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郵便物の減少に伴い、新規事業に乗り出すスイス郵便

郵便物を仕分けする swissinfo.ch/Thomas Kern

グローバル化で競争の激しくなった市場、国内では郵便物の減少。そんな中、各国の郵便局は事業の多角化に生き残りをかけている。スイス郵便(Die Post/La Poste)の一部とフランス郵政公社の最近の合併はその一例だ。

 スイスポストインターナショナル(SPI)とフランス郵政公社のグローバル部門の合併は2012年7月に書類上成立したが、ポストメール(手紙や新聞を取り扱う郵便部門)のディレクターで、新規設立された会社アセンディア(Asendia)の理事長であるウルリヒ・フルニ氏によると、詳細はまだこれから議論して詰めていかなければならない。

 国外の営業所の合併もこれからであり、ベルンとパリの本社の社員は互いに協力して働くことに慣れなければならない。これはすべて、アセンディアが商用郵便物のグローバル市場で大手となるという目標に向けた第一歩だ。目指すのは、企業と消費者間の取り引きを対象とした国際郵便市場の世界最大手、ドイツポスト所有のDHLに追いつくことだ。

 フルニ氏はこの市場でDHLが現在優位に立っていることを認めつつ、いずれは「DHLに追いつき、最大手の地位を手に入れる計画だ」と付け加える。

 DHLは現在ヨーロッパで市場シェアの3割以上を持っているため、この目標は少し高望みのように思えるかもしれない。しかし、連邦工科大学ローザンヌ校(ETHL/EPFL)でスイス郵便の支援するネットワーク産業マネージメント部門の部長を務めるマティアス・フィンガー氏によると、スイスポストインターナショナルとフランス郵政公社グローバル部門の合併は正しい選択だ。

 「多くのスイス企業と同じく、スイス郵便はスイスという国にとっては大きすぎるが、グローバルプレーヤーとなるには小さすぎる。フランス郵政公社と合併することで、この問題の一部を解決できる」

 また、フィンガー氏とフルニ氏はいずれも、郵便サービスの国外展開にあたってスイス郵便には大きな利点があると話す。スイスに本社を置く企業の多くは国外に支店を開いているため、スイス郵便の国外サービスに対する需要が既に存在するからだ。

 「もともとの(国際展開)戦略は、スイス多国籍企業の外国拠点を狙って、そこから事業を拡大していこうというものだった。スイスと規模は似ているが、スイスほど多くの多国籍企業を持たないフィンランドやデンマークといった国に比べて、(スイス郵便は)この点で有利だ」とフィンガー氏。

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合併で有利に

 こういった有利なビジネス環境にあったにもかかわらず、スイス郵便はこれまで特に海外展開に積極的ではなかったとフィンガー氏は言う。それよりも、スイスポストソリューションズという部門を通じた事務管理部門のソリューション提供など、いくつかの特殊な市場に特化してきた。

 「スイス郵便は正しい行動をとっていると思う。ただ、小さな組織だし、国も小さい。政府はスイス郵便にさまざまな事業を行う裁量を与えているが、結局のところ国営企業であり、あまり大きなリスクは負えない」

 郵政関連のコンサルタント、ジェームズ・キャンベル氏によると、フランス郵政公社もこれまでかなり保守的だった。それに遅まきながら気づき、国際的競争力を高めるために土壇場でとった策が、恐らくスイスポストインターナショナルとの合併だった。

 「ここ10年から15年、フランス郵政公社は市場に素早く適応できずにいたと見られている。公社内に有能な人はたくさんいるにもかかわらず、組織全体として市場の変化を理解できず、取り残されてしまった。追いつけるかどうかも危ぶまれるほど後れをとっている」

 一方、スイスポストインターナショナルにとって、フランス郵政公社は候補に挙がった中で最高の合併相手だった。

 「両者はとても似たタイプの郵便事業を展開している。フランス郵政公社も国営だし、金融サービス部門を持っているところも同じだ。最高の相手だったと思う」とキャンベル氏は言う。

