7月11日にヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭でワールドプレミア上映された「累-かさね-」
NIFFF
第18回 ヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭 インターナショナルコンペティション部門で7月11日、松浦だるま原作の実写映画「累 -かさね-」が世界初公開された。外観の美醜への執着 という佐藤祐市監督が表す「ごく普通の欲望」に、スイスなど欧州の観客はどう反応するのか。
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2018/07/12 17:00
上原 亜紀子
横浜市出身。1999年からスイス在住。ジュネーブの大学院で国際関係論の修士号を取得。2001年から2016年まで、国連欧州本部にある朝日新聞ジュネーブ支局で、国際機関やスイスのニュースを担当。2016年からswissinfo.chの日本語編集部編集長。
第18回 ヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭 外部リンク
7月6日から14日までスイス西部ヌーシャテルで開催され、空想的・幻想的なファンタスティック映画168本が上映される。 主な日本作品は「累-かさね-」(佐藤祐市監督、2018年、ワールドプレミア)、「花筐 /HANAGATAMI 」( 大林宣彦監督、2018年、スイスプレミア)、「いぬやしき」(佐藤信介監督、2017年、スイスプレミア)、「ラプラスの魔女」(三池崇史監督、2018年、ヨーロッパプレミア)など。
7月6日に始まった同映画祭ではファンタスティック映画168本が上映中。スイス作品は54本、アジア作品は19本、そのうち日本作品は最多の8本が上映される。今回、特に地元で注目されているのは、佐藤祐市監督による「Kasane(邦題:累-かさね-)」だ。このタイトルは、フランス語圏のヌーシャテルで「La voleuse de visage(「顔を盗む女」の意)」と訳され知られている。日本語の映画ではあっても、自己顕示欲や美しさへの執念といったスイスでも共感できる女の欲望と感受性を描いた物語設定が好評だ。
佐藤監督はこの作品のテーマである外観の美醜に関して、「僕自身、外見だけで、その人の事を決めつける様な事はしたく無いですね。だけど、美しい人には憧れます。ましてや、女性なら誰しも『美しくなりたい』と思うものでしょう」と語る。「この映画の中の登場人物もごく普通の欲望を持っていると思ってます。ですから、沢山の人に共感して貰えると嬉しいです」
「どんな人でも、美しい部分と醜い部分を持っていると思います。自分に足りない物を、心の底から欲しがる。一見、醜い欲望の様にも思えますが、その劣等感や欲望が人にエネルギーを与え、新しい物を創造する力になる事もあります」とも話す。
「Kasane 累-かさね-外部リンク 」
主人公の「かさね」は、類まれな芝居の才能を持ちながら醜い顔のゆえ蔑まれてきた女。顔が美しいが演技力がない病弱な役者「ニナ」と出会い、ふたりはお互いが持っていないものを欲し、深みにはまっていく。不思議な口紅の力で、キスをすると顔が入れ替わり、ふたりの運命が変わる。美醜の本質に迫り、女の満たされない承認欲求と、恐るべき執念によって苦悩する「かさね」の生き様が描かれたストーリー。
映画祭のディレクター、アナイス・エメリさんは、インターナショナルコンペティション部門に選考した理由を「この映画は人の暗黒、つまり裏側や弱さを描いたストーリーで、ヨーロッパ人にとっても頷けるコンプレックスや心理描写がある。主人公が2人の女性という点も興味深い」と説明する。「スイスでは原作の漫画よりももっと幅広い観客層が夢中になるでしょう」(エメリさん)
「Kasane」を観に来たヌーシャテル出身の女性モリー・スタルトさん(24)は、「原作は読んだことないし、日本の文化のことも全く知らないが、面白そうなあらすじだと思って観にきた。魅力的な物語だったので目が離せなかった」と話した。
次回の上映は14日15時から。日本では9月7日から公開される。
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