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スイス中銀、コロナ危機でも利下げ見送り

ユーロ紙幣とフラン貨幣
ユーロ圏に囲まれているスイス。スイス国立銀行(SNB)の金融政策も欧州中央銀行(ECB)にらみになる © Keystone / Gaetan Bally

スイス国立銀行(中央銀行、SNB)は19日、政策金利をこれまでと同じマイナス0.75%にすると発表した。新型コロナウイルスの世界的流行への不安で金融市場が混乱し、各国中銀も沈静化に苦戦している。事態のさらなる悪化に備え、SNBは切り札を残した格好だ。

SNBは金利を据え置く一方で、為替市場での介入を増やす方針を表明した。また、銀行に対するマイナス金利免除の対象をこれまでの「法定準備金額の25倍」から、4月1日以降は「30倍」に引き上げ、民間銀行の負担をさらに軽くする。

「今の状況を踏まえると、さらなる利下げは不利になる」。SNBのトーマス・ジョルダン総裁は3カ月に1度の金融政策の見直し後、電話での記者会見でこう語った。

追加利下げの見送りは市場の予想通りだ。欧州中央銀行(ECB)は12、18日に相次ぎ資産購入策を打ち出したが、利下げには踏み込んでいない。フランの魅力を下げるためにユーロよりフランの金利を大幅に低く保ちたいSNBにとって、マイナス金利を深掘りする緊急性はない、との読みが多かった。

今は様子見したい事情もある。新型コロナウイルスによる世界的な景気減速への不安が広がり、金融市場では株価暴落が多発。各国中銀は利下げや協調資金供給など、対応に追われている。

15日には米連邦準備理事会が緊急会合を開いて1.0%の利下げに踏み切った。合わせてSNBなど主要6中銀がドル資金供給策の拡大を打ち出したが、翌16日の米株式相場は過去最大の下げを記録。18日にトランプ大統領が打ち出した1兆ドル(約107兆円)の経済対策や、ECBが発表した7500億ユーロ(約90兆円)の資産購入策でやや落ち着きを取り戻したが、株価下落が止まったとの見方は少ない。

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「2008年は金融システムの安定が金融不安の種だった。今は金融システムは安定しているが、外部からショックが与えられている」。リーマン・ショックと新型コロナショックとの違いについて、ヨルダン総裁は会見でこう説明。新型コロナウイルスの脅威に対しては、医療的な措置や財政対応が必要だとも繰り返し強調した。

ベルン大学のファビオ・カネッジ氏外部リンクは「中銀の資金供給策の効果は決して小さくない。だが今注目されているのは、雇用の保護など政府がどのような財政政策を打ち出すかだ」と指摘する。

追加措置への期待

SNBは19日、インフレ率が6月末にはマイナス0.6%まで落ち込むとの見通しを示した。昨年12月時点の見通しでは、20年3月末に0.1%、6月末に0.0%に戻った後、12月末には0.3%に上昇するシナリオを描いていた。原油価格の下落、成長率の減退、フランの高騰により、見通し引き下げを余儀なくされた。2020年の成長率は1.5~2.0%とみていたが、マイナス圏に沈むと予測する。

インフレ率がプラスに転じるのは2021年になるとの見立てだ。声明外部リンクに「(2022年末までの)予測期間中、SNBの政策金利はマイナス0.75%にとどまる」と明記した。

ジョルダン総裁は連邦政府や他の中央銀行と密に連携し、新型コロナに対応していく姿勢を強調した。必要に応じてさらなる流動性供給策を講じると表明している。

スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)のハンス・ゲルスバッハ教授とジャン・エクベルト・ストゥルム教授は17日、1千億フラン規模の基金の設置を提唱外部リンクした。政府の打ち出した100億フランの緊急経済対策では消費の落ち込みなどをカバーできないとのの見立てだ。財源の一部として、SNBからの特別出資を提案した。SNBが為替介入で得た外貨を外国株などに投資し、巨額の黒字をたたき出していることが背景にある。

これを好機と踏んで無条件で全国民に一定額を支給する「ベーシックインカム」外部リンク導入を訴える活動家も出てきた。

各国が競うように金融政策や財政出動を打ち出し、スイスでも大規模な経済措置への期待が膨らむ。その中で中銀が果たすべき役割が問われている。

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