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UBS対フランス 脱税幇助を巡る訴訟は延長戦へ

UBS店舗前の銅像
UBSはまだ法廷闘争から解放されていない Keystone / Steffen Schmidt

フランスの最高裁判所はスイスの銀行最大手UBSがフランス人顧客の脱税を幇助したとの下級審判決を支持する一方、18億ユーロの罰金は取り消した。この判決がUBSにもたらすものは何か?

15日の最高裁判決により、フランス国家とUBSの間の10年にわたる法廷闘争は、再び下級審の控訴院に場を移すことになった。

UBSは2019年の第1審で45億ユーロの罰金を科せられたが、2021年の第2審では18億ユーロに減額された。そして最高裁は今月15日、罰金に関する2審判決はすべての正しい法的手続きを経ていなかったとして、罰金額については再審理が必要だとの判決を下した。パリ控訴院(高等裁判所)が改めて妥当な罰金額を検討する。

UBSは現在、ライバル行だったクレディ・スイス(CS)の吸収合併という難題に直面している。そのさなかに出たこの判決は、UBSにとってどんな意味を持つのだろうか?

勝者は誰?

UBSは部分的な勝者でしかない。罰金取り消しは朗報だが、脱税幇助・教唆に関する有罪判決を覆すという目標は達成できなかったからだ。

名声が傷ついたのはもちろん、犯罪歴を理由にフランスで銀行免許を剥奪される可能性がある。ただCSは2014年に米国での裁判で脱税幇助の有罪判決を受けたが、米国での銀行免許は失わなかった。

スイスの法学教授ピーター・V・クンツ氏はドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)で「これは明らかにUBSの勝利だ」と語ったが、「この勝利がどれほど大きなものかはまだ分からない」と釘を刺した。

その理由は、差し戻し審が罰金をどう計算し直すかが完全に不透明だからだ。ただ、専門家の大半は引き下げの可能性が高いとみている。UBSは損害発生に備えて11億ユーロを引き当てている。

UBS自身も完全な勝利に酔っているわけではない。15日に発表した声明外部リンクで「UBSは仏最高裁が重要な争点についてUBSの立場を支持したことを嬉しく思う一方、違法な顧客勧誘や脱税に関する下級審の判断を認めたことに失望している」と述べた。

訴訟の長期化がもたらすダメージ

UBSは3月に経営不振に陥ったライバル行CSの救済買収に合意し、現在は大規模なリストラ計画を断行中だ。

2つの国際的メガバンクを統合するという複雑なプロセスは、完了まで数年を要する可能性がある。スイス金融業界の健全性のために失敗は許されず、非常にハードルの高いプロジェクトだ。

ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガー外部リンクは、フランスで続行する訴訟は「困難を極めるCSとの統合を踏まえると、UBSが現在必要としていない不確実性を生み出す」と指摘した。

フランスでの大掛かりな刑事訴追が始まったのは、UBSフランスが公的捜査の対象になった2013年に遡る。同行はその当初から、和解案で妥協するのではなくフランス法廷で徹底的に抗戦する方針を決めていた。

ただUBSが最高裁に上告したのは、UBSがCSを買収することになるとは予想もしていなかった2021年12月のことだった。

司法闘争か政治闘争か

UBSは2014年時点で、フランスが脱税を訴追した動機に疑問を呈していた。ロイター通信外部リンクの取材に「訴訟が高度に政治化されたプロセスになったことは、我々にとって容認できない」と述べ、多くのスイスメディアもこれに賛同した。

その背景には、世界中で脱税に対する取り締まりが強化されていたことに加え、フランスのジェローム・カユザック元予算担当相がスイスの銀行に隠し口座を持ち脱税に使っていたという醜聞があった。カユザック氏は2016年、脱税の罪で仏裁判所から禁固刑を言い渡された。

政治介入疑惑について、UBSは今では追及を手控えている。だが11月初め、意外なところからこの問題が蒸し返されることになった。仏当局にUBSの不正を内部告発した元UBS行員、ステファニー・ギボー氏だ。

ギボー氏はドイツ語圏の日刊紙NZZ外部リンクとのインタビューで、内部告発後に職を失い、1年以上も当局への捜査協力を強いられたが、フランス政府から得られた補償はわずか4500ユーロだったと明かした。UBSに対するフランスの講堂は「茶番」であり「偽善」だと糾弾した。

「(フランス)当局による脱税との闘いは純然たる仮面舞踏会だった。政府は私を内部告発者として利用し、UBSへの総攻撃を演出した。一方で真の不正行為を隠蔽しようとした」

ギボー氏は、UBSを敵に回してもフランス当局が守ってくれると信頼を寄せていた。だが今は180度異なる見方だ。 「フランス国家がUBSを不安定にするためにどのように攻撃を画策したのか、それを知るまでに何年もかかった」

次にUBSを待ち構えるものは?

UBSの顧問弁護士は現在、UBSの訴訟やCSとの合併業務に加え、合併によりCSから引き継いだ訴訟案件への対応に追われている。

そのうちの1つ、モザンビークでの詐欺事件は10月に和解にこぎつけた。一方で、CSの買収に当たりCSのAT1債(永久劣後債)を無価値化したことに対して債権者集団が起こした訴訟は現在進行中だ。

フランスの訴訟が延長戦に入ったことにより、窮地に陥ったUBSの弁護士は新たな難題を抱えることになった。

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担当: Matthew Allen

脱税を防ぐために、各国はどのような手段を取るべきだと思いますか?

UBSに対する18億ユーロ(約2220億円)の罰金命令は、有効な手段の1つと言えるでしょうか? 記事より UBSに脱税ほう助で再度有罪判決 罰金の減額には疑問の声も

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英語からの翻訳:ムートゥ朋子

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