UBSのクレディ・スイス買収 スイスの政界で批判噴出
スイスの主要政党は、UBSによるクレディ・スイスの買収に厳しい非難を浴びせた。
社会民主党(SP/PS・左派)のセドリック・ヴェルムートゥ共同党首は「苛立ちと怒りを感じている」と述べ、この大失敗の責任者は責任を取らなければならないと主張した。同党は、政治レベルで「誰が、いつ、何をしたのか(あるいはしなかったのか)」を明らかにするため、議会での調査委員会の設置を要求している。
議会の社会党会派のロジャー・ノルトマン会長は「憤慨している」と言い、銀行の経営は「組織犯罪に近い」と考えていると述べた。同氏は「実際のところ、納税者とスイス国民はスイス国立銀行(中銀、SNB)とともに、この取引で総額2090億フラン(約29兆6千億円)のリスクを負っている」と言い、カリン・ケラー・ズッター財務相の発言は矛盾があると指摘した。また、統合が完了すればUBSは規模を縮小せざるを得なくなるとの考えも示した。
政治の裏側では、批判が噴出している。スイス国民党(SVP/UDC・保守系右派)は、銀行が置かれた状況は「致命的」な経営判断の結果だとし、スイス政府の「性急な」行動も批判した。
「スイスの恥」
急進民主党(FDP/PLR・リベラル右派)は、今回の事態を「スイスの恥」と呼ぶ。党首のティエリー・ブルカート氏は「スイスの金融センターとスイス全体にとって悲惨な日だ」と語った。中央党(Die Mitte/Le Centre・中道派)は、「ひどい解決策の中でも最善」の選択だったとみなす。
しかし、両党とも、金融市場の信頼を回復し、スイス経済を守るために必要な措置であったことは認めた。急進民主党は「多くの市民や中小企業が銀行を頼りにしている」と話した。
同党のオリヴィエ・フェラー議員は、フランス語圏の公共放送RTSに対し、「誤った戦略的選択」による「クレディ・スイスの経営陣」の責任を指摘。フェラー氏は、クレディ・スイスが「スイスの金融センターを苦しめ、スイスの国際的なイメージを損なっている」と考える。
緑の党(GPS/Les Verts・左派)のバルタザール・グレットリ党首は、ドイツ語圏の公共放送SRFのインタビューで、スイスを代表する2つの銀行の統合が、スイスの金融センターにとって「将来的により大きなリスク」にならないかと疑問視する。自由緑の党(GLP/PVL・中道派)は、競争法と「オープンで公正な競争」の観点から、買収に懸念を示した。同党首のユルク・グロッセン氏は、スイスが国際的な課題を予見できなかったことを嘆いた。
致命的エスカレーション回避を評価
スイスの経済団体エコノミースイス(Economiesuisse)は、「致命的なエスカレーション」が回避できたことに安堵している。エコノミースイスによると、スイス政府は予測不可能な結果を伴うスイスの金融センターの不安定化を防いだが、「このような事態になった」ことを後悔しているという。
2大銀行の本社があるチューリヒ州の財務長官で国民党議員のエルンスト・シュトッカー氏は、今回の決定は金融市場とスイス経済に安定を促すと述べた。この見解は、スイス銀行協会も同じだ。シュトッカー氏は、経営難の銀行の買収が公共予算や労働市場に及ぼす影響を分析する必要があると付け加えた。
スイス労働組合連合(SGB/USS)が懸念するのは雇用の維持だ。スイス銀行協会を支援し、できるだけ多くの雇用が維持されるよう、タスクフォースの迅速な設置を求めている。
仏語からの翻訳・上原亜紀子
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