向精神作用を含まない合法大麻「カンナビスCBD」製品が、スイスのスーパーマーケット「Lidl(リドル)」で購入できるようになった。
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは、精神作用物質THCが1%を超える大麻は規制薬物となり、栽培、販売および使用が法律で禁止されている。一方、CBD(カンナビジオール)は大麻に含まれる成分カンナビノイドの一つで、THCのような精神作用がない。
製造元はスイス北東部トゥールガウ州にあるスタートアップ企業「ザ・ボタニカルズ外部リンク」。一部オートメーション化された室内栽培場で、100%スイス産の大麻草を作っている。
>>大麻、再び見直される「禁断の薬」
製品は欧州医薬品庁(EMA)のガイドラインに沿って栽培された大麻の花を乾燥させ、パック詰めしたもの。たばこのように紙で巻いて吸引する。スイス国内のドイツ語圏、フランス語圏のリドルで購入できる。1パック1.5グラムで17.99フラン(約2千円)。リドルはドイツの格安スーパーマーケットのチェーンで、スイスでも多数の店舗を展開している。
健康への影響は?
通常の大麻のような向精神作用がないとはいえ、合法大麻の健康への影響はまだはっきり分かっていない。
中毒性物質に関する調査・啓発団体「アディクション・スイス外部リンク」は昨年「引き続き注意が必要だ」と警告した。特に妊娠中は胎盤に影響が出るおそれがあるため、CBDの摂取を避けるよう呼びかける。
連邦内務省保健局は抗酸化作用、抗炎症作用、抗けいれん作用といった「麻薬」の医療効果については認識しているとしたものの、「現時点で、研究によってその効果がはっきり実証されたわけではない」と述べた。
おすすめの記事
世界で最も急勾配のロープウェイがスイスで開業
このコンテンツが公開されたのは、
スイス中部ベルナーオーバーラント地方のシュテッヘルベルクとミューレンの間に、世界一急勾配のケーブルカーが開業した。
もっと読む 世界で最も急勾配のロープウェイがスイスで開業
おすすめの記事
2025年のスイス連邦大統領はカリン・ケラー・ズッター氏
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦議会は11日、カリン・ケラー・ズッター副大統領兼財務相(急進民主党、60歳)を新大統領に選出した。新副大統領にはギー・パルムラン経済・教育・研究相(国民党、65歳)が選ばれた。
もっと読む 2025年のスイス連邦大統領はカリン・ケラー・ズッター氏
おすすめの記事
医療費の高騰、依然としてスイス国民の最大の関心事 調査
このコンテンツが公開されたのは、
大手金融機関UBSが12日発表した調査「心配事バロメーター」によると、依然として医療費と健康保険料の高騰が最大の懸念事項だったことが分かった。環境と年金も懸念事項にあがっている。
もっと読む 医療費の高騰、依然としてスイス国民の最大の関心事 調査
おすすめの記事
スイス連邦工科大、留学生の授業料3倍引き上げ決定 25年秋学期から
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)と同ローザンヌ校(EPFL)が、留学生の授業料をスイス人学生の3倍に引き上げ、2025年秋学期から1学期当たり2190フランにすることを決めた。
もっと読む スイス連邦工科大、留学生の授業料3倍引き上げ決定 25年秋学期から
おすすめの記事
世界最古の原子力発電所、2033年に稼働終了
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの電力会社アクスポは5日、世界で最も古いベツナウ原子力発電所の稼働を2033年に終了すると発表した。33年までの運転継続にかかる追加事業費は3億5000万フラン(約600億円)を予定している。
もっと読む 世界最古の原子力発電所、2033年に稼働終了
おすすめの記事
スイスのドライバー、2割が飲酒運転
このコンテンツが公開されたのは、
欧州など39カ国のドライバーを対象にした調査で、スイスでは2割超が飲酒運転をしたことがあると回答した。
もっと読む スイスのドライバー、2割が飲酒運転
おすすめの記事
狩猟中の事故で男性死亡 スイス西部
このコンテンツが公開されたのは、
先月29日午後、スイス西部ヴォー州で64歳の男性が狩猟中に死亡した。イノシシを撃とうとした 猟友会のメンバーに射たれた。
もっと読む 狩猟中の事故で男性死亡 スイス西部
おすすめの記事
自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が釈放 70日拘束
このコンテンツが公開されたのは、
