スイスの人は平均的に収入が高いが支出も多い。それでも生活費を差し引いて文化や余暇活動、貯蓄に充てられる額は欧州の中でも多い方だ。
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの人は平均的に収入が高いが支出も多い。それでも生活費を差し引いて文化や余暇活動、貯蓄に充てられる額は欧州の中でも多い方だ。
スイスの家計は年々稼ぎが良くなっている。スイス連邦統計局が23日発表した最新の家計調査外部リンクによると、2018年の平均世帯収入は月1万114フラン(約116万円)。前年を200フラン近く上回り、遡れる2006年と比べると1500フランも増えた。
平均的な世帯(2.16人)では、総収入の4分の3は勤労所得で、約5分の1は年金や保険金が占める。一方、所有資産からの収入は家計のなかで微々たるものだ。
3分の1は強制支出
ではスイスの家計は何にお金を使っているのか?総収入の約3分の1は税金や強制加入の社会・医療保険料に消える。これら強制支出の額は06年比で27%増と大幅に増えた。
強制支出を差し引いた可処分所得は平均で月7069フラン(約81万3千万円)。だがスイスの全世帯がこれだけの額を自由に使えるわけではなく、約6割の世帯は平均より低い収入で暮らしている。
可処分所得からの支出で最も多くを占めるのが住居費で、平均約1500フラン。家具・家事用品を加えると、住まいだけで1700フラン(約20万5千円)かかる。
交通費もなかなかの出費だ。自動車やバイク、電車、飛行機、自転車などの移動手段への支出は750フラン(約8万6千円)を越える。中でも圧倒的に割合が高いのが自動車支出だ。交通費は居住費に次いで多い。
減り続ける食費
第3の出費は食費で、ひと月730フラン(約8万4千円)。食費に関しては国際的に、収入が高いほど食費の占める割合は小さくなることが知られている。これはスイスにも良く当てはまり、06年時点では総収入の8.6%が食費だったが、18年は7.3%に減った。
欧州連合(EU)の中ではルーマニアの食費割合が最も高い(2017年時点)。同国はEU加盟国の中で1人当たり収入が購買力比で2番目に小さい。消費支出の3分の1が食料・飲料・タバコに向かう。17年時点で最も食費割合が小さかったのは英国の約14%で、スイスと似たような水準だ。
収入水準の高い国では、高級品への支出割合が高くなる。例えば英国では15%が文化・余暇活動に充てられる。この分野に10%を充てるスイスよりも、明らかに余暇に重きを置いている。
ただこの原則がEUのあらゆる国に当てはまるわけではない。ケルンにあるドイツ経済研究所のガリナ・コレフ経済学教授は、地域的な選好があると話す。意外なことに、外食・宿泊に費やす支出割合で比べると、ギリシャはドイツの約3倍だという。
貯蓄は1589フラン
スイスの話に戻ろう。総収入の1万114フランから一般的な消費(5296フラン)や仕送りなどの移転支出(2872フラン)、寄付や各種保険料・手数料などその他の支出を差し引くと、貯蓄に回すお金は1589フラン(約18万3千円)と、総収入の約16%となる。
これは国際的にみると、常にスウェーデンやルクセンブルク、ドイツなどと上位を争う高い割合だ。ただし、貯蓄に関する世界のダントツ1位は中国で、約40%が貯えに回る。
(独語からの翻訳・ムートゥ朋子)
(独語からの翻訳・ムートゥ朋子)
続きを読む
おすすめの記事
スイスの家計簿シリーズ
このコンテンツが公開されたのは、
「ごく普通」のスイス人は何にどのくらいお金を使っているのか?スイス人のつけた家計簿を覗いてみよう。
もっと読む スイスの家計簿シリーズ
おすすめの記事
スイスは30歳独身で月収69万円 本当に夢のような暮らし?
このコンテンツが公開されたのは、
スイス人は欧州諸国に比べてずっと高給取りだ。それも30歳で月6千フラン(約69万円)。外国人から見れば夢のような数字だが、生活費や税金を考慮すると、実はそうでもない。
もっと読む スイスは30歳独身で月収69万円 本当に夢のような暮らし?
