パリ高等裁判所は13日、スイスの銀行UBSがフランスの顧客の脱税をほう助したとする一審有罪判決を支持した。だが、罰金は当初の45億ユーロから18億ユーロ(約2220億円)に引き下げた。
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パリ高裁は13日、UBSが2004~12年にスイスに資産を隠すようにフランスの顧客を誘導し、組織的に脱税をほう助したとの判決を下した。
UBSは19年、起訴猶予交渉が決裂し、フランスに対する37億ユーロの罰金と8億ユーロの民事損害賠償の支払いを命じられた。
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これに対し、UBSは「具体的な証拠によって裏付けられていない」などとして上訴外部リンク。今年3月に上訴審が始まったが、裁判官の病気で判決は数カ月遅れた。
無罪を主張していたUBSにとって有罪判決は敗北となる。だが罰金は当初要求された金額の半分以下であり、検察官が上訴の際に求めていた30億ユーロをも下回る。
18億ユーロの内訳は、罰金が375万ユーロ、利益の没収として10億ユーロ、損害賠償が8億。罰金が減額された理由の1つに、UBSの預かり資産の合計ではなく、脱税された金額に基づいて計算すべきとの判決がある。
「何が変わったのか」
訴訟の発端となった内部告発を行った元UBS行員のステファニー・ギボー氏は、有罪判決を「良い知らせ」として歓迎した一方、罰金が半分以上減ったことに首をかしげる。
ギボー氏はswissinfo.chに対し「銀行に慣行を変えさせるには、罰金の額を増やす必要がある」と語った。「何が変わったのか?脱税はなくなったのか?お金はフランスに戻ってきたのか?もちろんそうではない。パンドラ文書のように、毎年新しいスキャンダルが明るみに出る」
ギボー氏は、他の国のようにUBSが刑事責任を訴追せずに和解交渉に進むのではなく、裁判所が有罪判決を下した点は評価する。「UBSはもう罰せられなくなったとは言えなくなる。スキャンダルの存在を知る人が増えれば、変化への道が開く可能性がある」
同氏はまた、不正の証拠を提示する人が増えるよう、内部告発者の保護を強化するよう各国に呼び掛けた。
UBSは13日、上告など次の選択肢を検討中だと表明外部リンクした。
UBSのフランス支店は、顧客への違法な勧誘に対して187万5千ユーロの罰金を科された。だが親会社のUBSグループとは対照的に、マネーロンダリング(資金洗浄)に対する罰金は免れた。
同行は14年の訴訟開始時に、フランス当局に対して11億ユーロの保証金を拠出。また4億5千万ユーロの訴訟に関する引当金を計上した。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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