今年9月にスイスで初めて使われた自殺カプセル「サルコ」について、連邦内閣は、当分の間、立法措置は必要ないとの見解を示した。サルコ運営団体は2日、身柄を拘束されていたフロリアン・ヴィレ代表が釈放されたと発表した。
もっと読む 自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が釈放 70日拘束
おすすめの記事
スイス在住長者番付2024 トップはシャネルのオーナー
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの金融誌ビランツがまとめた長者番付2024年版によると、スイス在住の富豪トップに輝いたのは、仏高級ブランド・シャネルのオーナー家族の1人、ジェラール・ヴェルテメール氏だった。上位の顔ぶれはほぼ前年と同じだが、香料メーカーのフィルメニッヒ(Firmenich)創業家が初のトップ10入りを果たした。
もっと読む スイス在住長者番付2024 トップはシャネルのオーナー
おすすめの記事
スイス、ポイ捨て「少ない」8割 アンケート調査
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・ポイ捨て防止コンピテンスセンター(IGSU)の年次アンケート調査によると、「スイスでは多くのゴミが適切に処理されていない」と考える人は16%にとどまった。
もっと読む スイス、ポイ捨て「少ない」8割 アンケート調査
続きを読む
おすすめの記事
電子たばこ、合法大麻の中毒リスク調査を NGOが指摘
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの非政府組織「アディクション・スイス」は、電子たばこや合法大麻の中毒リスクを正しく理解するため国が更なる調査を行い、新たな法的枠組みを作るべきだと呼びかけた。
もっと読む 電子たばこ、合法大麻の中毒リスク調査を NGOが指摘
おすすめの記事
フィンテック、合法大麻に関するスタートアップ急増
このコンテンツが公開されたのは、
昨年、スイスでは記録的な数の会社が設立された。オンライン起業プラットフォームのstartup.chによれば、その多くが急成長する「クリプト(暗号)バレー」地域に集中している。
もっと読む フィンテック、合法大麻に関するスタートアップ急増
おすすめの記事
ベルン大学の大麻研究、連邦政府がストップ
このコンテンツが公開されたのは、
薬局で一定の規制下で違法薬物の大麻を販売した場合の効果を調べるベルン大学の研究について、連邦内務省保健局がストップをかけた。同局は、現行法ではこうした研究を認可できないとしている。
もっと読む ベルン大学の大麻研究、連邦政府がストップ
おすすめの記事
合法大麻がスイスでブーム 1億円ビジネスの裏側は
このコンテンツが公開されたのは、
カフェインレスコーヒーやノンアルコールビールがあるように、近年、スイスの店舗やキヨスクでは、精神作用物質を多く含まない大麻「ヘンプライト」や「カンナビスCBD」が合法的に販売されている。生産者の男性が、100万フラン(約1億1千万円)を生むビジネスの裏側をスイスインフォに明かした。
もっと読む 合法大麻がスイスでブーム 1億円ビジネスの裏側は
おすすめの記事
スイスの売春婦、多くが避妊具を使用せず 最新調査で明らかに
このコンテンツが公開されたのは、
避妊具の使用が身の安全につながることを知りながらも、避妊具なしで性交渉をするスイスの売春婦は多いことが、ローザンヌ大学による最新の調査で明らかになった。
もっと読む スイスの売春婦、多くが避妊具を使用せず 最新調査で明らかに
おすすめの記事
麻薬撲滅は幻想、東南アジアでも麻薬政策の転換進む
このコンテンツが公開されたのは、
「タイとミャンマーは、麻薬使用者の健康問題を重視する新たな麻薬政策に門戸を開き始めた。これまで麻薬に対して厳罰主義を貫いてきた両国にとっては、注目すべき進展だ」。国際NGO薬物政策国際委員会の議長を務めるルート・ドライフス元スイス大統領は、東南アジア訪問を終えて、そう語る。
ドライフス氏は、薬物政策国際委員会の議長を2016年から務める。「1971年にニクソン米大統領(当時)の主導で始まった国際的な『麻薬戦争』は、麻薬の不正取引拡大と薬物使用の増加を招いて完全な失敗に終わった」とする報告をもって、同委員会は11年に世界的指導者や有識者によって設立された。
その発足以来、各国では麻薬対策で様々な動きがあった。今回タイ、ミャンマー訪問を終えたばかりのドライフス氏が、東南アジアの麻薬政策動向を語った。
スイスインフォ: タイ、ミャンマー両政府はどの程度まで踏み込んだ麻薬政策の改革を考えていますか?
