スイスで提案されている税制改革が実現すれば、全26州のうちどこが多国籍企業にとって魅力的かを示す地図が劇的に変わるかもしれない。スイスの大手銀行UBSの試算によると、施設の経費やハイテク施設といった要素が納税額を左右する。
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スイス各州の経済的な競争力のランキングは、UBSが2016年にまとめた調査と変わり映えがない。多国籍企業がオフィスを構えるのに最適なのはチューリヒ州とツーク州で、ジュラ州やグラウビュンデン州など地方部の州はランキング下位の常連だ。
だが今後数年のうちに予定されている法人税改革が実現すれば、こうしたランキングは大きく変わりそうだ。UBSが算出した「州の競争力指標」外部リンクで分かった。
UBSは「現在のデータによると、ジュネーブ州とヴォー州は税制の観点からするとより魅力的になる。一方チューリヒ州やアールガウ州の魅力は下がる」と指摘。「積極的に低い税率で企業を呼び込んできたスイス中央部の州(シュヴィーツ州やオプヴァルデン準州など)は『敗者』となる」
カギはイノベーション
スイス国内に拠点を構える外国企業に対する優遇税制は「有害」だとして、欧州連合(EU)など外国から見直しを迫られている。当初の改革案は2017年の国民投票で否決され、現在案を練り直している。国民投票で可決されれば2020年から新税制に変わる。
ザンクト・ガレン、トゥールガウ、ソロトゥルン、ティチーノ各州はこれまで競争力があまり高くなかったが、改革後は税率が低くなるため、企業にとって魅力的な立地条件が整う。
また、ツーク州のブロックチェーン企業や都市バーゼル州の医薬品・バイオテクノロジーなど、最新技術の企業を呼び込んで集積させてきた州は、他の地域に比べると税制上の魅力がさらに増す。
UBSの競争力指標は、立地コスト、高技能労働者、輸送網など八つの項目でスイス各州の経済的な潜在力を測った。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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