめの記事

医療費の高騰、依然としてスイス国民の最大の関心事 調査

このコンテンツが公開されたのは、 大手金融機関UBSが12日発表した調査「心配事バロメーター」によると、依然として医療費と健康保険料の高騰が最大の懸念事項だったことが分かった。環境と年金も懸念事項にあがっている。

もっと読む 医療費の高騰、依然としてスイス国民の最大の関心事 調査
連邦工科大学の校舎

おすすめの記事

スイス連邦工科大、留学生の授業料3倍引き上げ決定 25年秋学期から

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)と同ローザンヌ校(EPFL)が、留学生の授業料をスイス人学生の3倍に引き上げ、2025年秋学期から1学期当たり2190フランにすることを決めた。

もっと読む スイス連邦工科大、留学生の授業料3倍引き上げ決定 25年秋学期から
ベツナウ原発

おすすめの記事

世界最古の原子力発電所、2033年に稼働終了

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの電力会社アクスポは5日、世界で最も古いベツナウ原子力発電所の稼働を2033年に終了すると発表した。33年までの運転継続にかかる追加事業費は3億5000万フラン(約600億円)を予定している。

もっと読む 世界最古の原子力発電所、2033年に稼働終了
アルコール検査

おすすめの記事

スイスのドライバー、2割が飲酒運転

このコンテンツが公開されたのは、 欧州など39カ国のドライバーを対象にした調査で、スイスでは2割超が飲酒運転をしたことがあると回答した。

もっと読む スイスのドライバー、2割が飲酒運転
銃口

おすすめの記事

狩猟中の事故で男性死亡 スイス西部

このコンテンツが公開されたのは、 先月29日午後、スイス西部ヴォー州で64歳の男性が狩猟中に死亡した。イノシシを撃とうとした 猟友会のメンバーに射たれた。

もっと読む 狩猟中の事故で男性死亡 スイス西部
サルコ

おすすめの記事

自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が釈放 70日拘束

このコンテンツが公開されたのは、 今年9月にスイスで初めて使われた自殺カプセル「サルコ」について、連邦内閣は、当分の間、立法措置は必要ないとの見解を示した。サルコ運営団体は2日、身柄を拘束されていたフロリアン・ヴィレ代表が釈放されたと発表した。

もっと読む 自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が釈放 70日拘束
金塊

おすすめの記事

スイス在住長者番付2024 トップはシャネルのオーナー

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの金融誌ビランツがまとめた長者番付2024年版によると、スイス在住の富豪トップに輝いたのは、仏高級ブランド・シャネルのオーナー家族の1人、ジェラール・ヴェルテメール氏だった。上位の顔ぶれはほぼ前年と同じだが、香料メーカーのフィルメニッヒ(Firmenich)創業家が初のトップ10入りを果たした。

もっと読む スイス在住長者番付2024 トップはシャネルのオーナー
ポイ捨てされた空き缶と小鳥

おすすめの記事

スイス、ポイ捨て「少ない」8割 アンケート調査

このコンテンツが公開されたのは、 スイス・ポイ捨て防止コンピテンスセンター(IGSU)の年次アンケート調査によると、「スイスでは多くのゴミが適切に処理されていない」と考える人は16%にとどまった。

もっと読む スイス、ポイ捨て「少ない」8割 アンケート調査

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部