スイスの直接投資、欧州で存在感
スイスの近隣諸国や欧州での対外直接投資はこの数年で増え続けている。最新のデータを見てみよう。
今月初めに公表されたフランスの2019年対外・対内投資報告書によると、スイスからフランスへの直接投資は過去最高の額に膨らんだ。
昨年スイス企業が発表したフランス内での新規投資計画は76件。フランスにとってスイスは5番目の投資プロジェクト供給国で、2200件以上の雇用を生んだ。
新型コロナ危機で経済の風向きは変わりつつあるが、同報告書によると、2019年に予定されていたフランスの投資計画は3分の2が完結した。だが他の案件は「延期、中断または無期延期された」可能性があるという。
周辺国への対外投資額は?
直接投資のストック(これまでの累積額)でみると、スイスはフランスにとって4番目に大きい投資国だ。仏中央銀行外部リンクによると、最新データの2018年末時点で、スイスからフランスへの直接投資は累積810億ユーロ(約9兆7千億円)を超えた。
他の国境を接する国でも、スイスの存在感は大きい。各国中銀によると、2018年末時点でスイスはドイツで4番目(895億ユーロ)、オーストリアで5番目(110億ユーロ)、イタリアで6番目(200億ユーロ)を投じてきた。
4カ国全てにおいて、スイス直接投資の評価額は5年間伸び続けた。
直接投資の伸びは、スイスの対外投資の全般的な増加を示すのか?
その通りだ。スイス国立銀行(中央銀行)によると、2018年末時点でスイスの対外直接投資(ストック)は世界で総額1兆4670億フラン(約165兆円)にのぼった。前年末比5%の増加、2013年から4割近く増えた。
増加幅が大きかったのは対欧州(70%)で、特にキプロスやアイルランド(5年間で5倍)、オランダ(2.5倍)、ルクセンブルクが目立つ。
米国とルクセンブルク、オランダは過去数年、スイスの直接投資先トップ3カ国を占めている。これに英国とアイルランドを合わせた5カ国で、2018年のスイス対外直接投資の3分の2以上を占めた。
新型コロナ危機は対外投資に影響する?
国連貿易開発会議(UNCTAD)は16日発表した報告書で、新型コロナ危機により世界の対外直接投資は2020年だけでなく21年にも「劇的に落ち込む」と指摘した。2019年のフロー(新規投資)は2019年から4割減ると予想する。
今年の初め数カ月だけで、公表済みの新規投資案件や越境M&A(合併・買収)は前年同期に比べ50%以上減っている。先進国の間では、対欧州の直接投資額は30~45%減ると予想される。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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