経済協力開発機構(OECD)が定めた法人税の15%の最低税率について、スイスのギー・パルムラン連邦大統領は国内での承認作業に少なくとも1年かかるとの見方を示した。
このコンテンツが公開されたのは、
OECDに加盟する136カ国は今月8日、最低税率を2023年までに各国で適用することで合意した。これに対し、スイス財務省は声明外部リンクで残る法律問題を解決し適用期限を延ばすよう求めていた。
パルムラン氏は14日、外国記者会との記者会見後、ロイター通信にスイス国内への適用には時間がかかるとの見解を示した。スイスの法人税は各州が独自に決めることができる。平均で15%をやや下回り、多くの多国籍企業を引き付けている。
パルムラン氏は「(スイスの)連邦憲法の改正が必要なため、強制的なレファレンダム(国民投票)にかけて有権者と州の二重の過半数を得なければならない」点を挙げ、「国内の反応を得るために時間が必要だ。1年以上かかることは想像に難くない」と語った。
20カ国・地域(G20)は13日の財務相・中央銀行総裁会議で、法人税改革について閣僚レベルで最終合意した。会議に出席したスイスのウエリ・マウラー財務相はドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)で、スイスへの最低法人税率の適用は「実現可能なはずだ」と語った。
財務相は「我々の試算ではスイスに本社を置く200社ほどが影響を受ける」と述べ、外国企業の子会社数千社も法的基盤の修正を迫られるとはじいた。
一方、合意内容をどう適用させるかは「根本的に未定だ」とした。全26州の税務当局や企業と協議中だが、課税ベースの査定方法に「ゆとり」を持たせるよう求める声が出ているという。
3年は「かなり早い方」
マウラー氏はまた中小企業への控除がいくつかの問題を提起しているが、いずれも解決できないわけではないと話した。
同氏は「恐れていたような大きな調整は最終的に不要とみられ、レファレンダムは必要ない」との見方を示した。また「意見集約や議会での立法作業、各州での調整におそらく3年ほどかかるだろう。我々の水準からすればかなり早い方だ」と語った。
おすすめの記事
おすすめの記事
最低法人税率、スイスに募る危機感
このコンテンツが公開されたのは、
世界共通の最低法人税率導入に向け論議が進む中、多国籍企業の拠点が集まるハブであるスイスの地位に、暗雲が漂い始めた。
もっと読む 最低法人税率、スイスに募る危機感
おすすめの記事
スイスの核廃棄物処分場計画、反対派が国民投票計画
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒ州の放射性廃棄物処分場建設計画が、正式な認可が下りる前から反対運動に直面している。
もっと読む スイスの核廃棄物処分場計画、反対派が国民投票計画
おすすめの記事
ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
このコンテンツが公開されたのは、
ビートルズのジョン・レノンさんが殺害される2カ月前にオノ・ヨーコさんから贈られ、その後盗まれた腕時計について、スイスの連邦最高裁判所はオノさんに時計の完全な所有権があるとの判決を出した。
もっと読む ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
おすすめの記事
スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス証券取引所を運営するSIXグループは11日、英国の証券取引サービスプロバイダー、アクイス・エクスチェンジを買収すると発表した。今後、多角的取引システム(MTF)に参入する方針だ。
もっと読む スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
おすすめの記事
2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦統計局は12日、2022年の1世帯平均の可処分所得はひと月6902フラン(当時レートで約95万円)だったと発表した。前年からほぼ横ばいだった。
もっと読む 2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
おすすめの記事
CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
このコンテンツが公開されたのは、
今月30日、ロシアの研究機関とジュネーブに拠点を置く欧州原子核研究機構(CERN)との協力協定が終了する。研究者はCERNのプロジェクトに影響を及ぼすと警告している。
もっと読む CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
おすすめの記事
女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・バーゼル大と英ダラム大が1989年から2002年の間にスウェーデンで初等教育を修了した75万人以上の生徒のデータを用いて行った調査で、女子生徒の方が多いクラスを出た女性はより多くの収入を得る傾向があることが分かった。
もっと読む 女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
おすすめの記事
11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
このコンテンツが公開されたのは、
スイスアルプスで、季節外れの暖かさが続いている。スイスで最も標高の高い地点にあるユングフラウヨッホでは観測史上最高を記録した。
もっと読む 11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
おすすめの記事
スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで肉食をやめる人が増えている。植物性食品を推進するスイスベジ協会(Swissveg)は30日、スイスのベジタリアンやビーガンの数は過去5年間で約40%増加したと発表した。
もっと読む スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
おすすめの記事
スイスを縦断するツルが過去最多
このコンテンツが公開されたのは、
スイス鳥類研究所によると、スイスでは今季、はやくも過去最多のツルが観察されている。なかには約800羽の大規模な群れもみられた。
もっと読む スイスを縦断するツルが過去最多
おすすめの記事
「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部ティチーノ州ルガーノの州刑事裁判所は23日、利己的な動機で他人の自殺を手助けしたとして、自殺教唆・ほう助の罪に問われた同州の元看護師の女(67)に条件付き罰金刑を言い渡した。
もっと読む 「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
続きを読む
おすすめの記事
多国籍企業 拠点選びにスイス離れの傾向
このコンテンツが公開されたのは、
かつて多国籍企業の拠点として理想的とされたスイス。しかし、今やオランダなど欧州内にある他の「ハブ」にお株を奪われつつある。
もっと読む 多国籍企業 拠点選びにスイス離れの傾向
おすすめの記事
多国籍企業にとって魅力的な州はどこ?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで提案されている税制改革が実現すれば、全26州のうちどこが多国籍企業にとって魅力的かを示す地図が劇的に変わるかもしれない。スイスの大手銀行UBSの試算によると、施設の経費やハイテク施設といった要素が納税額を左右する。
もっと読む 多国籍企業にとって魅力的な州はどこ?
