シリアとトルコの国境にあるバブアルハワ検問所の開放期間が6カ月間延長され、緊急支援物資の輸送が保証された。国連安全保障理事会で今年初めて非常任理事国となったスイスは、この妥協案の採択に一役買った。
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シリアの反体制派支配地域に支援物資を届けるための国境検問所は、最初4カ所あったのが3カ所に減らされ、しばらく前から1カ所だけになって「最後のライフライン」と呼ばれている。ロシアは数年来、国連によるシリアへの人道支援に関して親ロシアのアサド政権を通さない越境支援に反対してきた。
だが国連や人道支援団体にしてみればアサド政権の非支配地域に直接支援できなければ意味がない。アサド大統領が反体制派支配地域の困窮者に物資等を届けるとは考えにくいからだ。
賛成したロシアの思惑は不明
こうした理由により、シリア国境の開放維持は安保理において長年大きな争点となってきた。ロシアは多くの決議案に拒否権を行使し、そうでなければ棄権を選択してきた。ところが驚いたことに今回はロシアが賛成に回り、妥協案は今月9日、全会一致で採択された。
決議案はシリアとトルコの国境にあるバブアルハワ検問所の開放期間を7月10日まで6カ月間延長し、緊急支援物資の輸送を保証している。西側諸国など多くの国々や支援機関は複数の国境検問所の長期的な開放を望んでいただろうが、そんなことをロシアが是認するはずもない。ではなぜ今回は賛成したのか、その理由ははっきりしない。
主導的役割を果たしたスイス
スイスとブラジルは決議案の提出者として、今回の解決策に大きく貢献した(編注:決議の原案はアイルランドとノルウェーによって起草され、昨年7月に採択された)。これにより、今後スイスが安保理においてどのような役割を果たしたいと考え、かつ果たす能力があるのかを示したといえる。ウクライナの平和やイランの核開発阻止のような耳目を集める大きな事案は手に余る。むしろ派手な問題の陰に隠れた数多くの軋轢に決着をつける仲介者、つまり政治的・外交的に細部まで踏み込んで微調整する調停役を目指している。そしてそれが、民間人の保護や人権にかかわる人道的な関心事であればなおさらだ。
踏み出した小さな一歩
大きな問題を打開するのではなく、小さな一歩を踏み出すことに華々しさはないかもしれない。けれども国境検問所の開放を維持するという決定も当事者である避難民にとっては一大事だ。生き延びられるかどうかの瀬戸際なのだから。
数十万人の困窮者を含むシリア北西部の4百万人を超える人々に、少なくともあと6カ月間は食糧、緊急避難所、医薬品が届けられる。
フレディ・グシュタイガー(Fredy Gsteiger)はドイツ語圏のスイス公共放送ラジオ(SRF)副編集長、外交特派員。地域紙ザンクト・ガラーの外報部、週刊誌ツァイトの中東担当、パリ特派員、週刊紙ヴェルトヴォッヘ編集長を経て現職。
独語からの翻訳:井口富美子
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