スイスの視点を10言語で

青地に灰色の十字でもスイスの国旗?

スイスの国旗製造業者も、重い罰金を避けるため、色を指定した一覧表を受け取ることになる Keystone

スイスの国旗と「メイド・イン・スイス」の使用をきちんと保護しようという動きが起こっている。

正式には「紋章と記章及び、トレイドマークと生産地明記に関する法」と題された法の改正案が今、政府内で議論されている。「スイス性」を見直すこの議論には、青地に灰色の十字でもスイスの国旗かといった根本的問いも浮上している。

 連邦知的所有権機関 ( IGE ) のフェリックス・アドール氏によれば、スイスの現行法は「スイスの白十字も国旗も商業目的で生産されたものへの使用を禁止する」と謳っている。これはスイス人にも外国人にも適用されるが、多くの問題をはらむ。スイスの会社はなぜスイスで生産されるものに白十字も国旗もつけられないのかと理解に苦しみ、一方外国製品にこうしたマークがついていても一向に取り締まられていないという現実があるからだ。「スイスの法に明確な規定が必要になっている」とアドール氏は強調する。

スイス十字の意味

 こうした状況を受け、連邦政府は先月「世界でもっとも成功しているブランドの1つであるスイス国旗を、誰が使えるのか、どのように保護するのか、そしてそれを誰が施行するのか」についての暫定案を発表した。

「こうしたことを考え出すと、さまざまな問題にぶつかる。スイスの十字とは何なのか?青地に灰色の十字でもスイスの十字と見なされるのか?など。従ってスイス十字の意味を規定することも改正案の重要な部分になる」
 とアドール氏。

 アドール氏の提案は、スイス十字と「メイド・イン・スイス」を商品に使用できるのは、法改正後の規定条件を満たす企業だけで、また国の象徴としての紋章はスイス政府だけが使用できるようにするというもの。

国旗は1889年に規定

 こうした動きの中、政府は2008年1月1日付けで「パントーン485 ( Pantone 485 ) 」の赤色を、政府のロゴ用国旗の公式の色と決定し、標準化の一歩を踏み出した。

 もともとスイス国旗の原点ははっきりしていない。ただ赤色を愛する気持ちは古くから存在していたようだ。それは「朝の光が空を赤く染め、その輝きが我々を包む」という国歌の歌詞に読み取れる。

 また、スイスの独立は1291年に、ウーリ、シュビーツ、ウンターヴァルデンの原初3州がハプスブルグ家の支配から逃れようと団結し、誓約を交わした時に成されたが、国旗の方は、1889年の正式規定を待たなくてはならなかった。

 規定には「連邦の紋章は、赤地に白の十字とする。十字はまっすぐに伸びた、同じ長さの4つの腕からなり、腕の長さはその幅の6分の1分だけ長いものとする ( 幅が6センチメートルなら長さは7センチメートル ) 」と明記された。

赤色の効果

 スイス政府は「何がブランド商品になるか」を時代に先駆け、すでに19世紀に知っていたようである。

 「赤は特に人を惹きつける色」と分析するのは、スイスの広告会社GGKのトップ、ヘルマン・シュトゥリットマッター氏。
「赤は青より3倍も早く目に飛び込んでくる。また白と赤の組み合わせほどコントラスト効果が高いものはほかにない」
 とスイス国旗の宣伝効果を絶賛する。

 かくして、スイスの多くの企業のマーケッティング部が赤色を会社のロゴに採用している。大手銀行のUBS、保険会社「スイス・ライフ( Swiss Life ) 」、航空会社「スイスインターナショナルエアラインズ ( SWISS ) 」、スイスインフォの親会社である「スイス放送協会 ( SRG/SSR ) 」など。


 心理学者によると、赤色は愛、嫌悪から危険や怒りまでの感情を幅広く表現する。しかし、ロゴに赤を選んだ銀行「ライファイゼン ( Raiffeisen ) 」によれば、赤色は「精力、専門性、信用」も象徴するという。

 ヨットレース「アメリカ杯」で2度も優勝したスイスのアリンギ・チームもロゴに赤を使っている。恐らく無意識に「スイス性」を打ち出したいと思っているのではないだろうか。

swissinfo、トマス・ステファンス 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 訳

白十字を食品に付けるのは、たとえそれがスイスで生産されたものであっても、禁止されている。Tシャツ、絵葉書、スプーンなどについている白十字は、装飾を目的としていると見なされるため合法とされる。

現行法でも白十字と国旗の使用は保護されており、その悪用は禁止されているが、現実には用語のあいまいさや主観的解釈が手伝って罰金を徴収するまでには至っていない。

しかし、現行法の改正を検討する期間が終了する2008年3月末からは、最高100万フラン ( 約1億円 ) の罰金と最高5年の入獄の刑が課せられることになっている。

人気の記事

世界の読者と意見交換

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部