2011年3月11日の東日本大震災以降、福島第一原発事故の取材を続けている芸人のおしどりマコ・ケン外部リンクさんが8日、チューリヒ市内で講演し、原発事故から7年経った日本の現状について語った。
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マルチメディア・ジャーナリスト。2017年にswissinfo.ch入社。以前は日本の地方紙に10年間勤務し、記者として警察、後に政治を担当。趣味はテニスとバレーボール。
スイス在住日本人らの反原発グループ「スイスアジサイの会外部リンク」が主催。二人がスイスで講演するのは初めて。チューリヒ大学構内の施設で行われた講演では、日本人ら約90人が耳を傾けた。
マコさんは福島第一原発や福島県内の現状を写真のスライドを見せながら説明。原発の建屋については「2号機は最も汚染されているため調査やがれき撤去の計画が全く進んでいない。3、4号機も大きく建屋が壊れ、東京電力は野戦病院のようだと表現するほど」と語った。また汚染水の貯蔵タンクが水漏れし、そのタンクから汚染水を抜き取る作業の中で、作業員がタンク内に入って底部に残った高濃度汚染水をモップでふき取っていること、廃炉作業には外国人やホームレスも働いていることなどを明かし、参加者からは驚きの声が挙がっていた。
また各地の原発事故被害者の集団訴訟について「地裁では住民勝訴の判決が出ているが、最高裁判決までには10年以上かかるといわれる。原告のほとんどが高齢で、病気を患った人、自殺してしまった人が何人もいる。みんなが子供や孫のために闘い続けているが、こういう問題は長期化させるべきではない」と厳しい表情で語った。
福島県内の農家が抱える問題にも触れた。マコさんは「定期健診や被ばく線量測定を受けられる原発の作業員と違い、農家は自営業だからという理由で同様の措置が講じられていない。自治体は自己責任で被ばく対策をして下さいと言うだけ。福島県農民連外部リンクが農業者の保護を求めて政府と交渉を続けているが、こうした問題はなかなか外に出てこない」と語った。
講演後の質疑応答では、参加者から「事故から7年経ち、今の日本社会は原発事故に対する関心がどのくらいあるのか」「原発で廃炉作業をしている作業員はどのくらいの期間働いていて、健康被害はどんなものがあるのか」などの質問が挙がっていた。
日本人コミュニティー向けのフリーペーパーで講演を知り、参加したというザンクト・ガレン州の主婦リーネル洋子さん(62)は「事故から7年も経つのに福島原発が何も変わっていないことがショックだった」と話した。
質問、ご意見は記者のツイッター外部リンクへ。
おしどりマコ・ケン
2003年9月に結成した夫婦の芸人コンビ。正式なコンビ名は「おしどり」。ツッコミ担当のマコさんのアコーディオン演奏に合わせてケンさんが針金アートを作ってボケる。横山ホットブラザーズ、横山マコトの弟子。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。社団法人漫才協会会員、落語協会会員。認定NPO法人沖縄・球美の里理事。フォトジャーナリズム誌「DAYS JAPAN外部リンク」編集委員。
マコさんは鳥取大学医学部生命科学科の出身(中退)。原発事故後の政府の「直ちに問題はない」発言に違和感を覚え、会見に出席するようになった。東電会見取材は600回以上に上り、福島の母親や農家への取材のほか、原発事故被害者の集団訴訟も追いかけている。マコさんが会見取材、執筆、ケンさんは写真撮影などを担当。
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緑の党の党員で国会議員でもあるクリスチャン・バン・シンガーさんは、 物理の専門家として「世界の物理学者は戦後、原爆のあの膨大なエネルギーを何かに使いたいと原発を考案したが、二つの問題を全く無視していた。事故のリスクと核廃棄物の問題だ」という。
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深刻な事故はまれか?
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同協会はウェブサイトで「商業用原発は原子炉年(1基×年数)換算で累積1兆6千年間、32カ国で稼働しているが、うち原子力施設で大事故が起きたのは3件」と公表している。
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