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 「ブルカイニシアチブは火に油を注ぐだけ」

環境問題に取り組む政治家、グレタ・ギジン氏
環境問題に取り組む政治家、グレタ・ギジン氏。出身地のティチーノ州で2016年に施行されたブルカ着用禁止令は、何一つ問題を解決していないと言う Keystone / Alessandro Della Valle

「スイスでブルカとニカブの着用を禁止するのは反生産的」。こう批判するのは緑の党の国民議会(下院)議員、グレタ・ギジン氏だ。来月7日に投票が予定されているイニシアチブ(国民発議)「ベール着用禁止に賛成」は、フェミニズムでも何でもないと切り捨てる。

過去にミナレットの建設禁止案でスイスの有権者から支持を得ることに成功したエガーキンゲン委員会。この度、顔を覆うベールの着用禁止に向けて乗り出した。数多くの保守系右派議員で構成されるこの団体は、2016年にイニシアチブ「ベール着用禁止に賛成」を発起。来月7日、国民投票で有権者に是非が問われる。

スイス政府と連邦議会はともにイニシアチブの否決を推奨している。間接的対案が作成され、イニシアチブが否決された場合は、特定の状況下で関係官庁に顔を見せることを義務付けた同対案が発効する。

このイニシアチブを先頭切って支援しているのが、保守系右派の国民党(SVP/UDC)だ。中道系左派の複数議員も同様の支援委員会を設立しているが、主要政党はすべて反対に回っている。緑の党の下院議員、グレタ・ギジン氏の出身地であるティチーノ州ではすでに2016年、公共の場所で顔を覆うベールの着用が禁止された。だが、ギジン氏はこの禁止令は何の役にも立っていないと言う。

swissinfo.ch:ティチーノ州でブルカの着用禁止令が発効してから4年が経ちますが、この法律が約束したような状況は訪れたと思いますか?

グレタ・ギジン:いいえ、この法律の発効で変わったことは何一つありません。ティチーノにはそれ以前もブルカに関する問題はありませんでしたし、今もありません。統計を見ると、警察が介入したケースは非常に少なく、その少ないケースでさえも、湾岸諸国からベールをつけてティチーノにショッピングに来ていた観光客によるものばかりです。

これらの観光客はいろいろな方法でこの問題を解決しました。例えば、まだ新型コロナウイルスのパンデミックが始まる前のことですが、拘束されたある女性はベールを外し、代わりにマスクを着用しました。この状況がいかに馬鹿げているかがよく分かる出来事です。

「過激化を防ぎたいのなら、外国人の社会統合にもっと投資するべきです」

グレタ・ギジン、緑の党下院議員

swissinfo.ch:おそらくわずかだと思われますが、スイスには今でもベールの着用を強制されている女性がいます。このイニシアチブはそんな問題を解決するのではありませんか?

ギジン:ブルカであれ、別の何かであれ、誰かに特定の服を着るように強制することはすでに法律で禁止されており、介入できるようになっています。また、そのような強制を受けている女性は、犠牲者救済組織に助けを求めることもできます。

ブルカ着用を禁止すれば、もっと大変な事態になるでしょう。彼女たちは助けを求めるために外に出ることもままならなくなるのですから。この法律の目的がブルカ着用を強制されている女性の救済だとしたら、それは間違っています。結果は逆に出るでしょう。

女性3人
サウジアラビアから観光に来ているアスマさん。ベルン州インターラーケンで2人の友人と一緒にショッピング © Keystone / Peter Klaunzer

swissinfo.ch:全身を覆う衣服やベールの着用は男女同権を求める闘いの退歩だと言うフェミニストの女性がいます。女性であるあなたはこの意見に少し敏感に反応し過ぎだとは思いませんか?

ギジン:個人的にはブルカもニカブも、またカトリック修道女のベールも好きではありません。しかし、これは私の問題ではないのです。私のことは私が決め、彼女たちのことは彼女たちが決める。フェミニズムで大切なことは、何を身につけるかを自分で決める自由を、どの女性にも与えることです。禁令を出し権柄尽くに着る物を決めるのはフェミニズムではありません。

swissinfo.ch:フランス、ベルギー、ブルガリア、オランダといったリベラルな国々は、すでに全身を覆う衣服やベールの着用を禁止しています。これらの国は間違った方向に進んでいるのでしょうか?

ギジン:そうです。私はこれが解決策だとは思いません。スイスの憲法は信仰の自由を保障しています。宗教的な象徴を禁じるのはまったくリベラルではありません。

swissinfo.ch:このようなイニシアチブは、スイス社会におけるイスラム教の位置づけについて議論する必要があることを示しているのではありませんか?

ギジン:議論は行うべきだと思っています。しかし、このような人種差別的で不適切なイニシアチブで議論すべきではありません。

求めるべきは真の解決策です。過激化を防ぎたいのなら、外国人の社会統合にもっと投資すべきです。特に、過激化しやすい第2世代に。保守系右派がいつも行っているように、このテーマを政治問題化してはいけません。イニシアチブの発起者が提案している解決策は一見単純に見えますが、実は解決するより引き起こす問題の方が多いのです。社会全体に不信感が生まれるからです。このような類いのイニシアチブは火に油を注ぐだけです。

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swissinfo.ch:政府の間接的対案には、身分を証明する際に関係官庁に顔を見せるという項目があります。それと同時に、同権や社会統合のための対策も盛り込まれています。このような妥協案であれば受け入れられますか?

ギジン:この対案はイニシアチブよりは良いが、根本的な問題は残ったままです。本来、問題でも何でもないことについて、必要に迫られて作成したという印象を受けるし、この法案にある要点の多くはもうすでに存在しています。

swissinfo.ch:今のセミロックダウン中に対立キャンペーンを行うのは難しくありませんか?

ギジン:メディアやソーシャルメディアで呼びかけることは今でもできます。これまでと違うキャンペーンになりますが、それは相手側にとっても同じことです。

(独語からの翻訳・小山千早)


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