スイス国立銀行(中央銀行、SNB)のアンドレア・メクラー理事は14日、中銀資産の運用方針は十分に気候変動に配慮していると述べた。SNBは環境への取り組みを商業銀行に強制する権限を持っていないとも主張した。
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国際通貨基金(IMF)のクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事が先月外部リンク、ワシントンで開かれた年次総会で気候変動に歯止めをかけるためにもっと力を尽くすよう各国中央銀行に呼び掛けた。
これに対し、メクラー理事は14日ジュネーブで行われた講演で、SNBの任務は物価の安定であり、民間商業銀行が環境に与える影響を監視することではないと反論した。それはスイスの金融規制当局の役割であり、より広範に経済活動のルールを設定するのは政府だと語った。
物価の安定性を確保するという使命を効率的に果たすために、「SNBはバランスシートを常に迅速かつ制限なく引き出せる状態でなければならない」とメクラー氏は述べた。厳しい投資ルールを適用すれば、市場に対するSNBの中立性を侵害するおそれが生じる。
SNBは外国為替市場に介入するほか、バランスシートの多くを国内外の民間企業の株式に投資している。現在は40カ国6700社の株式に投資され、評価額は約1500億フラン(16億5千万円)に上る。
株式と債券
SNBのトーマス・モーザー理事は同じ日の講演で、環境と人権に危害を与えることが明白な企業や特定の種類の武器を扱う企業の株式・債券への投資は既に禁止されていると述べた。これよりもさらに踏み込んだ措置を取る、例えば化石燃料関連企業への投資を禁止すれば「特定の企業・業界が有利または不利になる可能性がある」と語った。
SNBは、環境・気候リスクに関するベストプラクティス(最良慣行)を各国中銀や監督当局の間で共有する「気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク外部リンク」に加盟し、環境認証を強化している。
一方、オーストラリアやカナダの鉱山債券を売却したスウェーデン中央銀行のように、さらなる取り組みに踏み込むことは避けている。
SNBは気候変動が金融の不安定をもたらす可能性を認める一方、「スイスの経済・金融の安定性に影響を与える可能性のある金融リスクが全体にもたらす脅威は、今のところ穏やかである」と判断している。
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