ルート・ドライフス: 両国では、薬物使用者の間で注射器の共有によるHIVやC型肝炎の感染が広がっており、政府に保健政策を向上させようという意欲が見られる。感染の予防対策として薬物使用者に清潔な注射針を配布したり、社会復帰を促すための出会いや相談の場が設けられたりしている。重症の中毒患者にはメタドン服用治療も始まっている。両国は特に、効果が見られない上に人の品位をおとしめてきたこれまでの厳罰主義を改めようと考えている。
薬物所持・使用への刑罰が厳しすぎると認識されるようになり、タイ、ミャンマーでは、今では麻薬類の所持・使用の罪で死刑は執行されていない。死刑になる犯罪の種類を減らそうという試みもある。また、超過密で犯罪の学校と化している刑務所の現状にも目が向けられるようになった。収監を減らすためにも、刑罰の軽減が検討されることになった。
それから両国は新たな麻薬政策を進めるため、まずキャンペーンなどを通して国民に広く情報が行き渡るよう努めている。50年近く続いてきた、これまでの傲慢で強硬な麻薬禁止政策に慣れた人々が、政府の新しい方針を理解できているとは限らないからだ。
01~06年の間にタイでは、現在フィリピンのドゥテルテ大統領がしているような「麻薬戦争」が繰り広げられていたことを思い出してほしい。裁判を受けることなく警察に殺害された人が数千人にも上った。だが麻薬取引も消費量も減ることはなく、反対に増加の一途をたどった。政府もそれを認めないわけにはいかなかった。
スイスインフォ: 東南アジア諸国連合(ASEAN)の他の国もタイやミャンマーに追随する可能性がありますか?
ドライフス: そもそも、麻薬のない社会を実現することは可能なのだろうか?麻薬撲滅という目標は、スイスの薬物法に今でも記されている。あらゆる薬物から解放された国を目指すASEAN諸国にとっても、麻薬のない社会は目標だ。だが、それを実現できるといまだに信じることができるのだろうか?
私が訪問してきた国々は、麻薬の存在しない社会の実現など幻想にすぎないと理解し始めている。人間は常に、精神を活性する向精神物質に惹かれてきた。気分を良くしたり苦痛を軽減したり、その人の世界観や認識を変えたりする物質に手を出す人を、いったい何の権利があって処罰できるのか?アルコールやたばこ、チョコレートやコーヒー、あるいは医薬品のように精神的な作用を持ちながらも、文化的に受け入れられているものもあるというのに。
人間には向精神物質が必要ないなどという幻想を、どうして国家の暴力で追求しようとするのか?一体なぜ向精神物質の一部は容認されて、その他は生産や所持が規制され、禁止されるのか?