 スイス郵便はデジタルメール、「ハイブリッド」メール、電子投票システムなど、新たな領域へ事業を拡大しつつあると、ポストメール部門ディレクターでアセンディアの理事長であるウルリヒ・フルニ氏は言う。スイスポストソリューション部門は既に国外でデジタルメール、ハイブリッドメール(郵便物を紙で受け取るか電子フォーマットで受け取るかを選べるシステム)の選択肢を提供しており、これはスイスでも広まりつつあるという。将来は、消費者がインターネットで手紙を受け取る「電子郵便受け」を持てるようになるかもしれない。

 スイス郵便は「マイニュースペーパー(MyNewspaper)」というオーダーメイドの新聞を提供するサービスを計画していたが、消費者の反応が悪かったため、最近中止が発表された。購読者がさまざまな国内外の新聞から読みたい欄を選び、それを一つの新聞としてまとめて印刷し、配達するというアイディアだった。

郵便サービスの現代化

 スイスポストインターナショナルとフランス郵政公社のような合併は、郵便業務の全盛期に必要とされていたインフラを現在の需要に合わせて最適化する一つの方法だと、万国郵便連合(UPU)の市場開発部長、ケネス・マキューン氏は話す。

 「多くの地域で郵便物の量と収入が減少した結果、大量の郵便物を扱うために造られた施設はコストのかかるお荷物になってしまった。不要となった業務に就いていた従業員の配置換えや、新規事業のため最新の小包取り扱い設備の導入などが必要だ」

 マキューン氏は、極端な例としてスウェーデンとデンマークを挙げる。両国は約3年前、それぞれの国営郵便事業を完全に合併した。しかし世界を見渡せば、手紙や小包の郵送という従来の意味での郵便が、今でも活況を呈している地域もある。

 「新興国は一種の例外。実はブラジル、インド、中国、ロシアでは郵便は今も盛んだ。だから郵便は死んだなどといっているわけではない。変化しているだけであって、新興国にはまだまだ手紙の需要がある」

正しい道

 多角化や合併は需要の変化する時代において利益を出し続けるための方策だが、多くの郵便事業者は政府の規制や、従来求められている郵便事業にも対応しなければならない。キャンベル氏によると、ドイツの郵便事業ドイツポストは運送会社DHLを通じた国際事業に乗り出した時、政府の規制を踏み越えたと考えているアナリストもいるという。

 フルニ氏によれば、アセンディアの新しい役割は「国際郵便の分野における企業と消費者間のソリューション」を提供するという、非常に明確で基本的なものだ。それを少しでも超えれば、連邦政府の郵便事業規制から逸脱することになるだろうと話す。

 「当社は他国のインフラへの投資は行わないし、またそれは許されないと思う。例えば外国に大規模な仕分けセンターを持つことはないだろう。アセンディアは大きなインフラを持たない販売会社だ。当社に必要なのは良い商品と高品質、ITシステム、そしてもちろんセールスのスタッフ。それだけだ」

多角化を進めるスイス郵便グループには、国際部門を含め6つの部門がある。

ポストファイナンス:スイス郵便の金融部門。請求書の支払いと一部の銀行業務を行う。ポストファイナンスは最近銀行免許の認可を受けたため、提供できる金融サービスの幅が広がったが、企業向け融資や不動産融資は行わない。ポストファイナンスは2013年夏にスイス郵便から分離し、独立した事業体となる予定。

アセンディア(元スイスポストインターナショナル):スイス郵便の国際郵送部門で、最近フランス郵政公社のグローバル部門と合併し、企業と消費者間の郵送サービスを提供することになった。

スイスポストソリューションズ:事務管理および郵便物仕分け関連の製品やサービスを世界中で提供。

ポストメール:郵便物の取り扱いを担当する部門。

ポストロジスティックス:スイス郵便の物流部門で、スイス全国で3カ所の小包取り扱いセンターと40カ所の物流センターを運営。

ポストバス:スイス全国でバス網を運営する、スイス郵便の交通サービス部門。

郵便局およびセールス:スイス全国の郵便局およびセールスカウンター網の担当部門。

(英語からの翻訳 西田英恵)

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