市場の格言に「中央銀行には逆らうな」というものがある。では中央銀行は米大統領に対抗できるのだろうか?スイス国立銀行(SNB)がその答えを出そうとしている。
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スイス中銀が通貨戦争の集中砲火を浴びるのは今回が初めてではない。米連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)がともに利下げモードに切り替えたことで、スイスはフランが上昇しインフレの動きが止まるのを傍観するか、為替介入国として米政権から批判されるかの二択を迫られている。
もともとフラン相場は高止まりしていた。安全通貨として、市場心理が悪化するたびに投資マネーが流れ込み、直近では2年ぶりのフラン高・ユーロ安水準に上昇していた。市場で最も重視されている二つの中銀が相次いで利下げに向かっている今、資金流入が加速する公算が大きい。マイナス0.75%と世界で最も深いマイナス金利政策をとっているにもかかわらず、フランは世界の利下げ競争の「恩恵」を受ける最大の受益者になろうとしている、JPモルガンのアナリストたちは言う。
スイス中銀はフラン高に耐えるか、次回9月の理事会でマイナス金利のマイナス幅をさらに広げるかの選択を迫られている。あるいは、欧州債務危機の間に大規模に行ったような為替介入を強く示唆し続けるという手もある。
ドナルド・トランプ米大統領は中国と欧州が共に「不公正に」通貨を押し下げていると非難し、その言葉は激しさを増している。米財務省は今年5月、為替操作国のリストからスイスを除外したが、スイスの対米貿易黒字はいまだに大統領の攻撃対象だ。JPモルガンが指摘したように、「トランプ氏が通貨や金融政策に対してますます口やかましくなっていることは、SNBによるフランの押し下げを不可能にするだろう」。
これはSNBに対抗してフラン買いに勤しむヘッジファンドにとっては朗報だろう。彼らの戦術はこれまで見事に失敗してきた。
クレディ・スイスの為替ストラテジストのシャハブ・ジャリノーズ氏は、「通貨戦争の新たな環境の中でさらに全面的な『最弱競争』が進むようなら、(フランは)中銀の金融政策によって体系的に価値を落とすことが難しくなる」と述べた。
Copyright The Financial Times Limited 2019
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(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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