銀行の環境破壊投資を止めるには
スイスで今週、化石燃料に投資する金融機関を批判する気候活動家が初めて裁判に勝利した。環境保護派の矛先にあるのはクレディ・スイスのような民間銀行だけでなく、中央銀行のスイス国立銀行(SNB)も射程に入っている。
SNBは8千億フラン(約90兆円)を超える外貨準備を抱え、世界有数の機関投資家の一つになっている。外貨準備は為替介入など金融政策を通じてだけでなく、一部は毎年連邦・州政府に配当として10億フラン以上をもたらし、スイス国民に利益を還元する。
だがSNBが利益を生み出す手段に国民全員が賛同しているわけではない。
例えば、SNBや年金基金が兵器メーカーに投資するのを禁止するよう求めるイニシアチブ(国民発議)には10万人以上が署名した。
だが気候活動家が深刻に見ているのは、銀行が化石燃料市場に投資していることだ。スイス・ドイツ語圏の経済誌ハンデルス・ツァイトゥングによると、SNBは米国企業のエクソンモービルに10億フラン超を投資するなど、世界最大の石油会社の株式を保有している。
環境団体のスイス気候同盟外部リンクは、SNBが一定程度「気候変動が引き起こす損害に責任を負う」と指摘する。
「我々の仕事ではない」
こうした批判に対し、SNBのアンドレア・メクラー理事は昨年11月、SNBの使命は物価の安定性を確保することであり、「気候政策は我々の仕事ではない」と発言した。
スイス銀行協会のパトリック・オディエ前会長も、持続性に関して手本を示すことはSNBの使命の一部とは言えないと主張する。
オディエ氏はSNBが昨年「気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(NGFS)外部リンク」に参加したことを引き合いに出す。各国の中央銀行や金融監督当局が集まり、金融面から持続可能性を促しパリ協定(気候変動)の目標を達成しようとする試みだ。
ただSNBの広報も強調するように、ネットワークへの参加は中央銀行間で知見を共有することが目的であり、投資政策の変化を意味するものではない。連邦議会の環境派議員や気候活動家が求めるような政策転換は期待できない。
「汚い」銀行のブラックリスト
「スイスの金融業から直接・間接に排出される温室効果ガスは、2030年までにゼロに減らす必要がある。化石燃料に関連する融資や投資、保険は止めなければならない」。環境スト運動「気候ストライキ外部リンク」はこう訴える。守らない金融機関をブラックリスト化する方針だ。
石油に投資する金融大手との戦いで、活動家は今月、重要な勝利を収めた。ローザンヌ裁判所は13日、2018年にクレディ・スイスのローザンヌ支店に不法侵入した12人を無罪とした。12人はスイステニス界のスター、ロジャー・フェデラーが同行とスポンサー契約を結んでいることから、支店の敷地でテニスの試合を行った。同行がフェデラーの人気を利用して環境破壊投資の悪いイメージを上塗りしていると訴えるためだ。
石油に投資しない?
スイス銀行協会のイェルグ・ガッサー会長は、長期的には銀行が大量の二酸化炭素(CO2)を排出する企業への融資を停止すべきであると賛同する。だがスイスのニュースサイトnau.ch外部リンクのインタビューでは、急激に変わるのは現実的ではなく、経済全体にマイナス効果をもたらすと警告した。
ジャン・ピエール・ダンティンSNB元副総裁はフランス語圏のスイス公共放送ラジオ(RTS)外部リンクで、銀行業界は環境投資に向け「信じられないほどの転換」を進めていると語った。しかし石油投資から撤退するのもまた間違いであり、石油会社の株主であり続け、例えば新しい油井や炭鉱を開発しないよう株主総会で訴え続けることがより効果的だと主張した。
フランス語圏の日刊紙ル・タン外部リンクによると、英バークレイズ銀行の株主たちはこうした戦略を取り、パリ協定に準拠しないエネルギー企業への投融資を撤回するよう求める決議を同行に突き付けた。
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GAFA投資進めるスイス中銀が抱えるリスク
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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