スイスの視点を10言語で

障害者年金・保険金の不正受給、GPSで追跡可能に

車椅子に乗る人
自らを障害者と偽り、年金などを不正受給している人に対して、これまで以上に厳しい調査が行われる Keystone

スイス連邦議会は12日、障害者と偽り障害者基礎年金・保険金を不正に受給していると疑われるケースで、対象者の調査にGPS(衛星測位システム)の使用を認めることを決めた。GPSの使用により対象者の現在地を割り出し、行動を特定しやすくなる。使用には裁判所の許可が必要となる。

 不正受給問題はスイス国内で長年、大きな議論になっている。欧州人権裁判所(ECHR)は2016年、不正受給が疑われる人に対する調査や監視を認める法的根拠がスイスの国内法には存在しないとの決定を出した。これを受けて国民議会(下院)と全州議会(上院)の両院で立法措置を進めていた。

 審議では、調査にGPSの使用を認めるかに焦点が当たった。法案には、障害者と偽って障害者基礎年金(IV)や失業者保険などを不正受給していると疑われるケースで、調査員がGPSを使って対象者を追跡できる内容が盛り込まれた。例えば重度の障害者と届け出ているのに日常生活では車を運転しているといった不正行為を特定しやすくなる。ただ、録画や録音装置と異なり、追跡技術の使用には裁判所の許可が必要になる。

 連邦内閣はGPSによる追跡に反対を表明。アラン・ベルセ内務相は、不正受給が疑われる事案を常時監視することは、内閣としては基本的に支持するが、個人のプライバシー権侵害につながるおそれがあると述べた。

 ベルセ氏は「保険会社が捜査機関より力を持つべきではない」とし、保険会社に過度の調査権限を持たせることに懸念を示した。また法律に盛り込まれた「位置を特定するための技術装置」の定義が明確でないと指摘し、この表現ではドローンなども論理的には使用が可能になると述べた。

最も読まれた記事
在外スイス人

世界の読者と意見交換

ニュース

牧草をはむ牛

おすすめの記事

スイス、PFASの規制強化を検討

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は「永遠の化学物質」の異名を持つ有機フッ素化合物(PFAS)の規制強化に着手した。飲み水の上限値は来年から引き下げられる。

もっと読む スイス、PFASの規制強化を検討
ツークの街並み

おすすめの記事

スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ

このコンテンツが公開されたのは、 世界有数の試験・検査・認証機関であるスイスのSGSは、本社をジュネーブ州からツーク州に移転する。大手多国籍企業の移転は、ジュネーブ州の税収にも影響を及ぼしそうだ。

もっと読む スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ
鏡を見るバレエダンサー

おすすめの記事

ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場

このコンテンツが公開されたのは、 スイス西部ローザンヌで2日、第53回ローザンヌ国際バレエコンクールが始まった。23カ国から集まった85人の若手ダンサーが8日の最終選考進出を目指し、さまざまな課題曲に挑戦する。

もっと読む ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場
自転車で遊ぶ子ども

おすすめの記事

スイス政府、国際養子縁組を禁止へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は29日、国外から子どもを迎える国際養子縁組を将来的に禁止する意向を表明した。虐待防止措置の一環としている。

もっと読む スイス政府、国際養子縁組を禁止へ
生殖治療の画像

おすすめの記事

スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針

このコンテンツが公開されたのは、 スイス政府は29日、生殖補助医療法を改正し、カップルに対する卵子提供を合法化する方針を発表した。政府はまた既婚・未婚問わず全てのカップルへの精子・卵子提供を解禁する意向を示した。

もっと読む スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針
研究施設で働くマスク姿の人

おすすめの記事

スイスに感染症情報解析センター発足

このコンテンツが公開されたのは、 感染症に関する情報を収集・解析する「病原体バイオインフォマティクスセンター(CPB)」が23日、スイスの首都ベルンに新設された。集約したゲノムデータを管理・解析し、スイスの感染対策を改善する役割を担う。

もっと読む スイスに感染症情報解析センター発足
茶色い除湿器

おすすめの記事

ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。

もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
Xマークの画面

おすすめの記事

スイスでX離れ進む

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。

もっと読む スイスでX離れ進む

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部