スイス全州議会(上院)は、スイスの企業は外国で罰金を科された場合、スイスで納める税金から控除できないとする法案を可決した。連邦内閣の提案に同調した格好だ。
このコンテンツが公開されたのは、
同法案は連邦内閣から提出され、7日の全州議会で審議された。賛成30票、反対6票、棄権が5票だった。
控除案は米国におけるスイスの銀行への罰金に関連して俎上に上っていた。現在、国内で支払った科料や罰金、経済制裁は控除の対象外となっている。一方、海外で支払った罰金などに控除が認められるかどうかは明白に決まっておらず、各州がそれぞれ独自に処理している。議会は、法的な不確実性をなくすよう、立法措置を連邦内閣に求めていた。連邦経済委員会(WAK)の多数派は控除の対象とする案を支持した。
連邦上院では、全てを控除の対象とするか否かの両極端だけが議論された。急進民主党のリュエディ・ノーザー上院議員(チューリヒ州代表)は審議で「必ずしも刑事的な責任が問われるわけではない」と、ケース・バイ・ケースで控除の対象にするか判断すべきだと主張した。
ノーザー議員が例に挙げたのは、連邦経済省経済管轄局(SECO)に許可を与えられた対シリア輸出が、米国による経済制裁に違反する場合だ。国民党のペーター・フェーン議員(シュヴィーツ州代表)も「スイスとは異なる法制度の国とも取引する」と後押しした。
キリスト教民主党のピルミン・ビショフ議員(ソロトゥルン州)は、外国での科罰手続きが「何らかの形で違法に行われた」場合は、控除の対象にすべきだと主張した。半面、外国で科されたというだけで控除対象にしてはならないと述べ、経済委の提案は折衷されていないとした。
ウエリ・マウラー財務相は、連邦内閣の提案は国際法の指針に沿ったものだと説明。経済委の多数派の意見は国際的に見れば「やや異端だ」と述べ、連邦内閣の提案と経済委の提案の中間が最良の解決策だと位置づけた。「下院が別の解決策を見いだすかどうかは分からないが、努力する価値はある」と述べた。
犯罪行為の実行に費やした費用も控除の対象外となる。刑罰的な意味を持たない収益に対する制裁は、これまでどおり控除できる。
今後、国民議会(下院)が同案を審議する。
SDA-ATS
おすすめの記事
スイス、国際養子縁組を終了へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦政府は29日、外国籍の子どもの養子縁組を終了する意向を表明した。虐待防止に向けた対策としている。
もっと読む スイス、国際養子縁組を終了へ
おすすめの記事
スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針
このコンテンツが公開されたのは、
スイス政府は29日、生殖補助医療法を改正し、カップルに対する卵子提供を合法化する方針を発表した。政府はまた既婚・未婚問わず全てのカップルへの精子・卵子提供を解禁する意向を示した。
もっと読む スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針
おすすめの記事
スイスに感染症情報解析センター発足
このコンテンツが公開されたのは、
感染症に関する情報を収集・解析する「病原体バイオインフォマティクスセンター(CPB)」が23日、スイスの首都ベルンに新設された。集約したゲノムデータを管理・解析し、スイスの感染対策を改善する役割を担う。
もっと読む スイスに感染症情報解析センター発足
おすすめの記事
ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。
もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
おすすめの記事
スイスでX離れ進む
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。
もっと読む スイスでX離れ進む
おすすめの記事
スイスの研究者、キノコで発電する電池を開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究者たちが、キノコで発電する電池を開発した。農業や環境研究に使われるセンサーに電力を供給できるという。
もっと読む スイスの研究者、キノコで発電する電池を開発
おすすめの記事
ジョンソン・エンド・ジョンソン、スイスでの人員削減を計画
このコンテンツが公開されたのは、
米ヘルスケア大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、スイスでの人員削減を計画している。
もっと読む ジョンソン・エンド・ジョンソン、スイスでの人員削減を計画
おすすめの記事
「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
このコンテンツが公開されたのは、
スイス最大手のUBS銀行の資料室には、第二次世界大戦中の行動に関する秘密がまだ残されている可能性がある――。過去にスイスの銀行と独ナチス政権とのつながりを調査した歴史家、マルク・ペレノード氏は、再調査の必要性を強調する。
