マレーシアのナジブ前首相(中央)
Keystone / Fazry Ismail
マレーシア政府系投資会社1マレーシア・デベロップメント(1MDB)をめぐる汚職・資金洗浄疑惑事件で、チューリヒ市内にあるプライベートバンク・クーツの元行員2人が事件に関連すると疑われる取引について、当局への報告義務を怠ったとして罰金処分を受けた。
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのドイツ語圏の日曜紙ゾンタークス・ツァイトゥング外部リンクとフランス語圏の日曜紙ル・マタン・ディマンシュがそれぞれ報じた。2人の行員は、事件の主犯格とされるマレーシアの投資家ジョー・ロー被告(28)の取引を担当していたという。スイス連邦財務省から9月に罰金処分を受けた。
1人はリスク管理担当者で、過失行為に対し1万3千フラン(約140万円)の罰金処分を受けた。もう1人はアンチマネーロンダリングの責任者で、罰金処分に異議を申し立てたという。2人はすでにクーツを退職。同行は2015年3月に英銀大手RBS外部リンクからプライベートバンクのUBP外部リンクに売却された。
1MDBの汚職事件は、米国、スイス、シンガポールなど6カ国以上の捜査当局が調べている。
米国当局は、1MDBから流出した資金は約45億ドルに上るとみている。1MDBは2009年、マレーシアのナジブ首相(当時)が設立。同首相は現在、この事件をめぐる3回目の公判に出廷している。
スイスとの関連
報道によると、数十億ドル相当の資金がチューリヒ、ルガノ、ジュネーブを経由した。記事では連邦財務省の計50ページの刑罰令を引用し、2009年にジョー・ロー被告がクーツ銀行に口座を開設、1MDBから数百万ドルを送金したと報じた。
米国とマレーシアの捜査機関はいずれもロー被告を主犯格とみて調べているが、自身は容疑を否定。米司法省は先月、1MDBから流出した10億ドルの資金を回収するため、被告と和解したと報じられている。ただ刑事上の責任や今後の起訴の可能性が免除されるわけではないという。
報道では、スイス連邦検察庁はこの事件に関し関係者6人、プライベートバンクのファルコンバンク、BSIの刑事訴追を進めている。スイス連邦金融市場監督局外部リンク(FINMA)はBSI、ファルコン、クーツ、ロスチャイルド、JPモルガンの各銀行でマネーロンダリング規則の重大な違反行為を特定したほか、UBSとクレディ・スイスについても告訴したという。
FINMAは2017年、1MDBに絡み、クーツがマネーロンダリング規制に違反したとして制裁処分を出し、同行に650万フランの「違法に生み出された利益を処分する」よう命じた。
ファルコンバンクは、2016年にFINMAから「違法に生み出された利益」として250万フランを差し押さえられた処分に対し異議を申し立てたが、スイス連邦最高裁判所は今年4月、銀行側の訴えを却下した。 BSIもFINMAから制裁を受け、2016年にはEFGバンキンググループを売却した。
おすすめの記事
トランプ氏銃撃、スイス大統領「容認できない」
このコンテンツが公開されたのは、
ドナルド・トランプ前大統領が13日に銃撃された事件を受け、スイスのヴィオラ・アムヘルト大統領は「政治的な暴力は容認できない」と訴え、一日も早い回復を祈った。
もっと読む トランプ氏銃撃、スイス大統領「容認できない」
おすすめの記事
ツェルマット行き鉄道、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休 大洪水で
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部を中心に発生した大規模な洪水の影響を受け、ツェルマット~ディセンティス間を結ぶマッターホルン・ゴッタルド鉄道(MGB)は、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休するとの見通しを明らかにした。
もっと読む ツェルマット行き鉄道、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休 大洪水で
おすすめの記事
スイスが対ロシア制裁リストを拡大
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは対ロシア制裁リストを拡大した。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続いていることを受け、欧州連合(EU)が決定した変更を採用した。
