一部のスイス企業は、中国からの物流が停滞していることなどを理由に従業員の勤務時間を減らし、賃金補償を政府に申請している
Keystone / Alex Plavevski
スイスで新型コロナウイルスの感染拡大により国民生活や経済への影響が広がりつつある。労働時間を減らさざるを得ず、政府の補償制度を申請する企業が相次ぐ。イベントの中止でイベント事業者やアーティストたちからも悲鳴が上がっている。
このコンテンツが公開されたのは、
操業短縮制度を州政府に申請した企業の多くは観光、小売、外食産業だ。スイスの通信社Keystone-SDAによると、中国に生産拠点があるメーカーも申請した。
スイスでは、生産活動が一時的に急減・停止した場合、雇用者は従業員の労働時間を減らすことができる。減らした企業は州政府に事前に申請することで、従業員への賃金に充てる補償金を受け取れる。従業員には本来得られる賃金の8割が給付される。
一部の州は、企業の申請を支援したりよくある質問に答えたりするためのウェブサイトを特設した。コロナウイルスの影響で仕事が減ったことを証明するための書類も指定されている。
生産活動の減少に加えて、スイス政府が1000人以上のイベント開催を3月15日まで禁止したことで受けた被害も補償の対象になる。各州は今後申請数が増えると見込んでいる。これまでのところ、中国の団体観光客が多いルツェルンやベルンの観光業者や小売業者の申請が多い。
サプライチェーンの寸断
一部の州は、製造や物流の乱れに影響を受けた企業の補償申請も受け付けている。アールガウ州当局には、中国や韓国、イタリアからの物流が滞っていることを理由に4社が補償申請した。
ドイツ語圏のスイス公共放送によると、2月にチューリヒ地域から操業短縮を申請したのは5社にとどまった。ただ制度に関する問い合わせは急増しており、今後申請が増えるとみられる。
おすすめの記事
おすすめの記事
スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは4月1日、新型コロナウイルス感染症に対する全国的な感染対策を全て撤廃した。秋冬の感染再拡大が懸念される中、スイス公衆衛生当局はマスク義務の再開は必要ないとしている。
もっと読む スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし
スイス政府は1日、2020年の成長率見通しを引き下げると予告した。昨年12月時点では1.7%を見込んでいた。新しい予想値は今月17日に発表予定。
イベント業者・アーティストも悲鳴
1000人以上のイベントが禁止されたのを受け、コンサートやイベントの主催者団体「スイス音楽興行協会(SMPA)外部リンク」は関連事業者を救済するための基金設立を政府に求めている。
SMPAにはスイスのコンサート、ショー、フェスティバルの興行主43社が加盟する。声明で、政府による禁止措置は「職業上の禁止」に等しいと批判。州によってより厳しい基準を設けることは「不公平」だとし、「多くのイベント業者は、アーティストたちと同じく、存続の危機に脅かされている」と訴えた。
ただ大規模イベントの禁止は「予測できない事象」とされ、不可抗力の原則が適用される。このため政府は禁止措置がもたらす金銭的損失を補償する義務を負わない。
おすすめの記事
スイス、PFASの規制強化を検討
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦政府は「永遠の化学物質」の異名を持つ有機フッ素化合物(PFAS)の規制強化に着手した。飲み水の上限値は来年から引き下げられる。
もっと読む スイス、PFASの規制強化を検討
おすすめの記事
ローザンヌ国際バレエコンクール 韓国高校生男子が優勝、安海さんが3位
このコンテンツが公開されたのは、
ローザンヌ国際バレエコンクールの最終選考が8日に行われ、韓国のパク・ユンジェさんが優勝。群馬出身の安海真之介さんが3位で入賞した。
もっと読む ローザンヌ国際バレエコンクール 韓国高校生男子が優勝、安海さんが3位
おすすめの記事
スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ
このコンテンツが公開されたのは、
世界有数の試験・検査・認証機関であるスイスのSGSは、本社をジュネーブ州からツーク州に移転する。大手多国籍企業の移転は、ジュネーブ州の税収にも影響を及ぼしそうだ。
もっと読む スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ
おすすめの記事
ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場
このコンテンツが公開されたのは、
スイス西部ローザンヌで2日、第53回ローザンヌ国際バレエコンクールが始まった。23カ国から集まった85人の若手ダンサーが8日の最終選考進出を目指し、さまざまな課題曲に挑戦する。
もっと読む ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場
おすすめの記事
スイス政府、国際養子縁組を禁止へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦政府は29日、国外から子どもを迎える国際養子縁組を将来的に禁止する意向を表明した。虐待防止措置の一環としている。
もっと読む スイス政府、国際養子縁組を禁止へ
おすすめの記事
スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針
このコンテンツが公開されたのは、
スイス政府は29日、生殖補助医療法を改正し、カップルに対する卵子提供を合法化する方針を発表した。政府はまた既婚・未婚問わず全てのカップルへの精子・卵子提供を解禁する意向を示した。
もっと読む スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針
おすすめの記事
スイスに感染症情報解析センター発足
このコンテンツが公開されたのは、
感染症に関する情報を収集・解析する「病原体バイオインフォマティクスセンター(CPB)」が23日、スイスの首都ベルンに新設された。集約したゲノムデータを管理・解析し、スイスの感染対策を改善する役割を担う。
もっと読む スイスに感染症情報解析センター発足
おすすめの記事
ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。
もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
おすすめの記事
スイスでX離れ進む
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。
もっと読む スイスでX離れ進む
おすすめの記事
スイスの研究者、キノコで発電する電池を開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究者たちが、キノコで発電する電池を開発した。農業や環境研究に使われるセンサーに電力を供給できるという。
もっと読む スイスの研究者、キノコで発電する電池を開発
続きを読む
おすすめの記事
バーゼルのファスナハト中止も数百人が行進
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を受け、スイス連邦政府は1千人以上の大規模イベントを禁止した。2~4日予定されていた国内最大のカーニバル、バーゼルのファスナハトも中止になったが、数百人がパレード当日の2日早朝、街頭に繰り出した。
もっと読む バーゼルのファスナハト中止も数百人が行進
おすすめの記事
新型コロナウイルス スイス国内の感染状況は
このコンテンツが公開されたのは、
スイス各地で新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者が増加している。国内では大規模イベントが相次いで中止され、政府はさらなる感染防止対策を国民に呼び掛けている。
もっと読む 新型コロナウイルス スイス国内の感染状況は
おすすめの記事
感染経路を突き止めろ スイスの新型コロナ探偵
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染に歯止めをかけるため、感染者と接触した人物も全員経路調査を受けている。スイス当局は専門家がこうした「探偵」業務に当たるよう要請している。
もっと読む 感染経路を突き止めろ スイスの新型コロナ探偵
おすすめの記事
越境労働者を抱えるティチーノ州の新型肺炎リスク
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部のティチーノ州から数キロメートル離れたイタリア北部で、新型コロナウイルスが猛威を振るっている。ティチーノ州で働く人の4人に1人はイタリアから毎日国境を越えてやってくる。一部住民は州政府に対し、国境を封鎖するよう求めている。
もっと読む 越境労働者を抱えるティチーノ州の新型肺炎リスク
おすすめの記事
新型肺炎 スイス観光業に影響は?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの観光当局は、新型コロナウイルス感染の拡大により、今後数週間でスイスを訪れる中国人観光客の数が30〜50%減少する可能性があると語った。
もっと読む 新型肺炎 スイス観光業に影響は?
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。