グローバル化が企業にもたらす三つの課題
世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)外部リンクがスイス・ダボスで22日から4日間開催される。今年の総会は「グローバリゼーション4.0」をテーマとし、ネットワーク化された世界における問題点を取り上げる。グローバル化が目覚ましいスイス企業にとって、国際舞台での立場は今後どのように変わっていくのだろうか?スイスインフォは総会の取材を通し、グローバル化が企業にもたらす三つの課題を検証する。
同フォーラム創設者のクラウス・シュワブ氏は「人々、ビジネス、政府間での国際交流はこれまで以上に包括的で持続可能でなければならない」と語る。そして「私たちは敗者や、取り残された人たちの手助けをする必要がある」と付け加える。
シュワブ氏によれば積雪の多いダボスでの会合は、世界のリーダーが危機管理という日々の仕事をいったん脇に置き、優先順位を定め、今後の可能性を生かし、脅威を緩和する機会になる。今の時代、人工知能などの革新的技術によって経済やビジネス、社会、政府の在り方が根本的に変わりつつあり、新しい勝者と敗者が生まれている。そんな時代に世界はどうやって持続可能な発展を目指そうというのだろうか?
国や企業にとって革新的技術がもたらすリスクは大いにある。ダボス会議に出席する3200人の参加者の半数がビジネス界出身だ。その中には率先して国際的に解決策を模索する企業もあれば、問題の渦中にいる企業もある。
WEFに参加する人は?
今月22日から4日間開催される総会には、スイスのウエリ・マウラー連邦大統領を含む約65カ国・地域の首脳級が参加。安倍晋三首相のほかブラジルのジャイール・ボルソナロ新大統領や中国の王岐山(ワンチーシャン)国家副主席も出席する予定。一方、トランプ米大統領やマクロン仏大領領は国内問題に対処するため欠席する。
今年の年次総会のテーマは、「グローバリゼーション4.0:第4次産業革命時代におけるニュー・アーキテクチャー」だ。スイスには外国企業およびスイスに本拠を置く多国籍企業が2万5千社あることを踏まえ、スイスインフォではグローバリゼーション4.0が大企業にとってどのような意味があるのか、次の三つの課題に的を絞って検証する。
1)食糧と技術:環境を破壊することなく、急増する人口を養うにはどうすればよいだろうか?世界の総人口は2050年までに100億人近くになるとされる。WEFによると、これだけの人口を養うには食糧生産量を7割上げる必要がある。はたしてシンジェンタなどのスイスの農業関連企業は、森林破壊を加速したり私たちの健康を脅かしたりすることなく食糧生産を最大化できるだろうか?
おすすめの記事
シンジェンタのエリック・フライワルドCEOとのインタビュー
「これでは(女性が)十分に代表されているとは全く言えない」とザヒディ氏。「根本的な問題は、リーダーの地位へとつながるパイプラインが途切れていることだ」と付け加える。
WEFが発表したジェンダー・ギャップ指数ランキングでは、スイスは格差が最も少ない国のトップ10にも入っていない。そんなスイスに、世界中からやってくる女性リーダーたちはどのような教えを示唆してくれるだろうか?
3)医療のデジタル化:歩数や睡眠時間などの身体活動量を計測するウェアラブル端末から遺伝子解析まで様々な技術が登場しているが、そうした技術が医薬産業のビジネスモデルをどのように変えていくのかについて検証する予定だ。ロシュやノバルティスなどスイスの製薬大手はビッグデータを収集し、解析を進めている。患者の治療法をその人特有の「バイオマーカー」に合わせて個別化したり、臨床試験の効率化を図ったりするためだ。これにより患者中心の医療が実現できると製薬大手の幹部は主張するが、データの機密性はどうなるのだろうか?そしてビッグデータで発見されたことが、それを最も必要とする人たちに恩恵をもたらす保証はあるのだろうか?
最もグローバル化された国の一つであり、ダボス会議の開催地であるスイスにとっても、グローバリゼーションは重要なテーマだ。
WEFで会議プログラムの責任統括者セバスティアン・バカップ氏は最近、スイスにおける「グローバリゼーション4.0」についての考えを語ってくれた。
※ダボス会議2019について知りたいことはありますか?密着取材するスイスインフォ記者へのご質問を、コメント欄にお寄せください。
(英語からの翻訳・鹿島田芙美)
JTI基準に準拠
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。