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スイスのメディアが報じた日本のニュース

山手線
Wikimedia Commons/MaedaAkihiko

今週(7月21日〜27日)スイスの主要報道機関が伝えた日本関連のニュースから3件をピックアップ。要約して紹介します。

「記録的ペースの人口減少」「イドルシアがアジア事業をそーせいに売却」「女子サッカーW杯で日本が2勝目」「山手線の遅延が大ニュースに」「杉本博司を取り巻く東京のアートシーン」―といったトピックスが取り上げられました。

この中から今回は「記録的ペースの人口減少」「イドルシアがアジア事業をそーせいに売却」「山手線の遅延が大ニュースに」をご紹介します。

過去最大の人口減少

日本の総務省は19日、2022年の人口が前年から80万1000人少ない1億2240万人だったと発表。減少幅は統計開始以来の最大を記録しました。

ドイツ語圏の日刊紙バズラー・ツァイトゥングは26日付の記事で「出生率が低く移民もほとんどいない日本は、他のどの先進国よりも急速に高齢化が進んでいる」と指摘。地域全体が衰退し、空き家・廃墟や廃校が広がる実態を説明し、岸田文雄首相の「異次元の」少子化対策について「こうした取り組みの多くは既存の対策の延長であり、効果があるかどうかについては疑問が残る」と斬り込みました。(出典:Basler Zeitung外部リンク/独語)

日本でしか売れない薬

スイス北部バーゼル・ラント準州アルシュヴィールにある製薬企業イドルシア・ファーマシューティカルは25日、1~6月期は米会計基準で3億7500億フラン(約610億円)の営業赤字となったと発表しました。バズラー・ツァイトゥングによると、脳血管痙攣抑制・治療薬「ピヴラッツ」の日本での売上高が3240万フランと、売上高全体(5100万フラン)の6割超を占めました。

同社は20日、ピヴラッツや不眠症治療薬「QUVIVIQ」などの開発権を日本のバイオ創薬企業そーせいグループに4億フランで売却すると発表しました。金融紙フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフトは同日、製薬・バイオテック企業担当のRupen Boyadjian記者の分析を掲載しました。

経営難に陥っていたイドルシアの株価は買収発表の2週間前に過去最低の6フラン弱に下落していました。Boyadjian氏は「買収契約は前向きなことであり、イドルシアの株価をある程度下支えする。だがそーせいから受け取る4億フランは年明けを少し過ぎるまでしか持たないだろう」と指摘し、さらなる資金繰りの必要があると強調。推奨を「ホールド」で据え置きました。

同社の稼ぎ頭だったピヴラッツでしたが、Boyadjian氏は「イドルシアがピヴラッツと決別したのは当然だ」と断言。「なぜならこの薬は日本でのみ承認されており、日本の研究とは異なり世界的な承認研究は失敗したため、他の国々で迅速に承認される見込みがないからだ」と解説しました。(出典:バズラー・ツァイトゥング外部リンク/独語、フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト外部リンク/独語)

山手線の遅れが話題に

「スイスでは鉄道交通に遅延があるという事実はもはや誰も驚かないが、日本では驚くべきことだ」――オンラインメディアwatson.chは、24日午前中に発生した山手線の遅延についてこう報じました。

「首都圏で最も混雑し、最も重要な鉄道路線の1つ」である山手線は、信号故障のため始発から午前9時ごろまで運休。記事は「日本の電車は99%定刻どおり運行しており、こうした事件がこれほどニュースの見出しを飾るのも不思議ではない。他の国々はそれを夢見ることしかできない」と結びました。(watson.ch外部リンク/独語)

注目のスイスのニュース

今週、最も注目されたスイスのニュースは「スイスの出生率が過去最低を更新」(記事/日本語)。過去20年1.5前後で安定してきた合計特殊出生率が2022年は1.39と過去最低に下がりました。専門家はコロナ禍の他、国の家族政策が柔軟さを欠くこと、意図的に子供を産まない人が増えていることが背景にあると指摘しました。他に「性交渉後の献血禁止期間、ゲイ男性も平等に」(記事/日本語)や、時計の町ラ・ショー・ド・フォンを襲った突風被害(記事/日本語)も話題になりました。

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次回の「日本のニュース in スイス」は8月4日(金)に掲載する予定です。

編集:宇田薫

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