スイスの視点を10言語で

ジュネーブを挟んだスイス人とフランス人、越境ショッピングの驚く価格差

レマン湖
グレーター・ジュネーブと呼ばれるジュネーブ周辺地域には約100万人が住む Keystone / Martin Ruetschi

国境を越えてフランスで買い物をするジュネーブの住民が使ったお金は、スイスに買い物に来るフランス人に比べ、3倍も多かったことが分かった。ジュネーブ周辺地域の消費者行動を調べた初の調査で判明した。

調査外部リンクでは、スイスに住む消費者は昨年、フランス国内での買い物に4億1600万フラン(約450億円)を支出したのに対し、フランスがスイスでの買い物に費やした金額は1億4800万フランだった。ジュネーブ周辺地域の年間総売上高は70億フランに上るとされる。

調査は同地域の3400世帯を対象に実施。定期的に越境ショッピングをすると答えたのは全体の4分の1に上った。 回答者の70%は、為替レートはあまり関係ないと答えた。

家計の予算を100フランとして、スイスの世帯がフランス国内で支出するお金は9フランだったが、フランスの世帯がジュネーブで使うお金は5フランにとどまった。

フランスの消費者は一般的に、家具大手イケアなど特定の商品や店舗を目的にスイスに来る。一方、スイスの消費者はフランスで主に新鮮な魚と肉(6千万ユーロ)、ワインとアルコール飲料(3500万ユーロ)、乳製品(3500万ユーロ)を購入していた。

越境ショッピング、またスイス人が隣国ドイツとフランスで数十億フランを買い物に費やす現状は、スイスの政財界で重要な問題になっている。連邦内閣外部リンクは5月、フラン高や付加価値税(VAT)、越境ショッピングの影響をまとめた報告書を発表する予定だ。

交通の問題

ジュネーブとフランスの関係当局は、ジュネーブ地域における越境の規模を軽視した。ジュネーブ州のアントニオ・オドゲール知事外部リンクは越境に絡む支出を「大したことのない逸話だ」と表現した。

知事が問題視するのは、国境を行き来する買い物客が公共交通機関ではなく自家用車に大きく依存し、交通量の多い道路をさらに混雑させる点だ。調査では、自家用車を使う人はフランス側が85%、スイス側が88%に上る。

地元当局は、今年12月15日にフランス~スイス間で開始予定の鉄道網「レマンエクスプレス」により、道路渋滞の解消を期待する。

しかし、ジュネーブの店主たちは、越境ショッピングが与える影響は払しょくできないと訴える。

ジュネーブ起業家団体のイヴ・メヌー代表は「(当局から出された)メッセージは適切ではない。私たちは状況を軽視してはならない。ジュネーブ市内はかつてないほど空き店舗が目立っている」と話す。

スイスの都市で2番目に大きいジュネーブは、フランスとアルプスを結ぶ交点に位置する。ヴォー州のニヨン、アヌマス、メイラン、ボンヴィル、トノン・レ・バン地域を含む「グレーター・ジュネーブ」と呼ばれるジュネーブ州、ヴォー州、スイス近郊のフランス地域一帯に約100万人が住む。2030年までに、この地域は少なくとも20万人増えると予測されている。

おすすめの記事
Opera for All in Zurich

おすすめの記事

チューリヒ、ジュネーブが「世界で最も生活費が高い都市」4位、5位

このコンテンツが公開されたのは、 お財布に優しいレクリエーションや娯楽がいいなら、チューリヒやジュネーブは避けるべき―。英調査機関の「世界で最も生活費が高い都市ランキング2019」でチューリヒとジュネーブがトップ5入りし、レクリエーション・娯楽部門でうれしくない世界一を獲得した。

もっと読む チューリヒ、ジュネーブが「世界で最も生活費が高い都市」4位、5位

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

ジョン・レノンとオノ・ヨーコさん

おすすめの記事

ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定

このコンテンツが公開されたのは、 ビートルズのジョン・レノンさんが殺害される2カ月前にオノ・ヨーコさんから贈られ、その後盗まれた腕時計について、スイスの連邦最高裁判所はオノさんに時計の完全な所有権があるとの判決を出した。

もっと読む ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
スイス証券取引所を運営するSIX本社

おすすめの記事

スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス証券取引所を運営するSIXグループは11日、英国の証券取引サービスプロバイダー、アクイス・エクスチェンジを買収すると発表した。今後、多角的取引システム(MTF)に参入する方針だ。

もっと読む スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
野菜

おすすめの記事

2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦統計局は12日、2022年の1世帯平均の可処分所得はひと月6902フラン(当時レートで約95万円)だったと発表した。前年からほぼ横ばいだった。

もっと読む 2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
研究所の外観

おすすめの記事

CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える

このコンテンツが公開されたのは、 今月30日、ロシアの研究機関とジュネーブに拠点を置く欧州原子核研究機構(CERN)との協力協定が終了する。研究者はCERNのプロジェクトに影響を及ぼすと警告している。

もっと読む CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
クラスの風景

おすすめの記事

女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査

このコンテンツが公開されたのは、 スイス・バーゼル大と英ダラム大が1989年から2002年の間にスウェーデンで初等教育を修了した75万人以上の生徒のデータを用いて行った調査で、女子生徒の方が多いクラスを出た女性はより多くの収入を得る傾向があることが分かった。

もっと読む 女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
雪山で写真を撮る観光客

おすすめの記事

11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ

このコンテンツが公開されたのは、 スイスアルプスで、季節外れの暖かさが続いている。スイスで最も標高の高い地点にあるユングフラウヨッホでは観測史上最高を記録した。

もっと読む 11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
巨大な豆腐を切る人

おすすめの記事

スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで肉食をやめる人が増えている。植物性食品を推進するスイスベジ協会(Swissveg)は30日、スイスのベジタリアンやビーガンの数は過去5年間で約40%増加したと発表した。

もっと読む スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
草原のツルの群れ

おすすめの記事

スイスを縦断するツルが過去最多

このコンテンツが公開されたのは、 スイス鳥類研究所によると、スイスでは今季、はやくも過去最多のツルが観察されている。なかには約800羽の大規模な群れもみられた。

もっと読む スイスを縦断するツルが過去最多
手

おすすめの記事

「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決

このコンテンツが公開されたのは、 スイス南部ティチーノ州ルガーノの州刑事裁判所は23日、利己的な動機で他人の自殺を手助けしたとして、自殺教唆・ほう助の罪に問われた同州の元看護師の女(67)に条件付き罰金刑を言い渡した。

もっと読む 「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部