もっと読む 「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
おすすめの記事
スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠
このコンテンツが公開されたのは、
スイスインターナショナルエアラインズ(SWISS)のブカレスト発チューリヒ便が先月オーストリアのグラーツで緊急着陸した後、客室乗務員(23)が死亡した事件で、死因は酸欠だったことが分かった。複数のスイスメディアが報じた。
もっと読む スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠
おすすめの記事
ユングフラウヨッホ、2024年の来場者が100万人を突破
このコンテンツが公開されたのは、
ユングフラウ鉄道グループは、ユングフラウヨッホの2024年の来場者が105万8600人となり、2015年以来6度目の100万人の大台を超えたと発表した。
もっと読む ユングフラウヨッホ、2024年の来場者が100万人を突破
続きを読む
おすすめの記事
クレディ・スイス、外国為替取引の不正行為で罰金150億円
このコンテンツが公開されたのは、
米ニューヨーク州金融サービス局(DFS)は13日、銀行大手クレディ・スイスが外国為替取引で不正行為を働いていたとして、同銀行がDFSとの同意審決に基づき、罰金1億3500万ドル(約151億2千万円)を支払うことで合意したと発表した。
もっと読む クレディ・スイス、外国為替取引の不正行為で罰金150億円
おすすめの記事
住宅ローン証券問題でクレディ・スイスに数十億ドルの罰金
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの大手行クレディ・スイスは、米住宅ローン担保証券市場での不正により、予想を上回る大金を支払うことになった。米当局と25億ドル(約2900億円)の支払いで合意した。さらに補償金が数十億ドルのしかかる。同行が23日に発表した。支払い総額は同行が想定していたよりもやや大きくなった。
クレディ・スイスの全訴訟のための引当金は2015年末時点で16億フランにのぼった。11月に同行はさらに3億5700万フランを手当てした。その大部分は住宅ローン証券問題との関連だ。
ともあれ罰金は、事前に50億~70億ドルに膨れ上がった総額よりは低かった。争点となった事案は2007年の取引に遡る。
住宅ローン問題による25億ドルの罰金とは別に、クレディ・スイスはさらに28億ドルの補償金を用意しなければならない。同行は米当局との間で、借り主に同額を支払うことで合意したと発表した。
ただ、この支払いはまだ最終的に交渉が必要だ。それには合意から5年もの歳月がかかる。
ライフアイゼン・グループには罰金なく
ライフアイゼン・グループも米国との租税訴訟で合意した。罰金は科されなかった。
ライフアイゼンが23日に発表した。同行はカテゴリー3に振り分けられた。同カテゴリーに関しては米国の法律に違反していないことを金融機関側が証明しなければならなかった。スイスの銀行の多くは、米司法省と既に前年に合意していた。
今年1月以降にカテゴリー2の全事案が審理を終えた。税法違反を犯したとみられる銀行が対象となった。
もっと読む 住宅ローン証券問題でクレディ・スイスに数十億ドルの罰金
おすすめの記事
スイスと米国の経済関係、米の新政権誕生後も現状維持か
このコンテンツが公開されたのは、
11月の米大統領選本選を控え、スイスが注目するのは米国との関係が新政権誕生後、どう変わるかだ。両国関係の大部分を貿易が占めるが、近年はスイスの銀行による米国人の脱税ほう助問題が互いの経済関係に影を落としている。スイスとしては、国益さえ守れれば新大統領はヒラリー・クリントン前国務長官か実業家ドナルド・トランプ氏のどちらでもいいかもしれないが、果たして専門家はどう見ているのか。
もっと読む スイスと米国の経済関係、米の新政権誕生後も現状維持か
おすすめの記事
秘密口座を整理するなら今がチャンス!?
このコンテンツが公開されたのは、
海外に秘密口座を持つスイス人は自主申告したほうがよい。事情によっては処罰を免れるためだ。連邦納税事務局の説明によると、1年後では手遅れになる。
もっと読む 秘密口座を整理するなら今がチャンス!?
おすすめの記事
税金控除と家庭のあり方について論争沸騰
このコンテンツが公開されたのは、
国民党は、家庭内で子どもの面倒を見ている世帯の経済的負担の軽減を要求している。今回のイニシアチブの目的は、それらの家庭にとって不公平な税制を改正し、全ての家庭を同等に扱うことだと主張する。 イニシアチブには、はっきり…
もっと読む 税金控除と家庭のあり方について論争沸騰
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。