もっと読む スイスが対ロシア制裁リストを拡大
おすすめの記事
AIによる失業懸念、スイスは最低
このコンテンツが公開されたのは、
人工知能(AI)は日々の仕事に影響を与えている。スイスでは、多くの人たちが仕事を含めAIを使っているが、この新しいテクノロジーのせいで仕事を失うと心配している人は比較的少ないことが最新の調査で分かった。
もっと読む AIによる失業懸念、スイスは最低
おすすめの記事
核兵器禁止条約への加盟求めスイスで署名集め開始
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの市民団体「核兵器禁止を求める同盟」は、国連核兵器禁止条約への加盟を求めるイニシアチブ(国民発議)を立ち上げた。必要な署名が集まれば国民投票が実施される。
もっと読む 核兵器禁止条約への加盟求めスイスで署名集め開始
おすすめの記事
スイス民族衣装祭りに観光客10万人
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・チューリヒで6月28~29日、連邦民族衣装祭りが14年ぶりに開催され、延べ約10万人の観客が訪れた。
もっと読む スイス民族衣装祭りに観光客10万人
おすすめの記事
クレディ・スイスのスイス法人が消失
このコンテンツが公開されたのは、
スイス二大銀行だったUBSとクレディ・スイスの現地法人の合併が1日、完了した。今後スイス国内でも「クレディ・スイス」の看板撤去が進むことになる。
もっと読む クレディ・スイスのスイス法人が消失
おすすめの記事
スイス人の平均寿命、過去最高に 男性は82.2歳
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの平均寿命は2023年時点で女性85.5歳、男性82.2歳と、過去最高記録を更新した。
もっと読む スイス人の平均寿命、過去最高に 男性は82.2歳
おすすめの記事
連邦内閣、マルティン・シュレーゲル氏をスイス中銀新総裁に任命
このコンテンツが公開されたのは、
連邦内閣はスイス国立銀行(SNB、中銀)の新総裁に予想通りマルティン・シュレーゲル副総裁を任命した。ペトラ・チュディン氏が新たな理事会メンバーとなる。
もっと読む 連邦内閣、マルティン・シュレーゲル氏をスイス中銀新総裁に任命
おすすめの記事
職場のワンコ、従業員の満足度を向上 スイス調査
このコンテンツが公開されたのは、
犬は職場の雰囲気を良くし、飼い主だけでなく他の従業員にとっても良い影響を与える――スイスの労働者を対象に実施された調査は、職場に犬がいることの効用を強調する。
もっと読む 職場のワンコ、従業員の満足度を向上 スイス調査
続きを読む
おすすめの記事
スイス最高裁、ファルコンバンクの収益没収処分を支持
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦最高裁判所は12日、ファルコン・プライベートバンクがマレーシアの政府ファンド汚職疑惑をめぐる収益没収処分を不服とした申し立てを棄却した。
もっと読む スイス最高裁、ファルコンバンクの収益没収処分を支持
おすすめの記事
スイスの大銀行、犯罪対策が不十分?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの銀行大手クレディ・スイス(CS)が、国際的な不正取引に関わったとして金融当局の勧告処分を受けた。ただ営業停止や罰金などの処分がなかったことに首をかしげる専門家もいる。
もっと読む スイスの大銀行、犯罪対策が不十分?
おすすめの記事
スイス、最も汚職の少ない国第3位に
このコンテンツが公開されたのは、
NGOトランスペアランシー・インターナショナルは29日、公的部門の汚職を調べた2018年の「汚職認識指数」を発表した。スイスは2年連続で汚職の少ない国第3位に選ばれた。
もっと読む スイス、最も汚職の少ない国第3位に
おすすめの記事
スイス、独裁者の隠し資産になぜ決着がつかないのか?
このコンテンツが公開されたのは、
独裁者の隠し資産の凍結や返還問題に関し、「模範」といわれるスイスの新法が解決を促進させるといわれる。しかし、これで今後スイスの金融界に不正資金が流れ込んでこないという保証にはならない。最近明らかになったいくつかの事件は、マネーロンダリング(資金洗浄)対策の欠陥を提示する。
もっと読む スイス、独裁者の隠し資産になぜ決着がつかないのか?
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。