おすすめの記事
スイス、医療費が上昇
このコンテンツが公開されたのは、
世界でも突出して高いスイスの医療費が、上昇を続けている。特に家計と州の負担が増えている。
もっと読む スイス、医療費が上昇
おすすめの記事
スイスの家計、新型コロナで20万円節約
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルス危機の間、スイスの1世帯当たりの消費額は通常時より平均2000フラン(約22万円)少なかったことが、銀行大手クレディ・スイスの調査で分かった。収入も全般的に減ったが、ロックダウン(都市封鎖)による商店・飲食店の休業で消費の機会が減った。
もっと読む スイスの家計、新型コロナで20万円節約
おすすめの記事
物価の高いスイス 子育てにはいくらかかる?
このコンテンツが公開されたのは、
生活費の高いスイスでは子供は「ぜいたく品」と言えるかもしれない。養育費は子供1人当たり平均月1200~1800フラン(約13万~20万円)。ここに恐らく世界最高の保育費がかかる。それだけではない。
もっと読む 物価の高いスイス 子育てにはいくらかかる?
おすすめの記事
スイスで1カ月貧乏生活に挑戦
このコンテンツが公開されたのは、
世界屈指の豊かな国スイスで、スイスインフォの記者が1カ月間の疑似貧乏生活に挑戦した。
もっと読む スイスで1カ月貧乏生活に挑戦
おすすめの記事
デート代、世界一高い都市はチューリヒ 東京は5位
このコンテンツが公開されたのは、
レストランでの食事代、映画のチケット代、帰りのタクシー代が最も高い都市は―?ドイツ銀行がまとめた価格と生活水準に関する国際ランキングの2019年版で、スイスは複数の項目で首位を占めた。
もっと読む デート代、世界一高い都市はチューリヒ 東京は5位
おすすめの記事
拝見!スイス人の家計簿
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの世帯収入は月1万33フラン(約114万円)。うち2909フランが税金や社会保険料などに消え、残る7124フランでやりくりすることになる。さてその支出先は?
もっと読む 拝見!スイス人の家計簿
おすすめの記事
高物価の国でスイス人は何にお金を使っているのか?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの生活費は高い。スイスインフォがウーリ州アルトドルフで「何にお金を使っているか」を街頭インタビューしたところ、最も人々の懐を痛めているのは――。
もっと読む 高物価の国でスイス人は何にお金を使っているのか?
おすすめの記事
金銭問題タブーのスイス 借金地獄に苦しむ若者
このコンテンツが公開されたのは、
裕福なスイスにも借金を抱える人はいる。しかし金銭問題はタブー視され、債務者は相談をためらいがちだ。19歳から始まった借金地獄をようやく抜け出した男性(26)に話を聞いた。
もっと読む 金銭問題タブーのスイス 借金地獄に苦しむ若者
おすすめの記事
高すぎる保育料、生活保護から抜け出せないシングルマザー
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは生活保護受給者の中でシングルマザーの割合が目立つ。パートタイムで働き、養育費と児童手当を受給しながらも、生活保護に頼らざるを得ない1人の母親に話を聞いた。
もっと読む 高すぎる保育料、生活保護から抜け出せないシングルマザー
おすすめの記事
スイス人口2割「急な出費に備えなし」 国の調査結果で
このコンテンツが公開されたのは、
連邦統計局は16日、スイス国民の賃金と生活状況に関する調査結果を発表し、2016年は人口の21.5%が2500フラン(約28万円)の請求書を1カ月以内に支払えない経済状態だったことがわかった。
もっと読む スイス人口2割「急な出費に備えなし」 国の調査結果で
おすすめの記事
高額医療費 スイスでは5人に1人が診察を断念
このコンテンツが公開されたのは、
昨年スイスでは、医療費が高いことを理由に2割以上の人が医者にかかるのを断念したという。経済協力開発機構(OECD)が、加盟国の医療制度パフォーマンスに関するデータを比較した報告書「図表で見る医療2017」で発表した。
もっと読む 高額医療費 スイスでは5人に1人が診察を断念
おすすめの記事
豊か過ぎるスイス 医薬品が高いのは誰のせい?
このコンテンツが公開されたのは、
プレーヤーたちがどんどんコストを吊り上げ、最後に残った者が負ける。スイスの医療制度が「ババ抜き」の様相を呈してきた。たとえば高額なバイオ医薬品の使用。これを割安なバイオシミラー(バイオ後続品)に置き換えれば何百万フランという節約効果があるのに国の対応は生ぬるい。そこには、病んだシステムを象徴するかのような「意欲の妨げ」が存在する。
もっと読む 豊か過ぎるスイス 医薬品が高いのは誰のせい?
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。