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これ本当に時計?バーゼル・ワールドにお目見えした最新モデル

タコ足時計
映画「アビス」とタコからインスピレーションを得たという時計「オクトポッド」 swissinfo.ch

長針、短針、秒針。時計は「三本足」が普通だが、それ以上の足を持つ時計は存在するのか?あるとしたら、あなたはいくら払うだろうかー?今月22~27日にバーゼルで開かれた世界最大の時計・宝飾品見本市バーゼル・ワールド外部リンクでは、様々な趣向を凝らした芸術品ともいえる時計がお目見えした。

 会場でひときわ目を引いたのは、まるでタコのような8本足の時計「オクトポッド(Octopod)外部リンク」。その名の通り、タコとSF映画「アビス」から着想を得て作られた。奇想天外な製品で知られる時計メーカーMB&F外部リンク(本社・ジュネーブ)がコンセプトとデザインを手がけ、スイスの老舗メーカーL’EPEE外部リンク(レペ)が開発。MB&Fのモデルの中でもオクトポッドはひときわ異彩を放つ。同社が創業179年の歴史を持つレペと提携し、時計製造を始めたのはわずか4年前。現在、8個の限定モデルを販売している。小売価格は1万5千~5万フラン(約170~570万円)だ。

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 スイスの時計輸出は一見、減少しているように見えるが、一本あたりの平均価格は2009年の136フランから昨年には約10倍の1067フランに跳ね上がっている。これは大量生産型より高級時計が好まれる傾向を示している。
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 MB&Fの広報カリス・ヤディガログロウさんは「私たちの初めての製品『宇宙艦隊』を見た小売業者の反応は、『まあ売れないだろう』だった。でも、ふたを開けてみたらよく売れた。一度きりと思って出した製品だが、いまやコレクションになくてはならない存在だ」と話す。

ミニチュアの芸術

 ヤディガログロウさんによると、来場者は遊び心あふれた時計を好んで買う。その時計が彫刻であり、ミニチュアの芸術品だからだという。今のデジタル世界では、手で触れて楽しめ、チクタク音が聞ける時計たちが、購買者の心を引き付けるという。

 イタリアの時計メーカー「Meccaniche Orologi Milano外部リンク」のアレッサンドロ・リゴットさんは「クラシック時計は現代の家に適さない。ここ近年、家具業界は一変した。それが、違ったタイプの時計の需要につながっている」と説明する。

 リゴットさんが行き着いた答えは、現代のデザインにクラシック時計の製造技術を取り入れること。だから値段が高い。価格帯は2万~3万フランだ。だが、リゴットさんが今年のバーゼル・ワールドで受けた注文件数は、去年より多かったという。

 ブースを共有する英国の老舗メーカー、シンクレア・ハーディング外部リンクも古いデザインを取り入れたクラシック時計を手がける。デザインは何百年も前のものもある。経営者のロバート・ブライさんは、クラシック時計にも需要はあると信じている。

 ブライさんは「今年は出展企業が減ったのでいささか心配だったが、売り上げは過去最高だ。7千~4万2千ポンド(約105~630万円)の価格帯が46個売れた」と話す。

 クラシック時計だけではない。スイスの著名なデザイナー、ヨルグ・イゼック外部リンクさんとコラボレーションし、機械式ムーブメントを使ってデジタル・ディスプレイを表示する時計(6万2千フラン)を作った。

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 イゼックさんは「これは彫刻であって時計ではない。この時計は時を指し示すためではなく、そこから生まれた感動が大事。芸術が好きで、機械が好きな人のための作品だ」と話す。

 時計専門のオンラインマガジン「Quill&Pad外部リンク」記者のジョシュア・ムンショウさんは昨今の時計業界について「今の傾向は、一部ブランドのマーケティングによるところが大きい。ありとあらゆるメーカーが新製品を出しているわけではないためだ。この傾向はしばらく続くだろうが、それによって時計業界が確実に盛り返す、とまでは言い切れない」と分析する。

 一時的かもしれないが、今のトレンドはモダン、奇抜、高価格の機械式時計。それが時計産業の主力製品になっている。例えばMB&Fは今年9月に9個目のモデルを出す予定で、来年にも新製品が控える。時計業界の春がいつまで続くかは、時のみぞ知る。

(英語からの翻訳・宇田薫)

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