緑の党が提案する「脱原発」を問う国民投票の10日前に行われた世論調査によると、賛成は48%で、反対が46%。2029年に脱原発しない可能性も浮上してきた。
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横浜市出身。1999年からスイス在住。ジュネーブの大学院で国際関係論の修士号を取得。2001年から2016年まで、国連欧州本部にある朝日新聞ジュネーブ支局で、国際機関やスイスのニュースを担当。2016年からswissinfo.chの日本語編集部編集長。
スイスに既存する5基の原子力発電所の稼動期間を45年に制限し、2029年に脱原発を求めるイニチアチブ(国民発議)が27日、国民投票にかけられる。
世論調査機関gfs.bernが17日に発表した調査結果によると、賛成が48%、反対が46%で、6%がまだ決めていない。
10月21日に行われた第1回世論調査結果より、反対が10ポイント増えており、2029年での脱原発を非現実的だと見て、イニチアチブが否決される可能性も出てきた。有権者の浮動票の行方が投票結果のカギを握ることになる。
緑の党が提起した脱原発イニシアチブは、原発の新規建設を禁止し、既存する5基の原発の運転期間を45年に限定することにより、最後の原発が廃炉になる2029年の脱原発を目指す。
スイス政府が起案した段階的脱原発を促す方針「エネルギー戦略2050」は、新規原発の建設を禁止するが、既存の原発の稼動に関しては安全性を唯一の基準とし、運転年数の期限を明確にしていない。
現在、スイスの原発依存度は、約40%を占める。今回の国民投票に反対するスイス政府や連邦議会、そして、国民党を中心とした右派は、時期尚早のエネルギー政策の転換は、現実的でないとしている。
第2回世論調査
スイス放送協会(SRG SSR)から委託された世論調査機関gfs.bernが、11月2~9日に、1400人を対象に電話調査を行った。誤差はプラスマイナス2.7ポイント。10月21日の第1回の世論調査結果では、57%が脱原発に賛成していた。
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研究は「モンテリプロジェクト(MTP)」と呼ばれ、スイス北西部ジュラ州サンテュルサンヌのモンテリ岩盤研究所で行われている。地下300メートルにある実験場についてまず目に入るのは暗いトンネルだ。石灰岩でできた壁の隙間からは地下水がしみ出ている。
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