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水力発電用ダムで貯水量増加 電力価格高騰にらみ

グラウビュンデン州のライ・ダ・ナルプス・ダム。スイスは電力の約57%を水力発電でまかなっている(アーカイブ写真)
グラウビュンデン州のライ・ダ・ナルプス・ダム。スイスは電力の約57%を水力発電でまかなっている(アーカイブ写真) Keystone / Alessandro Della Bella

ダムの貯水量がここ数週間で増加していると、フランス語圏のスイス公共放送(RTS)が国のデータを元に報じた。事業者は、2023年の電力卸売価格の上昇を見越し、備蓄を増やしている。

水力発電所の貯水湖の水位は通常、秋になると下がるが、今年は逆に上昇した。これは偶然ではない。発電事業者がこの冬の電力危機リスクに備え貯水しているためだ。

昨冬は降雪が少なく貯水湖の水位は低かった。だが、連邦エネルギー省エネルギー局(BFE/OFEN)が1日発表したデータによると、9月初めに約7千ギガワット時(GWh)だった貯水湖の可能発電量が、11月28日には7585GWhに上昇。これは最大可能発電量の85.4%にあたる。

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11月28日の貯水率は2000~21年の間の平均値より10.7ポイント高く、可能発電量は通常より約900GWh多い。この増加分で今冬3週間分の電力輸入量を補てんできる可能性がある。

貯水率が上昇した理由の1つは、連邦内閣の戦略的備蓄だ。内閣は今秋、水力備蓄400GWhの電源入札を実施した。これは電力不足が生じた際、供給を要請できるようにするのが目的だ。

「市場価格(の値上がり)が貯水のインセンティブ」

だが、発電事業者は何よりも市場価格に応じて行動する。貯水湖を満タンにしようと事業者を駆り立てているのは、他でもない今冬の予測だ。

スイスの2大電力会社の1つ、アルピックの広報担当者は「2023年第1四半期の市場価格は現時点で2022年末時よりも高い。これが貯水を促している」と説明する。

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発電量を半減

水力発電は数カ月もの間、これだけ大量のエネルギーを保存できる唯一の手段であることから、発電事業者は水力発電よりも別の発電方法あるいは電力の輸入を選んでいる。実際、事業者はここ数カ月間、発電量を半分に減らし、エネルギーを備蓄している。9月初め以降、貯水池式発電所の発電量は週当たり平均160GWh。2021年の同時期は320GWhだった。

2大電力会社のもう1つ、アクスポも「貯水湖の可能発電量が10月には予算に計上された水準に達するよう、今年初めに各地の貯水池式発電所の発電量を減らした。昨冬の降雪量が少なく、その結果雪解け水の量が予想を下回ったからだ」と述べた。

原子力発電所はフル稼働

連邦エネルギー局のデータによると、水力発電量の減少分は主に原子力発電で補っているようだ。原子力発電所は9月初め以降、フル稼働している。発電量は週当たり490GWh。2021年の同時期は285GWhだった。

スイスでは現在、原子力発電が国内の発電量の半分以上を占める。冬の間中、このペースを維持できるだろうか?ここ数年、原発は故障が相次ぎ、数週間から時には数カ月もの間、稼働を停止した。

最終的には、秋に行われた水力備蓄が、この冬の電力不足リスクを低減・緩和するだろう。だが、電力価格の推移次第で発電事業者に思いがけない大きな利益をもたらす可能性もある。

発電事業者の利ざやがどうであれ、今年9月、消費者にとっては法外とも言える2023年の電気料金値上げが承認された。

スイスの水力発電所は、発電方式により3つのタイプに分かれる。

―貯水池式発電所:この記事で取り上げたタイプ。貯水湖に大量の水を貯め、需要が高い時に発電する。代表例はヴァレー(ヴァリス)州のグランド・ディクサンス・ダム

―流れ込み式発電所:貯水湖がないため、全くあるいはほとんど発電量を調整できない。発電量は天候に大きく左右される。代表例はジュネーブのローヌ川にあるヴェルボワ・ダム

―揚水・タービン式発電所:発電所を挟んで上流にある貯水湖と下流にある貯水湖を利用して発電する。電力に余裕がある時は上部の貯水湖に水を汲み上げ、需要が高い時は下部の貯水湖に水を放流しタービンポンプで発電する。代表例はヴァレー州エモッソンで最近稼働を開始したナン・ド・ドランス発電所

下の連邦エネルギー局の地図は、国内の水力発電所の位置と種類を示す。緑色は貯水池式、青色は流れ込み式、赤色は揚水・タービン式。

データ:連邦地理局(swisstopo)、BFE/OFEN

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仏語からの翻訳:江藤真理

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