6月18日の国民投票、3件とも可決の見込み 世論調査
6月18日のスイス国民投票では、環境保護法、法人税ルールの見直し、COVID-19法の3件とも可決される可能性が高いことが、世論調査で示された。
2050年までの気候中立達成を義務付ける環境保護法に対しては、63%が支持すると答えた。ただし5月の第1回世論調査に比べ賛成割合は9ポイント低下した。
6月18日の国民投票に向けた調査全2回中2回目。スイス公共放送協会(SRG SSR)の委託を受け、世論調査会社gfs.bernが実施した。調査期間は5月23~31日。国内の全言語圏の有権者1万2655人から回答を得た。標準誤差は±2.8%。
世論調査を実施したgfs.bernの政治学者マルティナ・ムーソン氏は、「左派を除くすべての属性と、自由緑の党(GLP/PVL)支持層の間で支持が後退している」と語る。
右派・国民党(SVP/UDC)の反対運動が激しくなっていることが背景にある。政府に不信感を抱いている人や低学歴層も法案に反対している。世論調査では回答者全体の36%が反対票を投じると答え、態度未定はわずか1%だった。
世界80万人の在外スイス人有権者の間では約60%が法案を支持している。
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低所得者層は不支持
反対陣営は法案が「電気料金の高騰を招き家計に打撃を与える」と主張する。これに同調する人は増えてはいるが、過半数を占めるほどではない。ムーソン氏は「とはいえ、低所得層は主にこの主張に同意している」と分析する。家計負担への懸念が強く否決された2021年のCO₂法案とは異なり、今回の気候保護法が二の舞になることはないとみている。
総じて「賛成」派が勢いを保ち、法案への社会的な合意を形成しつつある。gfs.bernは「すべての兆候は6月18日にこの法律が可決されることを示唆する」と結論付けている。
「特に興味深いのは、2021年のCO₂法に反対票を投じた地方部の有権者が今回は気候保護法を支持していることだ」(ムーソン氏)
多国籍企業への増税
多国籍企業に対する法人税率引き上げ案も波風を立てずに可決されそうだ。有権者の73%が、スイスに本拠を置く売上高7億5000万ユーロ(約1100億円)の企業に最低税率15%を課す制度改正に賛成する。
反対する有権者は24%、態度未定はわずか3%。この比率は在外スイス人でもほぼ同じだ。
改革案にはあらゆる層が支持している。77%は中小企業ではなく大手多国籍企業に照準を当てている点で公正な改革だとみなす。
国民党は正式に改革支持を表明しているが、同党の支持層は最も懐疑的で、37%が「反対」と答えた。一方、回答者全体の31%は、「経済的に困難な時期に増税するのは得策ではない」という主張に同意した。
左派・社会民主党(SP/PS)は、多国籍企業が多く本拠地を置く裕福な州にしか恩恵をもたらさないとして改革に反対している。同党支持層でも反対派が前回調査よりは増えたものの、33%にとどまる。
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COVID-19法、3度目の可決へ
スイスの新型コロナ対策を盛り込んだCOVID-19法にも逆風は吹かず、3度目の可決を迎えそうだ。前回調査から大きな変化はなく、67%が賛成、31%が反対、2%が未定となった。
国民党支持層と反政府論者を除き、すべての政党支持層と属性が同案に賛成する意向だ。gfs.bern によれば、学歴が高く都会に住んでいる人ほど賛成が強い。
コロナが再流行した場合に新薬を迅速に利用可能にし、弱い立場にある人々を保護できるようにするために、COVID-19法が当局にとって重要であると考える人が回答者の70%に上った。
有権者はこれまで2回、国民投票でCOVID-19法を可決してきた。賛成票は2021年6月に60.2%、2021年11月は62%を占めた。ムーソン氏は今回も「賛成が今回も60%を超える」とみている。
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英語からの翻訳:ムートゥ朋子
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