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スイス・インドネシアFTA「自由貿易は地球環境に有害」

炎と戦うオランウータン
スイス・インドネシア自由貿易協定(FTA)に反対するレファレンダム委員会のポスターには、「ストップ・パーム油」のスローガンとともに、炎と戦うオランウータンが描かれている。大型類人猿のオランウータンは森林伐採により絶滅の危機に瀕している stop-huile-de-palme.ch

スイスでは来月7日、スイス・インドネシア間の自由貿易協定(FTA)の是非が有権者に問われる。レファレンダム(国民投票)の発起人で有機ワイン生産者のウィリー・クレテニー氏は、議論の焦点となっているパーム油だけではなく、自由貿易のメカニズム自体を問題にしなければならないと主張する。自由貿易は、自然資源の管理を犠牲にして利潤ばかりを追求しているからだ。

スイスはインドネシアとの間で締結した自由貿易協定(FTA)を実施すべきか?来月7日の国民投票で、スイスの有権者はこの問題に答えを出す。

この協定は、大部分の関税を引き下げ、特定の技術的障害を撤廃し、スイスの輸出を容易にする。スイスに輸入されるインドネシアの工業製品についても関税が撤廃される。また、インドネシアが世界第1位の輸出国であるパーム油など、一部の農産品の関税も引き下げられる予定だ。

協定には、持続可能な開発に関する明確な条項が盛り込まれており、締約国は環境を保全し、人権や労働者の権利を尊重する義務を負う。パーム油が関税引き下げの対象となるのは、持続可能な方法で生産された場合に限られることが明記されている。

ジュネーブ州で有機ワインを生産するウィリー・クレテニー氏は、スイス・インドネシアFTAに反対する国民投票(レファレンダム)の発起人だ。特に、緑の党や社会党青年部がこのレファレンダムを支持する。問題にすべきは貿易のあり方自体だと同氏は主張する。

swissinfo.ch:自由貿易原理の何が問題だと思いますか?

ウィリー・クレテニー氏:自由貿易の目的は、あらゆる関税と非関税障壁を削減したり、撤廃したりすることです。しかし、貿易を公正なものにし、競争のゆがみを避けるためには、関税と非関税障壁が非常に重要になります。関税はある国の経済における価格と別の国の経済における価格のバランスを取り、私たちの消費に強い影響を与えています。自由貿易の下では、スイス人の購買力とは何の関連もない価格で大量のモノが手に入ります。そのため、常により多くを消費していくことになります。競争のゆがみは、スイスであれ、他国であれ、地域経済の大部分を消滅させてしまいます。

私がよく例に挙げるのはイケアです。同社はアジアで安価に製造した家具の大部分を欧州やスイスに実質的に関税無しで輸入し、非常に安く販売するため、私の地方では家具メーカーの大半が潰れてしまいました。イケアの従業員には労働協約に基づいた給与が支払われます。しかし、それらは住居や健康保険に対する国の補助を必要とする給与です。会社を所有する一族は、今やスイスで有数の富裕層です。関税を撤廃することで、自由貿易は非課税の道具となりました。

男性のポートレート
ジュネーブ州で有機ワインを生産するウィリー・クレテニー氏 Keystone / Salvatore Di Nolfi

swissinfo.ch:自由貿易の代わりに何を提案しますか?

クレテニー:すべての地域経済が機能するように、輸出国と輸入国とがウィンウィンの関係になる貿易協定を推進します。関税と非関税障壁の重要性を認識して欲しいと思っています。

それは保護主義と呼ばれますが、一人ひとりの選択を尊重するのですから、私に言わせれば「開放政策」です。その一方で、世界貿易機関(WTO)や自由貿易協定は、貿易の拡大と利潤だけを根拠にしています。今日、私たちは地球にとって極めて有害なシステムを平準化し、画一化し、発展させています。

スイスは良いお手本になるべきです。もちろん、スイスはすでに多くの協定に参加しているので、一朝一夕に慣行を変えることはできません。しかし、社会問題や環境問題を考慮し、地域の規範を尊重することを目的とする協定にするためには、交渉官らに別の権限を与える必要があります。

swissinfo.ch:持続可能性について、スイス・インドネシアFTAに盛り込まれた分だけでは不十分だと考えるのはなぜですか?

クレテニー:係争になった場合、持続可能な開発に関する協定の第8章は仲裁に委ねないことで両国は合意しています。つまり、これらの要件は重要ではないとみなされています。いずれにしても、協定のその他の条項ほど重視していない。だから、持続可能性の要件にはほとんど保証がありません。

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swissinfo.ch:主張の中で、持続可能なパーム油など存在しないと明言していますが、それはなぜですか?

クレテニー:インドネシアでは近年、パーム油の輸出を促進するために大量の森林伐採が行われてきました。認証された有機パーム油であっても、熱帯雨林の一部を消滅させていることが多くあります。

また、パーム油をスイスに輸入するということは、商品を地球の反対側から運んでくるということです。それは持続可能ではありません。スイスは、需要の一部を国産の菜種油やヒマワリ油などの植物油で、残りをオリーブオイルなどの欧州から輸入する油でまかなっているだけになおさらです。

swissinfo.ch:協定の持続可能性に関する条項は、インドネシアの環境により配慮した開発への第1歩ではないのでしょうか?

クレテニー:スイスや欧州諸国に輸出するためにインドネシアでパーム油を作るのではなく、インドネシアで持続可能な農業をすることは理にかなっています。持続可能性については、グローバルなビジョンを持つ必要があります。

食料品の製造に必要とされる油のほとんどは、パーム油に取って代わられました。パーム油は生産コストがほとんど掛からないため、金銭的な利益が唯一の原動力です。それこそが自由貿易の主要な問題です。もはや資源管理の論理では全くなく、市場と利潤の論理でしかありません。

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swissinfo.ch:協定によって、スイス企業はより有利な条件で製品を輸出することが可能になります。スイス経済を支援しようとは思いませんか?

クレテニー:破壊する経済は支持しません。自由貿易はすべての国を競争させます。つまり、優位性を競い合うことになります。関税や非関税障壁を伴う貿易であれば、モノやサービスは価格だけではなく、質によって選ばれるでしょう。

スイスの輸出産業や国内生産が今日、世界的な価格の下落圧力にさらされ、対応に苦労しているのは十分理解しています。耐えられるものではありません。対応するためにすべてを犠牲にせざるを得なくなります。

経済を擁護はしますが、企業や雇用の持続性を保証する、ゆとりのある経済を擁護したいと思っています。今日、地域経済は弱体化し、巨大グループが増えています。コントロールができていません。

swissinfo.ch:パブリック・アイやグリーンピースなど、多くの環境保護団体の支持を得ていない事実をどう説明しますか?

クレテニー:私たちの知る限りでは、これらの環境保護団体は純粋に政治的な理由からこの取り組みを支持していません。例えば、世界自然保護基金(WWF)は認証機関のパートナーです。現地にも支部があり、レファレンダムの影響を懸念しています。

残念なことに、これらの団体は、たとえほとんど保証が無いとしても、協定に持続可能な開発が記載されたことで満足しています。自由貿易の原理や破壊的な政策こそ問題にすべきだということを理解していないのです。

(仏語からの翻訳・江藤真理)

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