再利用できるプラスチックの国際貿易を規制するべく、世界180カ国がスイス・ジュネーブに集まった。スイス代表の環境専門家マルコ・ブレッティ氏は、必ず結論を導き出せると確信する。
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有害な廃棄物の国境をまたぐ移転を規制するバーゼル条約外部リンクの加盟国は、4月29日~5月10日開催のトリプルCOPs外部リンクで、プラスチックごみの世界的な取引をもっとうまく管理する方法を話し合っている。
ノルウェーの提案が採択されれば、プラスチックごみの輸出業者には事前に輸入国の承認を得ること、ごみの量や種類などのより詳しい情報を提供することが義務付けられる。
トリプルCOPs
第14回バーゼル条約加盟国会議、第9回ロッテルダム条約加盟国会議、第9回ストックホルム条約加盟国会議がジュネーブで同時開催されている。電子機器ごみや有害化学物質に関する議論も会議の重要テーマとなっている。
スイス連邦環境省ごみ管理・資源部外部リンク長代理のマルコ・ブレッティ氏に、議論の見通しを聞いた。
スイスインフォ: なぜプラスチックごみの国際取引の規制が必要なのですか?
マルコ・ブレッティ: 近年大量のプラスチックごみが国境を越えて取引されているが、ごみが元はどんなものだったのかは分からない。プラスチックは再利用できる種類のものか?再利用するために輸出されるのか、単に自治体ごみが輸出され処理されただけなのか?
中国が(2018年に)プラスチックごみの輸入を禁じたため、プラスチックごみの流れは新しい行き先を探しており、他の脆弱な国々には再利用目的とされるプラスチックごみが溢れかえっている。だが十分なインフラを備えているのか我々には分からないし、これらのプラスチックごみが適切に管理されているのかも確証がない。
スイスインフォ: 今回の会議で、ノルウェーの提案が採択される見込みは?
ブレッティ: 環境に優しい方法で処分されていないプラスチックごみが世界的に危険な存在になっていることに、各国は気づき始めている。その兆候はある。既に1億3千万~1億5千万トンのプラスチックごみが海洋に浮かび、さらに毎年数百万トンが廃棄されている。本気で何とかしなければならない。この問題にして何らかの決定が下されると私は強く信じている。兆候は大なり小なり前向きなもので、今回でなければ次回の会議だろう。
スイスのプラスチックごみ
スイスプラスチック協会外部リンクによると、スイスのプラスチック消費量は年80万トンに上る。その8割は焼却処分され熱エネルギーや電力になる。約12%は主に飲料用ペットボトルで、スイス国内で再利用され、8%は主にドイツに輸出・再利用される。スイスから輸出されるプラスチックごみのごく一部は、最終的に東南アジアに行き着く。
スイスインフォ: もし採択されれば、スイスのような国ではどのような変化が起こりますか?
ブレッティ: スイスにとって大きな変化はない。スイスはすでに極めて洗練されたごみ管理システムを有しているためだ。ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレン(PE)製品を集めれば、再利用されるとわかっている。スイスでは、多くの自治体に焼却施設があり、プラスチックは環境に優しい方法で処理され、エネルギーや熱に変わる。
だが国際的に見れば変化は起こる。いくつかの国では輸入されたプラスチックが溢れ、そうした国々自身も大量のプラスチックごみを発生させている。洗練されたごみ管理・収集システムがないからだ。
ジュネーブで決まりそうな提案は、プラスチックごみの取引をどう管理するかだ。他に、プラスチックごみ問題をめぐる国際的な官民協力関係を新しく作ること。意識向上や情報の共有、キャパシティ・ビルディング(工業開発のために必要な途上国・新興国の組織能力の構築)や実証事業などの方法を確立するのが目的だ。
プラスチック貿易
世界的なプラスチック生産量は年間3億2千万トンに膨らんでいるが、再利用されるのはその9%、焼却処分は12%に過ぎない。国連によると、推定1億トンが海洋に放出され、8~9割は地上が発生源だ。
プラスチックごみの最大の輸入国だった中国は2018年初めに輸入を禁止。これにより、年間700万トン以上、約37億ドル(約4千億円)相当のプラスチックスクラップが行き先を失った。
焼却に代わるゴミ政策を求める世界連合(GAIA)外部リンクとグリーンピース東アジア外部リンクによると、プラスチックごみの主な輸出国は米国、日本、ドイツ、英国、ベルギーだ。中国の輸入禁止後、プラスチックごみは規制の緩い国々に向かっている。マレーシアやベトナム、タイ、インドネシア、韓国、台湾、インド、トルコなど。
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(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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