おすすめの記事
巨大IT企業への課税、スイスに痛手か
このコンテンツが公開されたのは、
多国籍企業が税制上の抜け穴を利用した課税逃れを防止するため、国際的な課税ルールの抜本的な改革が急ピッチで進められている。6月の主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)でも、巨大IT企業への「デジタル課税」ルールが焦点の一つになった。ただ、低税率で多国籍企業を誘致してきたスイスは、国際課税ルールの強化で大きな痛手を受ける可能性がある。
もっと読む 巨大IT企業への課税、スイスに痛手か
おすすめの記事
スイス国内の税収格差是正 改革が利するのは誰か
このコンテンツが公開されたのは、
スイスには独自の再分配制度があり、毎年、国内の豊かな州から貧しい州へと多額のお金を動かしている。この制度については盛んな議論が交わされ、不満の声も多く、そして改革も行われてはいるが、今もなお連邦モデルの屋台骨であり続けている。
もっと読む スイス国内の税収格差是正 改革が利するのは誰か
おすすめの記事
多国籍企業にとってジュネーブの魅力は薄れつつあるのか?
このコンテンツが公開されたのは、
ジュネーブに拠点を置く米国や日本の多国籍企業が最近、相次いで人員削減計画を発表した。これはジュネーブの現在の景況や労働市場の流れを反映した動きなのだろうか?
もっと読む 多国籍企業にとってジュネーブの魅力は薄れつつあるのか?
おすすめの記事
スイスの新しい年金改革案ってどんなもの?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの老齢・遺族年金(AHV/AVS)の財源確保が難しくなっている。緊急の改革が必要だが、最初の抜本的改革案は2017年の国民投票で否決された。政府は今年、新しい改革案「年金改革 21」を提案。先の国民投票で否決された女性の定年引き上げを再び盛り込んだ内容だ。
もっと読む スイスの新しい年金改革案ってどんなもの?
おすすめの記事
法人税改革法案否決 案件の複雑さが反対票を招いた結果に
このコンテンツが公開されたのは、
2月12日に行われた国民投票では、政府が進めていた第3次法人税改正法案が否決された。これは、中流階級の抵抗が表れたものと思われていたが、その後の調査から、案件の内容が複雑すぎたために、当惑した投票者が結果的に反対票を投じていたことが分かった。投票者の4分の3は改正案の内容をよく理解できておらず、多くの人が、改正で起こりうる問題を危惧して反対したという。
2月の国民投票では、政府が支持する法人税改正法案が反対59.1%で否決された。州や経済ロビー団体からも承認されていたこの改正案は、スイスに本社を置く多国籍企業を失うことなく、「有害な」税制に終止符を打つための解決策になるはずだった。
だが、左派政党を中心にした反対派は、法人税改正は大企業に有利なだけで、中間所得層を犠牲にするものだと主張。そのような中での否決は、エリート階級に対する中流階級の抵抗が表れた結果ととらえられていた。
ところが、政府の委託を受けて投票内容を調査したリサーチグループVOTOによると、別の事実が明らかになった。投票者1519人を対象にした調査では、はるかに多くの低所得層が反対票を投じたのに対し、中間所得層の反対票はそれほど多くなかったことが分かった。
「よく分からないから反対」
実際には、法人税改正案が高度に複雑な内容だったことと、改正による経済への影響が不透明だったことが今回の投票結果を左右したようだ。調査に応じた人の多くが改正案の意義や影響をよく理解できておらず、約3分の1は「よく分からないからとりあえず反対」していた。
つまり、いくら政府が支持する法案でも、良く分からない改正に賛成するよりは「現状維持」が好まれたということだ。
また、この調査によると、投票者の3分の1が投票直前に意見を決めたことが分かっており、このような人たちが、改正によって国は30億フラン(約3300億円)の減収になるなどと指摘していた反対派の主張に耳を傾けたものと思われる。ちなみに、投票日直前にエヴェリン・ヴィトマー・シュルンプフ元財務相が改正案反対を表明したことは、結果に直接影響していないとみられている。
改正法案が国民投票で否決されたことを受け、今後政府は再び新たな法人税改革法案の作成に奔走することになる。タックスヘイブン(租税回避地)として経済協力開発機構(OECD)や欧州連合(EU)のブラックリストにのらないために、スイスが法人税改革を迫られているのは明らかだからだ。
ウエリ・マウラー財務相は、2017年末までに新たな改正法案を審議したい考えを示している。
もっと読む 法人税改革法案否決 案件の複雑さが反対票を招いた結果に
おすすめの記事
なぜスイス国民は、法人税改正法案に反対したのか?
このコンテンツが公開されたのは、
今年2月21日に行われた国民投票で、法人税改正案が否決された。これは、中間層が強く反対したからだといわれている。(RTS/swissinfo)
この法案の一つの目的は、実質的には外国で事業を展開する持株会社や管理会社などに対する法人税の特別優遇措置を撤廃し、スイス国内の他の会社と同じ税率にすることだった。
反対派は、改正によって法人税収に生じる不足額の約30億フラン(約3300億円)を負担するのは結局、一般市民であり普通の納税者であると主張。これは特に中間層にショックを与え、法人税改正案の否決へとつながった。
もっと読む なぜスイス国民は、法人税改正法案に反対したのか?
おすすめの記事
富裕層を狙い撃ち スイスのキャピタルゲイン課税案
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは9月26日、株式や配当、家賃、資産に対し新たな税金を課す案が国民投票にかけられる。社会で広がる経済格差に対応すべく、左派が提案した国民発議(イニシアチブ)だ。
もっと読む 富裕層を狙い撃ち スイスのキャピタルゲイン課税案
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。