違法薬物を規制する国際協定は、各国がそれぞれの問題に合った対策を立てたり、薬物使用者を処罰しない自由を認めるほか、違法に禁止薬物を入手する人たちにも手を差し伸べる公衆衛生対策を、批准国に対して認めている。だが一方で、合法の向精神物質と同じように、麻薬や薬物の製造や市場を国が管理することを認めてはいない。
スイスインフォ: タイやミャンマーに見られる麻薬政策の転換は、今後他国にも広まると思いますか?
ドライフス: この動きは国際的なものだ。中国やイランのように極端に抑圧された国でも、薬物中毒患者への代替療法や感染症の予防対策などが発達してきた。
一方で、フィリピンのように後退している国もある。日本やロシアのように強硬に禁止の立場をとる国もある。特にロシアは、情け容赦ない麻薬禁止政策をとり続けており、国民に悲惨な影響が出ている。(薬物使用による)HIV感染が拡大している唯一の国でもある。また刑務所内を始めとして、抗生剤のきかない結核症が広まっている。弾圧的な麻薬政策のせいで、薬物を取り巻く環境が非常にリスクの高い闇の中へと追いやられてしまっているからだ。
そうとは言え、多くの国は新しい麻薬政策を模索している。
スイスインフォ: スイスは麻薬政策において、長い間パイオニア的な存在でしたが、今はどうですか?
ドライフス: スイスは、エイズの拡大と薬物乱用の問題に直面して、革新的な麻薬政策に切り替えた。今では多くの国がスイスと同じような政策をとっている。
スイスは効果的に公衆衛生政策を発展させてきたが、今後もさらにその対策と措置を充実させ、必要とする全ての人が衛生サービスを利用できるようにしなければならない。また、新たなリスクを持つ合成麻薬も対策の対象に入れる必要がある。
一方でスイスは、麻薬市場の規制と、麻薬を非犯罪化する点では遅れをとった。麻薬使用に罰金を科すだけにしても、十分な非犯罪化とは言えない。
それから、世界では弾圧的な麻薬取締りは常に恣意的に行われており、とりわけ貧困層や貧しい地域、マイノリティーがその標的になっているということを忘れてはならない。法が恣意的に適用されているようならば、法律を変える必要もある。
だがスイスは、(薬物使用者の)健康と安全や(薬物使用に対する)罰則の均衡にばかり注意しすぎていて、そのような問題が埋もれている。麻薬政策にもっと劇的な改革を求める政治的圧力もいつの間にか消え、政策の見直しを求めるイニシアチブ(国民発議)も国民投票で否決されてきた。そういうこともあり、政党はこの問題を再び議論に持ち出そうとしなくなっている。
それでも、大麻の栽培や市場は(禁止ではなく)管理・規制されるべきであり、禁止は効果がなく無意味だという判断は、国民にとっても多くの点で十分な利点があると考えている。薬物政策国際委員会(Global Commission on Drug Policy)の五つの優先事項
過酷で有害な処罰を伴う禁止政策よりも人々の健康と安全を優先させる。
モルヒネのように合法・違法の両方で使用される薬物を入手可能にする。このような薬物は部分的に使用が禁止されていることから入手が困難になっており、そのために無駄な苦痛を強いられている人たちを救うのが目的。
薬物所持・使用を非犯罪化する。そうすれば刑務所の過密問題も解消できる。
非暴力的でマイナーな薬物使用者ではなく、麻薬密売と組織犯罪の取り締まりを強化する。
タバコやアルコール、医薬品がそうであるように、麻薬市場を規制し政府の管理下に置く。
もっと読む 麻薬撲滅は幻想、東南アジアでも麻薬政策の転換進む
おすすめの記事
スイスでは4人に1人が喫煙者 では他の国は?
このコンテンツが公開されたのは、
下のグラフは、アルコール、たばこ、大麻の摂取に関する国際比較データで、経済協力開発機構(OECD)によれば、摂取量が最も多い国では摂取量・比率が過去最多に、最も少ない国では過去最小になっているという。 アディクション…
もっと読む スイスでは4人に1人が喫煙者 では他の国は?
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。